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☆第八話 お彼岸

 今日は彼岸の入りが父さんの休みと重なったので、珍しく家族全員でお墓へ参った。勿論、お彼岸には家族の誰かが欠かさずお参りしているのだが、全員でとなると、僕の記憶ではたぶん、数度だったと思う。

 お墓は近くの山の中腹にあり、いつも、うらぶれた(たたず)まいで僕達を迎える。夏場ではないから、そう怪談めくということもないが、場所柄(がら)、気持ちがいいという所では決してない。じいちゃんとのコンビでは何度か参ったことが過去にあった。その時、僕はじいちゃんの別の一面を垣間見た気がした。あの気丈なじいちゃんが、何やらブツブツと云いながら泪を流して嗚咽(おえつ)するのである。何度も(くど)く云うようだけれど、あの、あのじいちゃんが、である。剣道の猛者(もさ)も師範もあったものではない。今日はどうなるのだろう…と、興味津々(しんしん)であったが、到着すると案の定、じいちゃんのワンマンショーが御先祖様と僕達を前にして開演した。いったい何をブツブツ云ってるのだろう…と、聞き耳を立てると、念仏ではなく何やらお墓へ語り掛けているようだった。更に耳を(そばだ)てると、ばあちゃんに対して、どうの、こうのと語っているのだった。残念ながら、僕はばあちゃんを知らない。それも当然で、僕が生まれる遥か昔に、ばあちゃんはお墓へ引っ越したのだった。だから、僕が全く知らないのは道理なのだ。

「ばあさん…、(わし)も、すぐ行くからのう、ウゥゥ…」

 (ようや)く聞き取れた唯一の言葉が、これである。いや、いやいやいや…、それはないだろう、と僕は、すぐ全否定した。意気益々、盛んなじいちゃんが、すぐお墓へ引っ越す訳がないのである。

「お父さん、そろそろ帰りましょう!」

 一緒にしゃがみ込み、お墓に手を合わせた父さんは既に立っていて、じいちゃんを見下ろすように、つっけんどんな声で云う。母さんと僕は、未だじいちゃんの横でしゃがんで手を合わせていた。

「お、お前は薄情な奴だ! …ばあさんが草葉の陰で泣いてるぞっ!」

 じいちゃんは、いつもの()で蛸のじいちゃんに戻り、ここ、お墓でも雷鳴を響かせた。秋の陽は釣瓶落とし…とは、よく云うが、早くも西日となって姿を消しかけた橙色の太陽光が、じいちゃんの頭へ照射して輝かせる。やはり、某メーカーの洗剤Xで磨いたような輝きである。

「お義父さま、そろそろ帰りましょうか?」

「そうですね、未知子さん…」

 青菜に塩…と云うが、正に今のじいちゃんがそれで、泣いて怒ったじいちゃんは、笑顔で素直になった。紅く咲く彼岸花にも似て、派手だなあ…と、僕はしみじみ思った。                                             


                                 第八話 完

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