☆第三話 焼き芋
早いもので、あれだけ綺麗に色づいていた紅葉も散り果て、木々は、すっかり冬仕度を終えたように寒々としている。勿論、それは幹だけで、根回りの方は落ち葉を敷きつめて暖かそうなのだが…。
「♪~垣根のぉ垣根の回り角ぉ~ 焚き火だ焚き火だ 落ち葉焚きぃ~♪」
僕は唄いながら箒を手にしている。
「よし! 正也、これくらいでよかろう」
やっと、じいちゃんの了解がでた。何の了解か? というと、掃き集めた落ち葉で芋を焼こうと、じいちゃんと僕は両手を小忙しく動かせて労働をしていたである。こんもりとした落ち葉の山が出来たところで、じいちゃんがストップをかけたのだった。
「芋は四本だったよね?」
「ああ…、恭一と未知子さんの分も焼いてやろう」
じいちゃんはそう云って柔和な笑みを浮かべた。父さんを含めての話だから、じいちゃんにしては優しい気配りに思えた。
火事になるといけないから、周りには水を撒き、念入りに防火用水のバケツも近くに置いて、いよいよ点火の運びとなった。可燃物、酸素供給源、点火源は全て備わっているから、当然の如く燃えた。勿論、じいちゃんが火を着けた訳で、僕ではない。でも芋は、確実に僕が四本、落ち葉の中に入れた。
「乾いているから、よく燃えるなあ、正也」
「そうだね…」
寒いと感じるような日ではなかったけれど、身体が充分に冷えていたので暖かかった。落ち葉を少しずつ燃やし、頃合いをみて木枝で芋を放り出した。そして突き刺すと、スウ~っと通った。
「おう、焼けた焼けた。もうよかろう。正也、この新聞紙に包んで持ってってやりなさい」
僕は首を縦に振ってじいちゃんの命令に従った。隊長の命令は絶対、なのである。
「そう…、有難う」「そうか…」
持っていくと、母さんは笑いながら受け取ったが、父さんの方は感極まり、一瞬、目頭を熱くし、声を詰まらせた。芋一本で父さんを釣り上げたんだから、じいちゃんは大した釣り名人だと思えた。そこへ、火の後始末をして帰ってきたじいちゃんが現れた。
「もう食ったか?」
「いえ、これからです…」
父さんは茶々を入れることなく素直に云う。
「今、お茶を淹れますわ」
「あっ、ああ…そうして下さい、未知子さん」
芋を一本ずつ持ってテーブルを囲む。すると、誰から笑いだした訳でもないのに、お互いの顔を眺め、クスクスと笑いだした。やがて大笑いになった。こんなことは久しくなかったと思う。じいちゃんの顔はクシャクシャになり、頭は湯気を上げて益々、光り、某メーカーの洗剤Xで磨いた窓ガラスのようにテカっていた。 第三話 完




