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☆第十四話 夢の秋

「正也! 遅刻するわよ!」

 母さんが僕の部屋の前で声高に言った。彼女に来られては、すべてが終わった…である。僕は飛び起きた。愛奈まなは? といえば、すでに起きていて、庭で竹刀を片づけるじいちゃんの尻について、意味もなく師匠のシャツを引っぱっていた。じいちゃんは叱る訳にもいかず、愛奈のするに任せ、笑っている。いやいやいや…、そんな光景がある訳がない。現に昨日まで愛奈は育児ベッドでスヤスヤと眠っていたのだから…。僕は夢を見ているんだと思った。それにしても総天然色のかなりリアルな夢だ…と思えた。

「お兄ちゃん、遅刻するわよ!」

 僕は、お前には言われたくないぞ…と言い返そうとするが、声にならない。要するに失語状態で、口が開かないのである。じいちゃんは庭の向こうから二人を見ながら笑っている。空は青く晴れ渡り、色づいた庭木の黄色葉が美しい。すると、場面が急に変って五人の食事風景となった。愛奈がご飯を…そんな訳がない、とは思うが、彼女は小っちゃいながらも小ぶりのお茶碗と短いお箸を器用に使い、食べていた。

「おかわり!」

「結構、結構! たんとお代わりしなさい」

 じいちゃんは、すっかり愛奈びいきだ。そんなじいちゃんに父さんも母さんも何も言えないようだ。

「正也! もう…遅刻よっ!」

 母さんのあきれるような声がした。僕は、えっ!? と思った。今、食べかけたとこなのに…と思えたとき、目が覚めた。空は青く晴れ渡り、色づいた庭木の黄色葉が美しかった。ただそのとき、愛奈のむずかる泣き声がした。早朝稽古をじいちゃんとして、まだ少し時間がある…とベッドへ寝転んだのが迂闊うかつだった。ウトウト…してしまったのだ。出来のよい僕にしては失態だった。

                   第十四話 完

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