☆第十三話 栗拾(ひろ)い
野山も色づき、すっかり秋景色が板についたある日、僕はじいちゃんと栗ひろいに出かけた。この行事はキノコ採りと同じで恒例だから、とり分けて語ることでもないのだが、まあ語りたいと思う。
「正也、やってくれ!」
「うん!」
なんのことだ? と思われる方も多いと思うので解説すると、じいちゃんが栗を拾い集め、僕はそのイガ栗を絶妙の足捌きで栗出しする役目を仰せつかったのだ。手では痛くて持てないイガ栗も、両足のコツで上手く剥けるのである。
「そうそう、その調子!」
じいちゃんは満足げに僕の足元を見たあと、また落ちて散らばっている栗を集め始めた。しばらくすると、師匠から、「それくらいで、よかろう…」とストップがかかった。剥かれた栗は容易く袋に入った。そしてその夜、母さんによって三分の二ほどは栗ご飯に調理され、僕達の腹へと収納されたのである。ただ、愛奈だけは収納できず、離乳食と母さんの乳以外は駄目だったから気の毒に思えた。こんな美味いものを…と思いながら僕は育児ベッドを見た。愛奈と語り合いながら食べる日も、そう遠くないだろう。あの泣き加減からして、かなりの好敵手に育つことが予想されたが、半ば嬉しい心配でもあった。
「なかなかのものです、未知子さん。今年も美味いですよ」
「そうですか、ほほほ…」
ほほほ…は余計だろう、とは思えたが心に留めた。
「うん! 確かに…」
父さんもじいちゃんに追随した。まあ父さんの場合は、追随しないことの方が奇跡なのだが…。栗のようにトゲを出せば、恐らくはじいちゃんによって火中へ放り込まれ、熱さのあまり弾けてしまうぐらいのものだろう。そこへいくと愛奈栗は誰も皮を剥くことすら出来ず、自然放置の状態を維持している。タマとポチは剥かずに持ち帰った栗をボールに見立てて遊ぶ。優雅、この上ない。
第十三話 完




