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☆第十一話 秋めく

 ひょんなことで秋めくものだ。夏の熱気が、ある日を境にスゥ~っと去った。もちろん僕に断りもなく無言で去ったのだが、秋めく・・とはまさにこれ! と思える清々(すがすが)しさで、家族全員のテンションを向上させた。

「秋ですね…」

 父さんがじいちゃんに語りかけた。彼は恐る恐る言葉を選び、季節外れの落雷を未然に防ぐ手段を講じていた。

「そうだなあ…。いい気候になってきた。まあ、夏野菜の収穫は終わりだがな」

「ナスがありますよ」

「おお! そうだった。秋ナスがまだあったわい!」

 じいちゃんの顔が喜色満面となった。

「未知子には食べさせられないですが…」

「上手いこと言うな。秋ナスは嫁に食わすな、か…。まあしかし、未知子さんには食べてもらおう」

 二人は、ははは…と笑い合った。空に鰯雲が登場し、楚々とした風が爽やかに肌を撫でると、辺りは一斉に秋めく。黄金色こがねいろに色づいた稲田の刈り入れも始まった。愛奈まなの機嫌も大層よく、母さんは大助かりだ。むずからないのは親孝行で結構なことである。僕も妹を見習わねばならない。買って欲しいものはあるが、じっと忍耐の子を続けようと思う。

「おい! 正也! こっちへ来い。美味いシュークリームを戴いたからな」

 離れから声がかかり、僕はじいちゃんに招待された。庭から足継ぎ石を踏んで上がると、珍しく父さんも来た。ほぼこれは奇跡に近い。父さんは普通、じいちゃんを避ける、としたものだったから、その常識は完璧にくつがえされた格好だ。これも秋めいたことによる一過性のものかも知れないけれど、ともかくお目出度いことのように僕には思えた。じいちゃんがれた茶で三人がシュークリームを頬張る。三代の揃い踏みである。遠くでタマとポチが、あのお方達は先が読めないなあ…という視線で僕達を見ていた。

                    第十一話 完

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