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☆第一話 茸[キノコ]採り

今日は天気がよいので裏山へキノコ採りに出かけた。裏山といっても家からは少し離れているのだが、上手い具合に学校は連休だった。

 じいちゃんと二人で山へ入るのは久しぶりなので、心がウキウキした。

(わし)が元気なうちに、正也にいろいろ教えておいてやろうと思おてな…」

 何を? と訊くと、じいちゃんはキノコのことを語りだした。何でも、裏山ではいろんなキノコが採れ、それも毎年、決まった場所に生えるのだという。一生懸命、さも専門家きどりで得意満面に語るじいちゃんの鼻をへし折るのも如何かと思え、僕はそ知らぬ態で聞き上手になった。

 母さんが作ってくれた弁当を持ち、二人して出かけた僕達は、快晴の蒼々と広がる空と澄みきった空気を満喫しつつ散策を楽しんだ。流石にじいちゃんは年の功というやつで、キノコ採りの名人と思えた。話が長くなるので、山でのことはいつの日かお話させて貰うとして割愛させて戴くが、収穫量は、まずまずであった。

「おお…、随分、採れたじゃないか!」

 湧き水の洗い場で、採ってきたキノコを洗っていると、休みで家にいた父さんが、部屋の窓を開けて、そう声を掛けた。

「松茸に黄シメジ、…ナメコもあるよ」

「お前も来りゃよかったんだ…」

 僕の隣りにいたじいちゃんが、身体を冷水で拭きつつ、そう云うと、

「今日は生憎(あいにく)、会社から持って帰った仕事がありましたから、ははは…(また)。又、この次に…」

 と、軽い笑いを交えて父さんは流した。

「お前のは、いったいどういう又なんだ? 又、又、又、又と、又の安売りみたいに…」

 上手いこと云うが、じいちゃんは相変わらず父さんには手厳しい。父さんも只者ではなく、馴れもあってか、そうは気に留めていない。

「安売りと云やあ、この不況で私の会社の製品、値下げなんですよ」

「そんなこたぁ、誰も訊いとりゃせん!」

 話はハイ、それまで。一巻の終わりとなった。そこへ母さんが台所の戸を開けて出てきた。

「ナメコとシメジは汁物にして、松茸は炊き込み御飯と土瓶蒸しにでも…」

「偉く豪勢じゃないか…」

「あなたの給料じゃ、お店で手が出ないわ。某メーカーの洗剤Xを買うのが関の山」

 母さんは珍しく嫌味を云った。

「その通りだ、恭一。未知子さん、上手いこと云いました。これはタダですからな」

 父さんは、しくじったか…という態で、窓を少しずつ閉じて引っ込んだ。

 その晩は賑やかにキノコ料理を堪能した。でも、父さんだけは一人、黙々と箸を動かせていた。


                                     第一話 完

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