新たなる希望
左側でガサガサと、音がした。音に反応してその方向を見る。
あったのは、茂みだ。そこから人が出てくる。それは1人の髪の長い少女だった。その少女は、どこまでも深い黒い髪。そして、腰ほどまである髪。俺以上の長身。雪のように白い肌。顔立ちもとてもよい。すっと通った鼻。意志の強そうな目。可愛い系ではなく美人系といった感じだ。服装は紺のセーラー服。ということは、高校生なのだろう。好みか、好みじゃないかで聴かれたら、好みの部類だと思う。
そんな少女が現れるなんて、始めは何かの遊びの途中と思った。そこで、俺は気が付いた。自分の現状を、確認してみてもやっぱり、俺は血まみれだった。そして地面に横たわるのは二つの塊。
それを見ても、その少女は特に驚いた様子もなくこちらへと歩み寄ってくる。
「あなたが、十羽石君?」
少女が俺に問いかける。緊張のためか声がでない。そのため俺はバットを持ったまま、首を縦に2度振る。
「そう、あなたで間違いないのね。」
再度首を縦に振る。
「あら、そんなに緊張しなくてもいいのよ、私たちはあなたに危害を加えるつもりはないんだから。」
危害を加えるつもりなら尚更なのだが、さらに困るのだが、俺は人見知りなのだからしょうがないだろう。と一人で開き直る。
というか、空気が重すぎる。俺は凶器のバットを持っている。そして、周りには人間の死体。これだけで俺が殺したことは一目瞭然だろうに、その少女はそこについては何も触れない。
正直に言って俺は意味がなくとも早く死体を処理してこの場を立ち去りたい。こんなよくわからない奴と話している時間は無いのだ。
「俺は忙しいんだ。後にしてくれないか?」
「そうみたいね、その片づけ手伝いましょうか?」
なんと、手助けを申し出てくれた。
「あんた、これが何なのか分かってんのか?そして、俺が何をしたのか。」
「そんなの分かっているわ、”死体”でしょ?それ。そして、あなたがその二人を殺した。」
「それだけわかっていて、何故俺に話しかける。」
「そんなのはあなたに用事があるからに決まっているでしょう。」
用事というのはなんなのだろう。
「なんでもいいや、悪いけど手伝ってくれるか?」
どうせ、今回も失敗してしまうのだから意味は無い気がする。だが、もしものことを考えて処理することは欠かせない。
「やっぱり、手伝うのはやめるわ。今警察がこっち向かっているから。」
「そりゃ、あんた。早く逃げなよ。俺といたら関係ないのに一緒に警察に連れて行かれることになるぞ。」
「大丈夫よ、そんなへまはしない。それよりあなたについて来て欲しい場所があるの。いいかしら?」
「どこ・・・。」
身体が重力に引っ張られる。膝が地面につき、遅れて胴体が地面に倒れる。
薄れていく意識の中で、敵だったのか。と、気が付いた。