回避のされなかった現実
昼休みの告白も終わり(そんなにロマンチックなものではない)、帰宅時間を早めることにも成功してすべてうまく行っているように思われた。
そう、この時間、この場所に至るまでは。
俺は何をしているのだろう。そして何故右手にはこんなものを持っているのだろう。ずっしりと重く、人をさそうような黒をもつ金属。そう、斧。そして、斧からしたっている液体はなんだろう。
最後に”目の前に横たわっている少女は何だろう”斧からしたっているのと同じ液体をまき散らしながら。
そう、時刻はさかのぼる。この状況にいたるまでにいくつかの出来事があった。昼休みにこいつに告白をした後、授業を受けて、部活にもいかずに真っ直ぐに帰路へついたはずだった。
そう、そこまではよかったのだ。だが、家に帰ってから壊れだした。家に帰って部屋でくつろいでいたときに担任の風間から電話がかかってきたのだ。面倒ながらも仕方なく電話に出たら、進路希望用紙を早く提出してくれと言われたのだった。進路自体は決まっていたのだが本当にそれでいいのか等と考えている内に提出期限になってしまったのだ。
そんなわけで学校へ再登校したのだった、ここでの道は問題は無かった。学校に着き職員室に行き、風間のもとへ紙を提出して帰ろうと昇降口へ向かっていたら、声をかけられた。タイミング悪く、久しく行っていない部活の部員から。
俺は天文部に名前だけ所属していた。俺の通うこの学校は、なんと面倒な事に部活への入部が拘束できまっているのだ。そして、俺は勿論部活などに酸化する気は無かった、なので名前だけでも問題のなさそうな天文部に入部したのだった。この天文部は俺の予想した通り、サボり放題だった。でもそれにも限界がある。月に1度は絶対に行かなければならないらしい、昔俺みたいなのがいてその時に作られた部活内での決まりらしい。俺は今でもそいつを少し恨んでいる、そんな奴がいたせいで月一でも行かなければならないことになってしまった。
「おい、十。」
声をかけてきたのは、同じ3年の天文部の奥山光輝。こいつは幽霊部員になった俺とは正反対に毎日しっかり顔を出している模範的な部員だ。ぶっちゃけ話が合わない。
「お前は中3になって1か月経つのにいまだに部活に顔を出してないよな、今年の新入部員にもバカにされてるぞ」
別に顔も見た事のない奴になんと言われようと痛くもかゆくもない。
後、中3になって1か月。というのは今現在2040年は地球温暖化が進み、季節が今世紀初頭に比べて1か月程ずれるようになっている。ので、政府のお偉方が、季節感と今までの月のイメージは崩すべきではない。という「花見法案」なるものを提出して、あっさり可決されたので、月がずれるようになった。 なので卒業が2月入学が3月になる。この辺が昔との違いだろう。
20世紀のアニメや映画などを見ると21世紀といえば車が浮いていたり、チューブの中を電車が走っていたりと夢がいっぱいだったのだが、実際そんなことは無い。湾曲を描いたような高層ビルもないし、緑の自然だらけの街にもなっていない。それが現実というものだ。いつでも人は夢を観たがる。
21世紀になってから殆ど何も変わっていない。ただリニアモーターカーだけは実用化された。東京と大阪を結ぶ高速交通機関となっている。
しかし、これは日本だけの話である。遠く太平洋をはさんだ向こう側のアメリカは既に荒廃している。そして、世界最大の大陸のユーラシア大陸の半分ほども荒廃している。その他大勢の国が荒廃まで行かなくても多大な被害を受けている。
理由は第3次世界大戦。人間は争う事をやめなかった。一つの国が核を使った事が戦争のきっかけとなった。今までは時々注目されるしかなかったような小さな国だ。だが技術が足りず目標としていた地点までは届かなかった。そのため見当はずれな場所に落ちた。その”落ちた場所”というのが悪かったのだ、アメリカの重要な軍事拠点に落ちたのだった。被害は甚大だった。米兵は全滅辺り一帯の民家も含めれば死傷者を計算するのも怖いぐらいだった。核兵器なのだから勿論放射能が出てきた。放射能による被害を含めれば国単位の話になる事だろう。
そんな事件が起こって世界が動かないわけがない。反米国の国はその小国を先頭に一気にアメリカにたてついた、親米国はアメリカを先頭に反撃に出た。ただ日本は親米国として唯一戦闘に参加しなかった。
理由は「日本に軍隊は無い。あるのは自衛隊だけ、自衛隊は国を守るためにあり、人命を救うためにあるから戦闘に参加するわけにはいかない。」だ。勿論世界から恨まれたが戦況が、五分五分のため両者ともに戦闘に参加しない国に相手するほど余裕ではない。
そんなこんなしている内に戦争は火種の国がつぶれても実際は戦闘が続いた。あまりに戦況が泥沼化しすぎた。そこで、今まで世界を裏で支配してきた集団。『アザゼル』が”これ以上戦争が続けば支配が出来なくなる”と判断したため、日本への戦闘参加要請が自衛隊のトップに伝わり、そこから正式に日本の参加が決まった。
勿論、今までの戦闘に参加していないのだから、自衛隊の設備も万全で無傷だったわけで、抵抗しようと思えばいくらでも出来たのだが、日本の裏の住人達で会議が開かれて戦争を集結させて世界の頂点に君臨しよう。という風に決まったため、日本の総力を上げて準備が行われた。
勿論他の国のように既存の武力で解決しようとするならば、さらなる泥沼化は避けては通れない。なので、技術大国日本の科学技術を総動員して準備された最新の兵器を用いた作戦をもってして第3次世界大戦は終結を迎えた。
新技術を用いて解決したことは世界中に知れ渡った。そのため、日本が作戦のために準備した技術から生活がもっと便利になるものが作られることを日本国民は望んだのだが、技術の漏洩を防ぐために、新技術の世間へのお披露目は見送られた。それでも当初のもくろみ通りに世界の頂点に君臨することは出来た。今の世界と日本は雲泥の差がある。世界の残されたものを合わせても日本の”隠された何か”には到底及ばない。
世界規模で戦後の状況を見れば、戦争に用いられた兵器の火薬や軍事車両の排気ガスなどが影響して地球環境は更に悪化の道をたどった。戦争の結果生まれたプラスの事項は世界経済が潤っただけだった。
だが、殆どの旧先進国が戦争により多大なる損害受けて国内の復旧以外に金を使うわけにいかずに、殆ど意味をなしていないのが現状だった。
今日やった社会の内容を考えていたら、奥山に天文部の部室へと引っ張られていた。興味がないのでしばらく戦争のことを考えている事にしよう。
本当に戦争はあったのかと思っていたのだが2035年の事件で俺はそれを実感させられた。
俺の両親達を殺したのは、その戦争で日本だけが何の被害も被らなかったのが気に食わない人間による犯行だった。通り魔殺人だ。不満を抱いたその犯人は日本の3大都市である名古屋に現れて刃渡り40センチにも及ぶ刃物を持ち出し、通行人を切りつけ始めたのだった。辺りに倒れた人間が増えた所で犯人の男はこう叫び始めた。
「日本だけが戦争の被害を受けないのは不平等だ。世界はみな平等に被害を受けたというのに、政治家は被害を受けることを望まないがために、自衛隊の事を持ち出したりして!」
等とわけのわからないことを叫んでいるうちに警察の特殊部隊の狙撃によって射殺された。
その事件による死者は4人。俺の家族と、始めに犯人に飛びかかった勇敢な警察官だけだった。他にけがをした人は致命傷にはいたらなかったとの事だ。
俺は当時どれだけショックを受けたことだか、その日。俺は家にいて家族だけが出かけていた。気付いたら犯人が死んで、家族も死んで。本当になんだったんだろうな。と今だからこそ思える。
当時を振り返れば家族の葬式、新しい偽りの家族との出会い。が淡々と行われていた。
お、やっと奥山の長ったらしい話が終わった。何も聞いていなかったのだが、気にしはしない。部活になんて始めから興味はなかったのだ。
そのまま、部室を出て昇降口へ行き学校を出て帰路へ着く。ここまでは順調
家の前で立ち止まりもしなかった。この時点ではまだ空は青い。これで安心と思っていたのだが。
「羽石さん、お買いもの頼んでもいいですか?今誰もいないので。」
義母の声。この時間なら買い物でもなんでも行っても大丈夫だろうと、思って買い物へと出かけた。でも、指定された店に行くまでに時間がかかったりもしたが、まだ平・・・
「十くーん」
ふざけるな!何故このタイミングで水上が出てくるんだ!時間にはまだ早いだろうに。
まさか、これも回避できない事項なのか!?
そんな・・・。そうだ、すぐに家に帰ればいいいのだろう。聞こえなかったふりをして。
扉のとってに手をかけ回したところで、
「待ってー!」
と呼ばれ条件反射でふり返ってしまった、これでは聞こえたから反応したということになる。
聞こえてた事が分かってしまった。あきらめて待つことにしよう。
「はー。やっと追いついたよ。」
「おう、そんなに走ってどうした。」
「いや、ただ十君が見えたから声をかけただよ?後先生から言われたこともあったしね。」
今なんといった?まさか、昨日の・・・。
そこから昨日行ったような会話が行われて、昨日俺が取ったことと同じことをしてしまった。
何故か近くに置かれていた斧を使って。
そして、また23時58分に警察に確保され、深い永遠の闇へと意識が落ちて行った。
そして、3度目の2040年4月五5日の覚醒。