温度差
「え。」
水上のあきらかに戸惑った声。本人もここまでの予想は無かったのだろうか、さっきの調子だとすべてを見透かしているような気もしたのだが違うらしい。
「ここでで謝るのも変な気がするけど、ゴメン。」
俺は今までに経験した事の無いぐらいに頭を下げた。
「どうして、私を殺したのかは聞かないでおくよ、優しい十君が何の理由もなしに人を殺すなんて到底思えないから、何か理由があったんでしょ?きっと私にも悪いところがあったんだと思う。」
とても優しい声。すべてを受け入れてくれるような包容感。この時間になるまでに必死にいいわけなどを考えていた俺がバカらしくなってくる。
「水上、階段に長居すると教師にグチグチ言われるから戻るか。ぶっちゃけここ立入禁止なんだよね。」
後半笑ってしまう。そうこの学校は3階+屋上という構造になっているのだが3階以上つまり屋上へ続く階段も含めて生徒は立入禁止なのだ。
「え、そうだったの!早く言ってよ。」
いつもの水上。さっき俺の告白したこと自体が無かったかのようにふるまわれた。ここまでスルーをされた感じがすると、二人の間に温度差があるのではないかと思わされてしまう。
まぁいきなり「実は俺別の世界でお前を殺したんだ」とか言われてもなんのこっちゃって感じだろうけど。確かめる方法もないわけだし。
それでももう少し違う対応が欲しかった気がするのは俺だけだろうか・・・。
このことを話したのだから、前回の。いや正確には前回の世界と同じ事態は回避できるはずだ。
そうであってほしい。これでも回避できないのなら俺はどうしたらいいのだろう。
まずは帰宅時間を早めるところ辺りからやってみよう。そうすればあそこで遭遇することは無くなるだろう。