世界の収束点
新たなる境地、自分の内側に干渉することによって自然には発生するはずのないエネルギーを発生させる。干渉をすることによって生まれるエネルギーを電気信号として変換させる。
「うっ、あ。」
体の中を今までに体験した事のない快感のような電気信号が、頭や胸の奥から流れて脊髄を通り、右手の末端神経へと流れていく。快感に屈してしまわない様に、悶えている内に、頬もうっすらと赤くなる。徐々に右手に流れていく信号が許容量を超えて体の内側からあふれていくのが分かる。
あふれた力が掌の中で青色の渦を巻くその力を支配しやすくるたみに魔法陣のようなものを描く。始めに円。次に円の内側に模様を描き始める。美里は何も考えていない。ただ、頭の奥底から湧き出すイメージを忠実に再現しているだけ。このイメージがどこから来ているのか、そんなものは分からない。だが不思議に、これは信じてもよい。そんなふうに思えるものだった。
あふれるイメージが止まった時には、彼女の前30センチの空中には青色の光を放つ魔法陣ができ上がっていた。
「出来た。」
そう自然につぶやいていた。彼女にはこの陣が本当に機能するのかそんなことは分からない。だが、信じていた。『自分は出来る』と。その正の思考が鍵となったのか、陣が一際輝きを増し、陣が右にゆっくり回転し始めた。青色はどんどん白に近づいていく。そして、回転の速度も早まり、今までで一番大きな輝きを見せた直後、
パンッ。と陣が弾けて消えてしまった。
「えっ?」
急に消えた陣を探すために辺りを見回す。だが、見つからない。まさか、失敗したのか。焦りの表情が彼女の顔に浮かんだのを見計らったかのように、視界の端でキラッと何かが輝くのをとらえた。つられるようにその方向。”上”を見ると、そこには先ほど描いた陣と同じ模様の物が煌々と輝いていた。だが、サイズが明らかに違う。果てがないと思わせた空間よりもそれ以上の大きさ。ここから見上げるだけでは、すべてを見ることはかなわない。それほどまでに巨大だった。
陣が一番の輝きを見せ、視界を真っ白に覆った。反射的に目をつぶったが、すべての光を防ぐことはかなわなかった。真っ白な光で刺された、そう思えた。
次に目を開けた時に見たのは、一つの一点に向かって世界が収束していく姿だった。
「む、これはまずい。離脱せねば。」
その収束する世界を見ただけで、これで羽石に迫っていた死から逃れさせることが出来たに違いない。と、確信を得た美里は内側の世界から離脱を図るのであった。