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400年越しの願い  作者: 神船一
内通者
31/51

監禁

 瞼が、重い。まるで自分の物でないかのような自由の利かなさだ。意識は覚醒しているのに体がついてこない。さらに、瞼だけでなく腕も、足も、首も自分で意識的に動かせる部位が俺の意識に対して反応を示さない。どうにか、こうにか身体がを動かそうとしている内に再び闇へと意識が誘われていく。


 いつか見たことのある様な、白い空間。ここでもまた体の自由が利かないだが、今度は箱に押し詰められているようだ。”俺”の能力でそこにある壁を消そうと試みるが、何の反応も示さない。能力が働かない理由を2つ思いついた。1つは、この世界が俺の支配下におけない異次元である可能性。もう1つは自分の能力が物体の消失まで達していない。この2つだ。どうにか、棺桶から出ようと四苦八苦している間に。近くで人の気配を感じた。数は3つ。なんとなく嫌な予感がした。この白い空間にこの棺桶に入れられているかのような不自由さ。身に覚えがあった。目だけ動かして、人の気配の方向を見る。

 やはり、予想通りそこにいたのは、本当の(・・・)俺の家族。何か人の理解を超えた言語を口にする俺の家族。表記のしようのない言葉たち。だが、その言葉を耳にするたびに意識がどこか、深くに沈んでいくかのような感覚。ゆくっり、ゆっくり海の中の中に沈んでいくように、周りからうける重圧が増していく。

 今までは白い世界を映していた眼球だが、視界がゆっくりゆっくりと黒く染まっていく。

唐突に俺は、理解した。これが『死』であると。勿論、こんなところで死にたくはない。だが、今の自分には何も抵抗する手立てがないのだ。ありえないだろうが、この世界で助けが来ることを待つしか手は無いのだ。迫りくる死をただ待ちながら。



 視界の8割が黒で埋め尽くされただろうか。一筋の光が闇を切り裂き上から降ってきたのだ。そして、その光の中を一本の細く白い手がこちらに差し出されている。直感的にあの手に捕まれば、自分は助かるのだと思ったのだが、手は棺桶の外に出る事が出来ない。俺は、助けを目の前にして死ぬのだろうか。これで、よかったのだろうか?気が付けばもう家族の姿もない。俺は1人で死んでいくのか。


 先ほどからクネクネと動いていた手が急にしっかりとした動きを見せる様になった。円を描き、その中に何か複雑な模様を描く。その手が止まった途端。手の軌跡を追うようにして、青い光が闇を走った。昔読んだ、本で見たことのある魔法陣のような模様ができ上がっていた。その陣が一際強烈に光を放った刹那。



 世界を覆っていた闇が払拭されていく。もとの白い世界へと。それに伴い棺桶も消えた様で、動けるようにもなった。この何もない真っ白な世界について、詳しく知ろうと。彼、もげき羽石は、歩き出す。

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