居住地
自分がいた時代から400年進んだ世界。そこにあったのは、関所。まるで戦国時代のようだった。関所なだけあって、しっかりと警備員もいる。今は夜中の零時台、こんな時間に俺みたいな中学生を何事もなく通してくれるだろうか。
「ユリ?」
「はい。なんですか?」
「一旦能力解除を頼む。何事もないとは思うけれど、用心は必要だからな。」
「分かりました。」
そういって、彼女は再び俺の影に潜る。人格は空間管理の『俺』にセットしておく。これで、何かあったとしても大丈夫だろう。立ち止まっていても仕方がないので、再び歩みを再開する。警備員がこちらに気づきあからさまに警戒しているのが見て取れる。手に持っている、形はアサルトライフルだが明らかに俺の知っているアサルトライフルとは違う何かを持つ手に力を込めている。俺は、出来るだけの笑顔を保ちながら彼に近づいていく。
「すいません。ここ通りたいんですけどいいですか?」
ここで、無言で通り過ぎて、不法侵入だと思われて後ろから撃たれたりするのは避けたいので一応の確認は取る。
「市民カードは?」
「市民カード……ですか?」
「そう、市民カード。」
市民カードとは一体なんだろう。俺のいた時代の身分証のようなものだろうか。その時、制服の後ろのポケットに何かが入ることを感じた。できるだけ、不審に思われない様にゆっくりと右手をポケットに伸ばす。中にはカード状のものが入っていた。”これを使ってくださいね!”とユリちゃんの声が聞こえた気がする。それを取り出し、警備員に見せる。
「これ、ですか?」
「そうだが、君は一体こんな時間にこんなところで何をしているんだい。」
市民カードとやらを見せたことで一気に警戒を解いた警備員が聞いてくる。初対面の大人の前での一人称は『俺』よりも『僕』の方が好ましいと思う。
「僕は……。」
この時代について詳しい事や、何故関所があるのか、等の分からないことが多すぎるために下手な事は言えない。
「まぁいい。もう遅いがこれ以上遅くなる前に家に帰りなさい。」
と、言って警備員は僕に市民カードを渡してくる。
色々と見たことのない、わけのわからない物を観察しながらアキちゃんに案内を続けてもらう。暫く行ったところで
「ここですよ。」
と、言ってアキちゃんが止まる。彼女は空を飛んでいたので、正確には止まってはいない。ホバリングをしている。アキちゃんが止まった場所の前にはとても高そうな超高層ビルが建っている。
「え、何。この高いやつ?」
「そうですよ、このビルの最上階の1室です。」
中学生の俺がこんなところに住むなんて、前の時代では全く考えもしなかった。