繁華街へ
夜も更けてきた深夜零時半。ここは年上女性の部屋なんとも居心地が悪い。自分は本当にここにいていいのだろうか?いつも早めに寝ていたので零時半まで起きていることなど大晦日位だったので眠くて眠くてしょうがない。つい、あくびが漏れてしまう。
「あら、もうこんな時間?」
美里さんが自分の左手についている腕時計を見てそう呟いている。
「今日はこれくらいにしておくわ。残る話はまた明日にしましょう。本日は、解散。」
「え、あの解散って…… 。」
俺は解散後にどこに行けばよいのだろう。部屋のようなものにも案内された覚えもないしこれからなのかな?
「あ、貴方にはちゃんと部屋を用意してあるわ。『アキ』!」
すっと、音二ならないような音を立てて美里さんの影からドリーマーが現れる。可愛らしい女の子だった。百合の花のような可憐さを持ち合わせている。服装は白いドレス。ますます百合みたいだ。
「ハーイ。なんですか?」
あれ、この声。どこかで聞いた気がするな。どこだろ。この時代に来てからそんなに多くの人間と会話した覚えはないんだけどな。俺のいた時代で聞いたんだっけ?
「この声って……。」
「この子があなたたちをここまで案内したのよ。私の可愛い、可愛い、ドリーマーよ。」
あーそこだったのか。納得。
「じゃあ、アキ彼を彼の部屋まで案内して頂戴。」
「わっかりました!マスター。」
とてもテンションが高くてついていく自信がない。
「本当にあんたは可愛いわねー!」
と、言ってアキちゃんを抱きしめる美里さん。
「えっ……?」
ガバッと効果音が付きそうなくらいの速度で顔を上げてこちらを見てくる美里さん。暫く二人して見つめ合う。無言の沈黙。その沈黙を破ったのはアキちゃんだった。
「ゴッホン。」
とてもわざとらしい咳払いをアキちゃんがしたことによって二人そろって現実へ帰ってくる。
「いや、これは違うのよ。別に私はそういうわけじゃなくて。別に二人で一緒のベットで寝てるとかそういわけでもなくて、まさかやましい行為とかも何もないのよ。安心して頂戴。」
全く安心できない内容を聞かされてしまた。思春期の男子としては女の子同士のやましい行為とかに興味があるわけで、そういう話は聞きたくなかった。この二人を直視できないじゃないか。というかそもそも、この二人ってそういう関係なの……?
アキちゃんに案内されながらナイトビジョンズの基地から地上へと戻っていく。基地内を歩くこと数十分、出口に辿り着いたところで、美里さんからもらったカードを使って扉を開ける。機械音がして扉が開く。久々に外に出られた気がする。
どうも、荒れ果てていたのは基地を中心に半径1km位だったらしい。少し基地から離れただけで普通の繁華街が広がっていた。流石に400年も経つと街並みは大きく変わっていた。チューブ状の何かが自分の頭の上を通っていているし。周りを走る車はしっかりと宙に浮かんでいるし。ビルも円錐状のものに変わっていた。道路もただアスファルトが無機質にそのままの色でひかれているわけではなく赤や緑に着色がなされて、道の端に謎の突起物もある。その他にも色々な変化があったのだが、それは今は置いとくして、一番驚いたのが街に入るのに関所があったことだ。