ドリーマー
「で、そんなわけで君には私達『ナイトビジョンズ』に参加してもらうわよ。」
「でも、俺……僕も元の時代に戻らないといけないと思うんですけど。」
一応の所善意で俺の事を引き取ってくれたあの家族に何かしらの形で伝えることがあると思うのだが。
「あなたが元の時代に無事に戻れると思うの?」
「何か、問だ……。」
そういうことか。問題は、俺が元の時代で行った犯罪の事だ。この時代ではどうだか知らないが俺のいた時代では最大の禁忌とされる。『殺人』
「分かったのね、そう。あなたは水上葵という少女を手にかけたでしょう?そんなことをした犯罪者が無事に戻れると思うのかしら?」
「そ、それは。」
「納得いったかしら?」
「ハイ。」
仮に元の時代に戻ったとして、俺は果たして何をしたのだろう。それに、偽りであったとしても家族だった人間たちになんと説明したらよいのか分からない。まさか直球に「俺、未来でなんかよくわかんない『ナイトビジョンズ』とかいう団体に所属することになったから。後、殺人しちゃったから。じゃあ、そういうことで。」他人から見れば俺は狂ったように見えることだろう。
「それに、殺人を経験した事があるというのはいい経験になるのよ。」
美里さんが理解のしづらい。できないことを言い出した。このナイトビジョンズというのは殺人推奨団体なのか?
「殺人がいい経験ってどういうことですか。もはや現代の人類の禁忌と言っていいことをいい経験なんて。」
「あなたはまだ分かってないのかもしれないけれど。私たちナイトビジョンズは戦闘を行うこともあるのよ。だから戦闘状態において殺すことを躊躇しているようでは絶対にあなたは生き残れないわ。つまり、殺人が行えるというのは一つのポテンシャルになるのよ。」
とんでもない1日だった。と、1日が経過した今だから言える。
今思い出しても大変だった。簡単にまとめると、学校へ行き、授業を受け、水上を殺害し、この世界へ連れてこられた。そこで、日付が変わってしまったから、ここで俺の1日は終わったと言える。
だが、ここで終わるほど楽な現実ではなかった。
「とりあえず、ユリ。羽石の影に潜みなさい。」
「ハイ。」
「そういえば、なんでドリーマーを影に潜ませる必要があるんですか?」
「それは、影はどうやっても切り離せない存在でしょう。もしものことがあった時にもちゃんと持っていられるじゃない。」
「その、あんまり考えたくないもしもの時ってなんですか……。分かりきってますけど。」
「そんなの勿論。へまして相手方に捕まった場合に決まってるじゃないの。」
「デスヨネー。」
そう、この可愛い外見をしたドリーマー達もかなりの高性能らしいのだ。通信具でもあるし、能力使用の許可をくれたり、超能力製造マシーンだったり。たしかに、捕まった時には助けを求められるし、能力を使って逃げることも可能だろうし、能力せいぞ・・・。とりあえず、便利ですね。
そういえば、気が付けば、ゆみさんがいない。ふと時計を見るともうすでに零時半、眠気が指してくる。この頃の時間。このシチュエーションは、夜中に年上の女性の部屋に訪れているというこの状況。
それ、なんてエロゲ?