表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
400年越しの願い  作者: 神船一
移動の末にたどりつく場所
12/51

到着地点

 俺がこの謎の世界に、時代に(?)連れてこられる理由のはずのこの部屋。何があるのか。

 部屋の中にあったのは、学校で先生が使っているような机と、一時期、姿勢がよくなるということで注目を浴びた椅子。や観葉植物などの必要最低限の物しかない部屋。

「え、なんですかこの部屋。」

「あー、ゴメン。部屋、間違えたみたい。」

と、言って胸の前で手を合わせる。

「ごめんね、私もここしっかり把握してるわけじゃないから。」

「どうするんですか?」

「そうね。あんまり頼りたくはないんだけどね。しょうがない。君も無駄に歩きたくないでしょ?」

「そりゃ勿論そうですけど。何か手があるんですか?」

「無いわけじゃないんだけど、私あいつあんまり好きじゃないんだよね。」

と、言って彼女は彼女の影を右手の人差し指と中指で2度叩く。その時に右手の甲に何かの紋章の様なものが浮かび上がる。

影を叩いた直後の彼女の手の紋章の上に一つの人影があった。

と、言っても実際の人間程のサイズではなく掌に乗りそうな位小さい、というか現に乗っている。ので、その表現はおかしいかもしれないが。

その人影は、同年代かそれよりちょっと上ぐらいの見た目をした男だった。よく見ればなかなかのハンサム顔で少しむかつく。

「よぉ、ずいぶんとご無沙汰じゃないか。」

「なんですか、これ?」

しゃべるとは思わなかった小さいやつがしゃべったので驚いた。

「あーこの子ね。」

ゆみさんが説明を始める。

「私たちの『リーダー』が私たちに持たせてる、通信具みたいな感じの物よ、他にもいろいろ機能があるけどね。名前はカイっていうの。」

「『リーダー』がいるんですか?」

「そりゃそうよ、組織に『リーダー』はつきものでしょ。」

「もしかして、これから会おうとしているのは・・・。」

「そうよ、今から会うのは私たちの『リーダー』。」

「そうですか、その人に会えばここに連れてこられた理由が分かりますか?」

「分かるんじゃない?私も君を呼びに行ったのも、『リーダー』に言われたから呼びに行っただけで、理由は知らないのよねー。」

そういって彼女は笑ってごまかす。

「それで、そのカイ・・・くん?をどうするんですか?」

「あ、そうね。カイ、コールナンバー01 もげき美里にコールお願い。」

「十?今十って言いました?」

「言ったわよ。」

 彼女は当然のことのように言う。でも待てよ、なんで俺と同じ苗字なんだ?十なんて珍しい名前だと思うんだけどな。ここは俺のいた時代とは違うってゆみさんが言ってたからもしかしてご先祖様か、子孫なのかな?俺がいた時代にも影から物を取り出すなんて言う技術は無かったから、未来なのだろうか。

 などと考えている間にゆみさんの表情が真面目な顔に変わる。通信がつながったみたいだ。

「どうも、神永です。」

カイ君がぽけーっと口を開けてゆみさんの手の上に突っ立ている。その間にゆみさんはカイ君に向かってしゃべっている。

「おう、ゆーちゃんか。」

カイ君の口がパクパクと開閉する。でもさっきほど低い声ではない。なんというか、幼い女の子のような声だった。

「すいません、地下にはもぐったのですが美里さんの所に行く前に迷っちゃって・・。すいません。」

「ゆーちゃん、約束通り、彼を連れてきた?」

さっきまでと違い語尾が上がっていた。明らかにテンションが高い証拠だ。

「勿論です。」

「なら許してあげる。」

「では、道案内をお願い出来ますか?」

「いいよ!今どこ?」

俺も知りたいよ、それ。

「それが、分からないです・・・。」

「しょうがないなーカメラで探すからちょっと待ってて。」

暫く待っていると、部屋の天井の隅に付いているカメラがこちらの方を向いた。ゆみさんは満面の笑みでピースをしている。俺はひきつった笑みを浮かべただけだ。

「見つけたよ!」

 実は俺は小さな子供がすごく苦手だ、不規則な動きや言動をするからどうも気に食わない。大人から見れば俺も十分子供だろうけど・・・。つまり、小さな子供が苦手ってことは俺もまだまだ子供ってことかな。まだゆみさんは『リーダー』との話を続けている。することもないので、椅子に座って待っている。大分歩き回ったので疲れたし、俺は結構インドア派なのだ。

登山?何それ、おいしいの?

という具合である。

 でも今は、昔は名をはぜたであろう世界中にある山々は第三次世界大戦で半分ほどが原型を失っている。原因は大戦なのだが、理由が分からない。山には軍事施設もないだろうけど何故か破壊された。今でも分かっていない。別に俺が世間に疎いわけでもない、おそらく知っているのは世界でも本当に一部の人間だろう。

「十くん、ちょっとしゃべってくれる?」

「え?なんですか?」

やばい、全く話を聞いてなかった。何か意見でももとめられてるのかな。

「『リーダー』が声を聴かせてくれって言ってるの。だから、お願い。」

なんだ。よかったー。

「カイ君に向かってしゃべればいいんですか?」

「そうよ。お願いね。」

椅子からゆみさん達まで移動する。歩きながら、何を言うかを考える。自己紹介でもすればいいのかな?

ゴホンと咳払いをして、息を吸う。

「どうも、十 羽石です。今年中3になりました。」

「おー!これはまさしく。」

なかなかの高評価を頂けたようだ。良かったー。

「じゃあ、今から案内を開始するね!」

やっと目的の場所に行けるみたいだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ