動き壊れた歯車
ド素人の作品ですのであまり期待しないでください
1日を振り返って大失敗をした!と思ったことは人間生活を何年も営んできたのなら必ずあっただろう
そして、それをやり直してみたいと思ったこともあるだろう。そして俺はそれを行える力を手に入れたのだ。
ただし、自ら自由にその能力を使うことは出来ない、
発動条件
①心の底からその1日の内どこかで心底を感情を動かされそれを納得できないと思うこと。
やりなおし世界でのルール
①の条件にあてはまるその日だけしかやり直すことしかできない。
②さらにその目標を100%達成するまで次の1日へ行く事ができない。
③その成し遂げたい何かがある日をやり直す日を自分の表層的な意識では決めることができない。
④その何かを成し遂げるor心の底からあきらめるまでは同じ日が繰り返される。
⑤死んでもすぐに同じ日の朝へと戻される。
“これが絶対の制約。”
何故、自分にこの能力が目覚めたのか、それは5年前の今日と同じ日付の日に巻き込まれた事件に関係しているだろう。
簡単に言えば、5年前の今日両親と妹が死んだ。それからは俺は一人ぼっちだった。
今まで夢の世界を旅していた俺の視界として機能していた目に三次元の現実世界の光が入る。
つい、
「うっ。」
と、短くうめいてしまう。これも”いつも通り”。”いつも通り”の自分の部屋。畳が床の和室の部屋だ、あるのは自分のベッドで目が覚める。和室の部屋にベッドというのもどうかと思う。
今日は2040年4月5日、7時15分。”いつも通り”の時刻。”いつも変わらず”にこの時刻に目が覚める。
変わらずに挨拶を交わす”偽り”の家族、この家にいる家族は本当の家族ではない。
あの事件の日以降に一緒に住むように強制された”偽り”の家族。向こうが善意で俺の事を育ててくれているので、こちらがいくら冷たくあしらってもこの家族はそれでも暖かかく接してくれる。
自分を受け入れてくれる場所があるのは嬉しいが実際の所は、そろそろ迷惑をかけたくないというより、むず痒いところがあるからあまり深くかかわりたくない。反抗期なのかもしれない、でもその反抗する対象がくどいかもしれないが、善意で俺の事を養ってくれているわけだから、反抗するのにためらいを覚えているのだろう。暴力なんてとんでもない、と思っている。学校の友達が親に暴力をふるった事を自慢げに話しているのを聞いても全くもって共感できたためしがない。
今年度が義務教育の最終年となる、高校に入ったら自立をしようと思っている。そのために今までもらって来た現金は殆ど残している。貯蔵額は10万単位これだけあれば初めの月ぐらいは乗り切れるだろうなどと考えている。”いつも通り”着替え、食卓へ向かう。
”いつも通り”食卓に着き偽りでありながら唯一の俺の家族。義父、義母、義姉、義弟、”いつも通り”の時刻に席に着く。実に”いつも通り”だ。
朝食は、トーストと目玉焼きとコーヒーとサラダ。”いつも”これだ、たまには朝に御飯も食べたくなる。だが、そんな意見は口にはしない。あくまで向こうは善意なのだから、俺より一つ下の義弟(野球部所属)が真っ先に食べ終わり、次に義父、次いで義姉、最後に残るのは”いつも”俺と義母だ。大抵が俺が先に食べ終わるのだが、今日は珍しく義母の方が食べ終わり、席を立つ。義母が去り際に
「羽石君。進路本当に進学でいいの?」
と、聞いてくる。義理であっても中3の息子を持つ母親に変わりない、息子の進路を気づかうのは当たり前だろう。
「別にいいよ。」
周りが進学を選んでいるのに1人就職や別の道を選ぶ気は無い、今まで通りなんとなく周りに合わせて生きていけば大抵の事はなんとかなる。
「行きたい高校とかあるの?」
少し語尾が下がっている気がする。義母はあまり俺の事をよく思っていない。養子に迎えるのは義父の提案で、無理やり行ったというのを後から知った。義父は俺の事を溺愛とまではいかなくても、普通に接してくれる。姉弟との関係は悪くは無いが、別段よくは無い。つまり、この家庭で俺の事をよく思っていないのは母親だけだ。義母としては、他人の子供である俺よりも自分の長男を優遇している面がある。そこに不満を覚えたことは無い。表層面では扱いは同じなのだから文句は言えない。進学に関しても金のかかる私立になんて行かせたくないというのが本音なのだろう。
「特にないなら、今度近くの”公立”の学校説明会とか文化祭に行ってみたらどう?」
あくまで金のかからない公立を押してくる。ここからも色々うかがえる。
「考えておきます。ごちそう様。」
居心地が悪くなって席を立ち学校へ逃げるべく準備をして、歯を磨き、顔を洗って玄関に立つ。
一応の礼儀なので、いってきます。と言い扉を開ける。
徒歩で通える距離なので無論徒歩で学校へ行く。登校途中に珍しく声をかけられた。
俺の数えるほどの友達とよべるクラスメイトの、木下 道だ。
「なぁなぁ、羽石知ってるか?今日うちのクラスに転校生が来るらしいぞ。」
「何処情報だよ、それ。」
「俺の独自の情報網については誰であろうと教えられない。新聞記者を目指すものとして当然だよな。」
そう、こいつはこのインターネットが普及して何十年も経ち殆ど需要の無い新聞業界を目指して日夜が頑張っているのだ。夢があるだけ俺よりましだろう。
「それで、その転校生がどうしたんだ?」
本音を言えばそこまで気にならないのだが、一応話を合わせておく。下手な事をして友人を減らしたくはないからだ。
「それが、めっちゃ可愛い女子らしいよ!」
本当にうれしいようで、語尾が上がっている。
「お前の好みだといいな。」
等といかにも中学生な会話をしているうちに学校へ着く。
朝の学活のため、”いつも通り”気の弱そうな担任の風間が腰が引けたように、教室へ入ってくる、だが今日は『いつもと違う。』それは後ろから人がついてきたことだ。それは担任と同じぐらい腰が引けた少女だった。その少女は背丈は小柄で、髪は肩までのショート、顔立ちも悪くない、幼さを残しているあたりが通好みだろう。童顔で小柄であるが故に保護欲が働きそうな外見だ。
担任が引け気味であるからこそ話が長い、グダグダと話したことを要約すれば、簡単だ。転校生ということそれだけだ。引っ越してきたのは聞いたこともない島だった、おそらく日本の隅っこの小さい島なのだろう。その割には言葉の中に方言のようなものが混じらないことに少し疑問が残るが、練習でもしてきたのだろう、ということで納得した。
多分俺とは無関係に過ごしていくのだろう。幸せなオーラをずっとまとっていることからこんな境遇である俺とは縁がないだろう。せいぜい新しい学校での生活を満喫してくれたまえ。
次の授業は何だったか、と朝の学活中に時間割を確認してみる。1時間目は担任である風間の社会だ、この授業は担当が気弱であることをいいことに家で見た夢の続きを見るのに当てさせてもらっている。時間は有効に利用しなくてはいけない。お休み。と隣の席は誰もいないが、誰に言うわけでもなく夢の世界へと落ちていく。
またあの夢だ、あの事件の日を必死にやり直している日々の夢。事件後しばらくしてから自分の能力に気づいて真っ先に試したことだった。何度トライして、成功しなくい、考えられる方法を試していく。
その行為は今でも気づくとあの日をやり直している事がたまにある、それでも成功しない。最近はやり直していると元の人生が進まなくなるのでできるだけ考えないようにしているのだが、こうして夢に見る。
肩を軽くたたかれた気がした、だが居眠り程度であの風間が何かするわけがない、周りにも寝ている奴はいるのに何故俺だけ?と疑問をもったまま肩を見た。
俺の方に乗っているのは細くて白い指。誰の指かと思えば、さっきまで空席だったところに座っている転校生だった。
顔一面に戸惑いの笑みを浮かべている、
「えーっとこれはなんて読むの?“じゅう”君?」
やっぱり読み間違いをされる、初対面ちゃんと読まれた試しの無い苗字。正しくは“もげき”と読む。
「違う、十と書いて“もげき”って読むんだ、俺は十 羽石。」
「ごめんね、読み間違いしちゃって・・・。」
謝ることはそれだけなのだろうか、俺は心地よく睡眠をとっていたのだが・・・
「でもね、授業中に寝ちゃだめだよ?」
そうか、そういえば今はまだ授業中だったのか、これでは俺の方に問題があるのが言われずとも知っている。
昨日までの日々が懐かしい、今まで隣に誰もいなかったから授業中に寝ることが出来たのだが、今はもう違う。名前をなんといったか転校生のせいで俺の今までの日常は壊れてしまったらしい。
「お前そういえば、名前は?」
今後名前が分からずに困るかもしれないので、純粋に聞いてみる。
「えーさっき言ったのに、聞いてなかったの?」
「悪いな、その辺りからドリームランドに旅立ってた。」
眠いので机に突っ伏したまま会話を続ける。
「それじゃ、しょうがないね・・・ってよくないよ!駄目だよ、学校で寝ちゃ。」
いいノリツッコみだ。
「うるさいなーいいだろいつ寝ても。そんなものは置いといてお前の名前だよ、名前。」
「よくないと思うけど……私は水上 葵。」
そうか水上葵というのか、よし寝よう。
「俺は寝る。お休みじゃ、次の休み時間になったら声をかけてね。」
「寝ちゃダメって言ってるでしょ。」
「分かった次から寝ないから今だけ寝させてくれ。」
「しょうがないなー。今回だけだよ?」
どうやら今回だけは許してくれるみたいだ。授業の終わりが近づいているので急いで夢の中へと戻る。
「十君、休み時間だよ。起きてー」
起こしてくれた。こいつの性格からして起こすと思っていたのだが。頼んでおいて起きないとも悪いので起き上がり伸びをする。
次の授業を知って落胆する。そう、次は体育だ。体育か少しテンションが下がる。運動はあまり得意な方ではないが下手でもないと思っている。でも面倒くさいものは面倒くさい。俺は基本的には面倒なことはしなことにしているので、体育は毎回テンションが下がる。しかし参加しないわけにはいかない。今年は受験が控えているのだ、体育教師に目を付けられて連鎖的に他の教師にも目をつけられるのは面倒だから参加する。それだけだ。
こうしてまた時間が過ぎていく。だが今までは同じ歯車が同じだけ回っていただけだったが、今日は違った新しい歯車が急に飛び込んできたせいでリズムが狂ってきている。それでも何とか状態を維持して一日がこうして終わる。
また帰ってきてしまった、夕暮れの明るい赤色の光の中でと黄ばんだ白い家だけが印象強く建っている。偽りの家族の待つ家の玄関前で思う。彼らには感謝しているのだがどうしても落ち着かない。でもいつまでもこうしているわけにはいかないので、扉を開けようとノブに手をかけた時のことだった。名前を呼ばれた気がして顔を上げる。家の中からではない、まだ俺がここにいることを知らないはずだ。というか、そもそもそんな呼び方はしない。苗字は新しいものを使用しているので、家族全員「十」だ。
ではどこから。 答えは二度目の呼び声ではっきりした。後ろ、今来た道だ。振り返ると、水上だ。あまり運動するタイプには見えないのだがその水上が綺麗なフォームで走りながらやってきている。よほど重要な事なのだろう。
「十くーん」
「重要な事」ぐらいは想像できるが細かい事は分からない。なんだろう、まさかとは思うが家が同じ方向とかいうわけじゃないだろうな。などと考えている間にさらに数度呼ばれている。なんだろう、俺は早く帰りたいわけじゃないのだが今は家に逃げ込みたい気分だった。
しかしいつまでも現実逃避をしているわけにはいかない。
水上も呼びかけながらこちらへ走ってきているのだから、
「やっと追いついたよ、十君」
息を弾ませて新品さが分かる制服のシャツの肩を弾ませている。夕日の中で印象深く映る。その光景を俺は傍観していた。息を整えて何を言い出すのかと思えば、
「十君も家こっちの方向なんだね、私もこっちなの」
嫌な予感が当たってしまった。水上はそのまま聞いてもいないのに自分の家が俺の家から50メートルほど行ったとこにあるなどと聞いてもいない事をベラベラと喋り続ける。少々うっとうしい。
「・・・って本当?」
今なんといった?ずっとどうでもいいことを話す口調だった声色が一気に変わっていた。でもそんなことはどうでもいい。水上が今聞き捨てのならないことを言った気がした。
「わ、悪い良く聞いてなかった。もう一回行ってくれるか?」
少し不自然になったが確認をとる。
「だから、その。十君のお父さんとお母さんが事故に遭って今一緒に暮らしている人たちは本当の家族じゃ――」
何故それを知っている!!両親が事故に遭って俺が一人になったのも違う地方の違う県だったのに、それを何故知っている。クラスの奴にも学校の教師の一部しか知らないはずの事を何故こいつが知っている。
「おい、お前なんでそれを知ってるんだ」
「担任の風間先生が十君がそのことがあったせいで学校のみんなとも少し距離を置いてるんじゃないかって、今日仲良くしてるように見えたからどうなのかを聞いて欲しいって言われたから・・・」
あのふざけた担任め。
俺の中で何かが飛んだ。目の前が真っ白になり周りがよく見えない中で思考だけが高速でまわる。
風間め!”いつも”不干渉なふりをしておいてここで転校してきたばかりの生徒にプライベートな事を話すのか、人には言えない過去っていうのがいくらでもあるだろうに、それを、こんな小娘に。今までの俺の日常をどこまで壊せば気が済むのだろう。
あんなところに義弟のバットがあるじゃないか、しかも材質は金属。さらに周りには誰もいない。好都合だ。
「なぁ、水上ちょっとあっちにある公園まで行かないか、少し野球がしたくなってきた」
勿論嘘だ。
「え、でも私野球なんてやったことないよ?」
「いいんだ、ただ一人だと練習にならないからさ、たまには誰かとやりたいんだよ。そんなに長い事は無い、すぐ終わる。」
見上げた空から察するに、夕方から夜へと移り変わっていく時間。青と赤のグラデーション。
自宅の近くに自然の多く残っている公園がある。誰もこんな時間にあんなに木に囲まれた公園に行きたがるはずがない。
「場所分かるか?ついてこい」
怪しまれない様にバットとを手に取り、『わざと』ボールを忘れて家を出る。
5分ほどすれば公園に着く。
木に囲まれた入口へ二人で入り中央の広場へ向かって歩いていく、広場に着いたところで。
「悪い、俺。野球なのにボールを忘れたよ、すぐ戻るからそこのベンチに座っていてくれ。」
「え、なに忘れたの?私も取りにいこっか?」
「大丈夫だからここにいてくれ。」
忘れ物をしたというのも嘘。後ろを見ないようにして足早に木の中へと消えていく。ある程度進んだところでふり返る。水上がこちらを向いてい無い事を確認してから、気配を消して後ろから忍び寄る。
距離にして10メートルほどゆっくり時間をかけてでも気づかれない様に近づく。頭の上までバットを振り上げて一気に振り下ろす。
ゴン。鈍い音が響く。当たり所が悪かったらしく気を失う。好都合だ、俺としても同年代の女子の悲鳴を聞きながら殴るのは気が進まない。無慈悲にバットを振り下ろす。ここはクールに行うしかない。
空白の時間
アレ、記憶がない。だめだ何をしていたのだろう。もう周りが暗い。早く帰らなくてはいけないな偽りとはいえ家族に心配をかけるのは気が進まない。
アレ変なにおいがしないか?
ところで、俺は何を持っているのだろう、金属バット?
先が濡れている、赤黒い何かで。これは血?全く、何なのだろう。よく見れば服も汚れている?
これはなんだろう。人型の何かが落ちている。よく見ると、一人は見覚えがある、担任の風間ともう一人は・・・『水上』だ。二人とも何かに囲まれている。赤い液体、バットの先端にあるものと同じではないのだろうか、そんなはずはない、そうだ、二人の肩を揺すってみよう、そうすれば何事もなかったようにおきあがるんじゃないのか。
「おい、水上」
「・・・」
「おい、水上!水上!返事をしろよ!どうせ生きてるんだろ?動けるんだろ、こんな冗談やめろよ、ふざけるな!今日転校してきたばっかで死んでんじゃねーよ。」
誰だよ、こいつを殺したの、おい。
視界が垂直に下に下がる。膝に何かがぶつかる感じがした。地面だ。
おそらく今誰かがこの光景を見たら死体に囲まれて膝をついて血まみれの中学生が見えるはずだ。