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五日目
しゃん、しゃん、しゃん、しゃん、しゃん。
うす暗い部屋、カーテン越しの光の中。
黄、青、赤、黒、白の塊が跳ねては落ち、跳ねては落ち。
くるくるとお手玉を繰る・・・とはいかないらしい。
「やっぱり無理か」
部屋に残ったままの小豆お手玉を机の上に放り投げ、部屋のど真ん中に大の字になった。
「……まったく、子離れのできない親を持つと苦労するよ」
親父の部屋から引っ張り出してきたアルバムを開いて、そのページを探す。
母親の幼いころの姿が貼られているページ。
「ねえ、母さん」
写真の中でお手玉を繰る少女をぱちん、と弾く。
開け放った扉と窓を無遠慮な風が吹き抜けていく。
ゆっくりと吸い込む、外界の空気。
いきばをうしなった女と、いきばをうしなった私。
ほんのひと時、二人のいきどまりだった部屋に、やっと世界の息が吹く。
「いってらっしゃい」
今、ここが、私のいきば。
――どんとはれ。