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道しるべ

作者: 絆-Kizuna

 一年前、僕は暗い部屋の中で暮らしていた。

カタカタとなるキーボードの音と、時折届くあの人のメールだけが僕の存在を証明していた。

今日もまた、一通のメールが僕の元へと届く。

 題名

 「ただいま〜」

今日、バイト先で嫌な事があってさ〜。なんだかちょっと凹んでます( -_-)

ラットは何かあった?

 ラットって言うのは僕のネット上の名前、オンラインじゃ僕は気ままな大学生活を送る大学一年生。メールの相手は、現在高校三年生のミア。性別は女。

ネット上の掲示板で親しく今では毎日メールのやりとりをしている。

 題名

 「Re:ただいま〜」

そっか、それはお疲れ様。俺はいつもと同じ、大したことはなかったよ。

あ、帰りに友達とビリヤードに行ってきたよ(^O^)

 慣れた手つきでメールを打ち返す、嘘で固めたメールを……。

やった事も無いビリヤードに居るはずもない友達。

もう、嫌になってきた。 題名

 「ビリヤード!?」

おぉ〜、カッコイイね☆

すっごく見てみたいな〜

Σあ、今度そっちの方にいく用事があるから……その時にビリヤード行こうよ!

 一緒に……?

行けるはず、無いだろ。

ラットじゃない、本当の俺はこんななんだからさ。

その日、僕はミアに返事をしなかった……。

そして、ミアから届くメールを全て無視して深い眠りの中へ沈んでいった。

〜・〜・〜・〜・〜

 朝……。 鳥のさえずりで目を覚まし、いつものようにPCを起動させる。

未読メールが4件も溜まっていた、もちろん全部ミアからだ。

 一通目

「どうしたの?」

 二通目

「お〜い!!」

 三通目

「寝たのかなぁ?」

 四通目

「大丈夫〜?」

 メールの題名を見ただけでまた虚しくなってきた。

嘘だらけの自分に会いたいというミア、けど僕はこの部屋から出る事は無い。

いや、出来ない……。

 題名

 「ごめん。」ミア、ごめん……。

いきなりで悪いんだけど、もうメールするのやめるよ

カチリ、と送信ボタンを押す……。これで、ミアとメールするのも終わりか。

そう思うと何故だか泣けてきた。悲しくなんか、無いはずなのに。

 題名

 「どうして?」

あたしが会おうとか言ったから?ウザかった?

いきなり、そんな事……。理由、教えてよ。

 すぐに返事が来た、授業中じゃないんだろうか。

 理由……。 今、ここで嘘を付くのは簡単だ……。けど、もう虚しい思いはしたくない。

それに、もうミアに嘘を付きたくない……。

ネットで知り合った人間にこんな気持ちを抱くのは変かもしれない、けど。

僕はミアを好きになっていたから、嘘はやめよう。

 もう、いいだろ?本当の事、話そう……。

 題名

 「実は……。」

〜・〜・〜・〜・〜

 あの日、僕はミアに真実を告げた。自分は大学生じゃない事、

大学受験に失敗して引き込もりになっていた事、

友達なんか居なくて全て嘘だったこと……。

 全てを知ったミアからのメールは、僕の想像を遥かに上回っていた。

あの日のメールは、今も保護して残してある。

 そして、僕は……。

大学に向かう電車に揺られていた、隣には同じ大学に通うことになったミアが微笑んで僕を見つめている。

あぁ、今日も空が青い。

  〜・〜・〜・〜・〜

 題名

 「そうだったんだ」あたしには難しいことわからないんだけどさ……。

ラットはラット、だよね?

今、引き込もりって言われて確かにビックリしたよ?嘘付いてたってのにも少しムカってした(;-_-+

けど……。

う〜ん、何ていったらいいんだろう……。

あ!ほら、空見てよ!

ね、青い空見てると悩んでるの馬鹿みたいじゃない?

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