終章
「―――そして、皆と仲良くなれたオレはこの学校に編入し、英雄部でこうやって話をしているわけだ」
狭い部屋には、五人の少年少女が居た。
「素晴らしい話です。それが無色の言う〝白と黒のコントラディクション〟と言う話なんですね」
白髪の少年――想真白蓮は、黒い髪の少年――無色透明の話にじっくりと耳を傾けていた。
「想真さんってこういう話好きデスネ。流石、英雄部の部長デス!」
緑の髪の少年――井水戸玄奥が言ったことに対し、想真は楽しそうに答える。
「そういう井水戸も、好きだからこの部に居てくれるのでしょう?」
「そうデスネ。我輩もこの部活が好きデス。こんな風に自分たちの身に遭った奇想天外な話をしても、誰も嫌な顔をせず聞いてくれますカラ」
井水戸の言葉に、私もこの部活が好きだ、と孤月流夜は思った。
「お次は〝アナザー・ワールド〟という、我輩の体験した話をしまショウカ」
「いいや、ここは部長の僕が〝絶対の少女〟について話してあげましょう」
〝その話はもういい――もっと別の話をしてくれ〟
と、どこからともなく言葉が降ってきた。
「あっ、紫香楽ちゃん。遊びに来ていたんだね」
私たちは、この学校の学生ではない紫香楽を快く迎え入れる。
「そう、彼女こそがこの〝英雄部〟を作るきっかけになった少女なのですよ」
想真は楽しそうに話始める。
小さな机にお菓子を広げ、ジュースを飲み、各々が現実味のない妄想の様な話を語る。これが私のいる英雄部だ。
大人の人達に話すと、ただの妄想話としか思ってもらえないだろう。
だが、私は知っている――彼らの話す話が本当のことであると。井水戸くんが居るからとか、無色くんが居るからとか、紫香楽ちゃんがいるからとかではない。
だって、私が知っているのだ。
無色くんがどういう人か、紫香楽ちゃんがどういう人か、井水戸くんがどういう人か。
彼らの話はまぎれも無い現実なのだ。
「ねぇ、みんな。せっかく無色くんがこの部活に入って部員が増えたことだし、記念に写真を撮ろうよ」
〝おー――いいな――撮ろう〟
「あれ?紫香楽はここの部員、ていうか、そもそも学生じゃないよな?」
〝細かいことは気にするな――無色〟
「彼女もここの部員みたいなものですから。さて、皆で記念撮影をしましょうか」
「無色、入部おめでとう写真デス」
「それじゃあ撮るね、一+一は?」
「「に~!」」
これが、私にとっての幸せな日常だ。
そして、オレにとっても幸せな日常だ。
写真の裏――科学世界暦二〇二一年七月十五日 誕生日に部活の仲間と一緒に 無色 透明
お話はこれでお終い――