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七章 グレイの最期

 走り去る警視長の車を、ビルの上から眺める。

「お別れくらい言ってもよかったんじゃありまセンカ?」

 大通りへとまぎれる車を見送ったアナザーは尋ねる。オレは何も答えず走り去る車を眺めていた。

 ピピピッ、と携帯が鳴り響く。

「何のようだ、杉野」

 通話を押すと同時に言葉を吐く。

『ふははははっ!流石だな、グレイ!私だと分かるとは、はははっ!』

「……私の願いを叶えろ、か?」

『あぁ、そうだ!私の願いを叶えろ!今すぐ紫香楽を殺せ!』

 オレは僅かに間を置き、答える。

「お前の願いは叶えない――二度と連絡するな」

 電話を切り、携帯を腰に付けたポシェットへとしまった。

「お別れ、言わないんデスカ?」

 ため息を吐き、携帯取り出す。メール画面を開き、本文を入力する。あて先は先輩と店長と警視長さん。

《 さようなら グレイは死にました もう二度と会うことは無いでしょう 》


 ****


『お前の願いは叶えない――二度と連絡するな』

 そう吐き捨てるように言われ、電話は切られた。

「くそっ!どうして思い通りにならない!何がダメだというのだ!」

 私は汚れた手術台に額をこすらせながら思いっきり台を叩いた。

 手術室は汚れている。何年も使われていないからではない。薄い明かりだけでもわかるくらい、あたり一面が〝血塗れ〟なのだ。

 黒く変色しひび割れが入っている血痕、茶色く変色し乾いた布で拭いても落ちない血痕、そして―触ればまだ暖かそうな鮮やかな紅の血痕。邪魔するものを何人も始末した部屋。

 漸く、漸くあやめの敵をとれると思った――だが、グレイは私を裏切った。

「違う――本当のグレイならキミを裏切らなかった」

 扉が開く音もせず、私の前から声が投げられた。

「――!」

 慌てて面をあげると、血濡れた台の上にグレイが座っていた。

「貴様、いつの間に!」

「グレイはもう死んだ。もうどこにも現れない、オレの名前は―――」

「――なるほど、あの手紙にあった通り、やはりお前がが解いてはならない数式を解いた人物だったのか!」

「手紙、ね。そんなもの無くても、この格好見ればわかるでしょ」

 そう言って、盾と矛の刺繍が施され無数のバッジが付いたコートを広げて見せた。

「これだけ資格と称号を持っているのはオレ一人だけだ」

「大っぴらに見せていると、フェイクだと思うだろう。それで貴様は私に何をしに――」

 目の前に居るグレイを見失ったかと思うと、鳩尾にきつい衝撃を喰らいその場に倒れ込む。

 崩れ倒れた私の右手を掴み、グレイはこちらを冷めた目で見下ろしていた。

「げほっ、ごほっ」

 痛みから、恐らく膝蹴りを喰らったのだと推測を立てる。

「個人的な用だ。キミ、オレの周りをうろうろと鬱陶しいんだよ。先輩に怖い思いまでさせるし、アナザーをダシにあんなアニメまで作るし。だからキミをいたぶって、いたぶって殺してやろうと思っただけさ」

 倒れた私の腹を何度も蹴ってきた。

「痛い?ねえ、痛い?痛いよね、だって何度も蹴られているんだもん。はははっ、もっと痛いことしてやろうか?」

 私の右手を離したグレイは、右手で首を掴み持ち上げる。

「――っ!」

 気管が狭まり、息苦しさを感じる。しかし、それよりも危ないことをするつもりだと気づいた。彼は左手に、真っ白なナイフを握っていたのだ。

「よ、よせっ――うあああああ!」

 白いナイフは真っ直ぐ私の右眼へと刺さる。眼球を裂き、神経を介して脳へと痛みが伝わる。抉る様にナイフが動くたびに、激痛で意識が飛びそうになった。必死にこらえていると、血をまき散らしながらナイフが引き抜かれた。

「うぅ……ぐっ!」

 易々と壁に向かって投げられ、背中を強打して呼吸が僅かに止まる。ずるずるとその場に倒れ込む。刺された右眼を押さえ左眼でグレイを見ると、すぐ目の前に立っていた。

「何よりもキミに問いたい――この部屋で一体何人殺したんだ。これだけの血痕、一人や二人じゃないよね」

 ぞくり、と背筋に寒気が走る。

 何のためらいも無く刺すなんて、こいつは狂っている!逃げなくては、逃げなくては!

 体を起こそうとすると、ずしりと体重をかけて押さえつけられた。

「や、やめろ!離せ!ひ、人は殺していない!本当だ!」

 がくがくと身体が震えるのが分かる。あまりの恐怖に、左眼からは涙が零れ落ちる。

 どれだけ哀願しても、グレイは口を歪に歪ませ笑うだけだった。

 彼の振り上げたナイフが右肩へと刺さる――

「うああああああ!」

 焼けるような痛みに絶叫する。今度は抉られることなく引き抜かれた。しかし――直ぐに横腹へと焼けるような痛みが走る。

「ああああああ!」

 どうにか視線を動かし左眼で右横腹を見る――白衣が真っ赤な血で染まっていた。

(ま、さか――)

 痛みと恐怖で震えながら、私はグレイの方へと視線を向ける――歪に笑う口、灰色の瞳、何度も振り下ろされる左手、刺さり抉るナイフ。腹部に、腕に、太ももに、鳩尾に、そして、心臓に―――

「うわあああああああああああ!」

 叫び声とともに私は飛び起きた。ばくばくと異常な速さで心臓は脈を打つ。

「はぁ、はぁ、はぁ」

 落ち着かない呼吸を気にする暇も無く、両目で自分の身体を見回す。

「はぁ、はぁ――傷が、無い?」

 白衣は相変わらず真っ白で、両目はきちんと見えていて、痛む場所も無かった。

「わ、私は、確かに体中を刺されて――」

「――死んだよ」

 声のした左を向くと、すぐ真横に血塗れの男が立っていた。

「うあああ!」

 見下ろす灰色の瞳に恐怖を感じた私は、男からすごい勢いで後ずさりをして離れる。

 二mほど離れると、地面を必死に這っていた左手に何か液体が付いた。驚いた私は咄嗟に振り向く。

 金色の髪、抉られた右眼、滲み出る血、血、血――目の前には自分の死体。

「うわあああ!」

 右の方へと床を這いながら逃げる――かつん、と目の前に黒い靴。

 上半身を起こしながら視線を上へと――

「だから、そんなに泣くことはないだろう?」

 強張る身体を必死に動かし、後退しようとした私をあっさりと捉える。

「わからないかい、キミは死んだんだよ」

「ひっ!は、離せっ!」

「………キミは死んだんだよ、見えないかい?ずっとキミを呼ぶ彼女の声が」

 ――彼女?

 その言葉を聞き、何故か冷静になった私は彼以外を見ようとした。

「もう、見て見ぬふり、気付かないふりは止めようよ。紫香楽を殺せ、っていうお願いは訊けない。昔、紫香楽の兄のカンデラに、彼女だけは何があっても守ってくれ、って願われているから。でも、警視長さんに、あんたを助けてくれ、って言われているんだ。約束は破れないよ、カンデラも警視長さんも大切な人だから」

 彼は手に持っていた真っ白なナイフを仕舞う。

「ずっと、あやめさんはキミの傍に居る」


 ****


 私は、紫香楽ちゃんからいろんな話を聞いた。司書のこと、三裏と三異のこと、三異条約のこと、紫香楽ちゃんのこと。

〝だから――僕は孤月に何もしない――尼野にも何もしない〟

 ゆう子ちゃんは、中々話について行けないみたいだったけど、何事も無いと知ると嬉しそうに笑った。

〝お前たちとなら――いい友達になりれそうだ――僕は紫香楽――可愛い女の子だ〟

「可愛い、って自分で言っちゃうかなー。私の方が可愛いよ。ね、流夜」

「二人とも、可愛いよ」

 私は笑って答える。

 ゆう子ちゃんは途中で車を降りた。

「あ、私の家はここらだから。流夜、また会おうね」

「うん、今度は私が会いに来るね」

 中学校の頃と何も変わらない、私と彼女の関係。嬉しくって、涙が出そうだった。

「お次はお嬢さんのお家だな」

 車を走らせようとした時、私と相甲斐さんの携帯からメールの着信音が鳴り響く。

 二人は携帯を取り出し、メールを開く。差出人は井水戸くんだった。

《 さようなら グレイは死にました もう二度と会うことは無いでしょう 》

 もう二度と会うことはない―――

「えっ?どういうこと?」

 相甲斐さんは井水戸くんに電話をかけた。しかし、現在使われておりません、と言うアナウンスが流れた。

「どういうことだ。あやつ、一体どこへ行った」

 井水戸くんにメールを送ってみるが、エラーメールが返ってくるだけだった。

〝――そうか――もう――終わりにしたのか〟

 私も相甲斐さんも、紫香楽ちゃんの言った〝終わりにした〟の意味が分かったのは、二日後だった。


 ****


 管理司書駐在中央図書館――グレイと杉野はその最上階へとやってきた。閉ざされた扉の前、杉野は静かに尋ねる。

「どうやって入るつもりだ?ここは施錠されているぞ」

 グレイは一つのバッジを外し、杉野の方へ投げた。

「――!これは、管理司書の資格ではないか。まさか、こんなものまで持っていたとは」

「世界際資格全二百二十三個中二百二十一個、世界際称号全五十六個中五十四個を保有している。だから、大体の世界の重要機関に合法で入れるんだ」

「ふっ、天才、というわけか」

「――いや、オレは天才じゃない」

 グレイは小さな鍵を取り出し、がちゃりと施錠を外した。大きな扉を開く――巨大な本棚、無数の本、スーパーコンピューター。

 杉野が去った五年前から、ほとんど変わっていなかった。

 中へと入り扉を閉め、二人はスーパーコンピューターの前へと歩いて行った。グレイがかたかたとキーを叩くと、画面にあやめのデータがいくつも表示された。

「なあ、杉野。この精密検査ってどういうものか知っているか?」

「異世界の力や異世界との関わりを持っているかを調べるものだろう」

 杉野は淡々と答える。

「まあ、そうなんだけどね。この検査の方法ってさ、ちょっと()があるんだよ」

 グレイはそういうと、あやめが最後に受けた六年前のデータを開く。

「これに載っている通り、〝魔法〟や〝錬金術〟、〝念動力〟に〝まじない〟といった異なる世界の力を持っているかを調べる。白く表示されているのが持っていない力、黒く表示されているのが持っている力――彼女は全部白、どの力も持っていないね」

「当然だ、彼女は異名ではないのだからな」

「でもね――」

 グレイは視線を画面から杉野の方へと向ける。

「――ここには載っていない項目が一つあるんだよ」

 杉野は顔色を変え、画面を覗き込む。

「そんな馬鹿な――すべて調べているはずだ!」

「ちなみにその項目が乗っていないのはここにあるスーパーコンピューターだけだ」

 杉野は目で項目を上へ下へと読んでいく。王、軍、司書、妄想、閉鎖――最後まで見終えて気付く。

「――――科学の項目が無い!」

「ああ、そうさ。このスーパーコンピューターでは科学の力を感知しない。これはあくまで科学世界に居る条約違反者を調べるもの。この科学世界の条約違反者を調べるのに、科学の力を調べる必要はない。だって、この世界に居る科学の力以外を持っている者を探さなくてはいけないのだから。故に、このスーパーコンピューターは科学の力を感知しない」

 杉野は、そこから導き出される一つのことを考えていた。

「あやめは、まさか、異世界の力を持っていなくて――科学の力も持っていなかった?」

 全ての力を持っていない存在―――

「―――ドッペルゲンガー」

 グレイは静かに答えを言う。

「杉野あやめは、キミに会う前からドッペルゲンガーだった。ドッペルゲンガーの特徴は〝すべてを持っていない〟こと。そうさ、彼女は異世界の力どころか、この科学の力すら持っていない」

 杉野はグレイの服を両手でつかむ。

「だが貴様は言った――あやめは霊となって私の傍に居ると!ドッペルゲンガーには霊となるはずの魂も無い!」

「そう、だから何でも見える司書のキミにはあやめが見えない。霊として不完全なんだ。零へと消えるはずの彼女は、キミへの思いでわずかに留まっている。たぶん、三裏の奴らにしか見えないし、聞こえない。彼女は本当にキミが好きだったんだろう。何も持たないはずのドッペルゲンガーが魂を持つほどに」

 杉野はその場に膝をつき崩れた。

「ドッペルゲンガーは〝(ゼロ)異名(いみょう)〟。自分の世界を持たないがために、どこの世界に居ても異名となる存在。すべてを持っているアブソリュートと真逆の存在。そんな絶対と虚無が合わさると何が出来ると思う?」

「なに、が?」

 杉野はグレイを見上げる。

「世界、だよ。人にとっての世界――人生」

 ぎぃ、と耳障りな音とともに、扉が開く。扉の前には、真っ白な影が立っていた。

「………紫香楽、か?こんな所へ何の用だ………」

 紫香楽は真っ直ぐと杉野の元へとやってくる。

〝僕は謝らない――条約に則り裁きを下したまでだ――異名もうは始末した――そして――お前たちに恨みはない〟

 杉野は自嘲染みた笑みをこぼしながら言う。

「だから私にも恨むことを止めろと?」

「彼女を見ても、恨めるならどうぞ」

 そう言って、グレイは杉野の後ろを指さした。

 杉野が振り向いた先――茶色の髪の女性。

「あ、やめ?」

シんヤさん―――しんやさんのことア――テい―スあいしています

 ノイズの混じる声でささやき、あやめは杉野を抱きしめた。

アイ――クれてあいしてくれて)―リが―うありがとうさ――なら(さようなら)―――――》

「まってくれ、あやめ!逝かないでくれ!あやめ!」

 消えかかるあやめの魂。グレイは思う――これが最後の仕事だ。

「杉野、あやめ。キミ達の願いを何でも一つ叶えてやるよ―――」


 紫香楽とグレイが去った後、部屋には抱きしめあう二人の姿があった。


 ****


 中央図書館から紫香楽とグレイはやってきた。

「遅かったデスネ。待ちくたびれマシタ」

 我輩は、いつもの様に文句を言いつつ二人を受け入れる。

「ああ、もう終わったよ。アナザー、いや、井水戸。本当にもう終わったんだ」

「グレイ?どうしたんデスカ?」

 いつになく真面目に彼は答える。

「グレイはもう死んだ。何処にもいなくなる。オレを探しても、もうどこにもいない。そしてキミの夢ももう終わりだよ。全て今日で終わりだ」

 グレイが指を鳴らす。

 我輩の意識は暗く、暗く、暗く塗りつぶされていった―――――


 この日以来、グレイ・パラドックスを見たものは居ない。


 我輩が目を醒ますと、見知らぬベッドに居た。

「あっ、お父さん、お母さん、げんおうがめをさましたよ!」

 どこか懐かしい声――

「あぁっ!玄奥、よかったわ、目が覚めたね――」

 女の人が我輩を抱きしめながら涙を流す。この人は誰だ?

「玄奥、今まですまなかった。お前は私たちの子だ、すまなかった」

 男の人が我輩の手を握りながら涙を流す。この人は誰だ?

 起き上がり、辺りを見回す――病院だ。何気なく見た手の甲には、親指の辺りに擦り傷があった。

 そうか、我輩は井水戸玄奥で、死んだ我輩はアナザー・ワールドになったんだ。

 あれ?でも、今玄奥って呼ばれたような?

「げんおう、だいじょうぶ?お姉ちゃんがわかる?一週間も眠っていたんだもん、びっくりしちゃったよ。ごめんね、お姉ちゃんが目を離したから、川に流されちゃったんだもんね」

 川――一週間も眠っていた?

川に流されたのは十一年前で、我輩は確かに死んだ。それなのに、眠っていた?

「お母さんもごめんね、玄奥は私たちの子で、あなたが居なくなってはダメだわ。きちんと検査をしてもらってわかったわ、お母さん、AB型の遺伝子とO型の遺伝子をもっていたの。玄奥はちゃんと私たちの間に生まれた子だとわかったわ」

「玄奥、これからは家族四人で仲良く暮らしていこうな。いままで酷いこと言って悪かった。お前が生きていてくれて本当に良かったよ」

「お父さん……?お母さん………?」

 ―――グレイは?我輩の代わりに井水戸玄奥として生きていたグレイは?

これは夢なのだろうか、それとも、今まで見ていたのが夢なのだろうか。夢が覚めたら我輩は消えるのではなかったのだろうか。

「もう心配ない。これからは今までの分を取り戻すために、たくさんかまってやればいい」

 聞きなれた低い声に、我輩は入口の方を見る。

 黒い短髪に灰色の瞳、真っ黒な袖も裾も長い金の刺繍が施されたコート、無数のバッジ、片裾に金の刺繍が施された黒いズボン、マイクの付いたヘッドフォン、アメジストのピアス。

「グレイ!」

 名前を呼ぶと、彼はくるりと背を向け病室から出て行った。

 我輩は急いでベッドから抜け出し、グレイの後を追いかける。

「待って下サイ!グレイ、これはどういうことデスカ!」

 子供特有の舌足らずな喋りといつもより低い視界に、自分がまだ五歳であることを自覚する。

(まさか、我輩は死なずに家族と暮らすことになったのデスカ?でも、でも、どうしてこんな風に我輩の身に起こったことを変えたんデスカ!我輩は死んだはずなのに、どうしてデスカ!)

 昼間だというのに、先の見えない真っ暗な病院の通路――彼は静かに答える。

「グレイ・パラドックスはもう死んだ――キミの知っているオレはもう死んだんだ。でも、欲張りなキミの願いはきちんと叶えたよ。これからキャンプファイヤーだって出来るし、ちゃんと家族に会うことも出来る。それから、虐待されることなく幸せに生きていける。今までの日々は夢だと思えばいい。これからの現実は、キミの本当の世界だ。でも、もし夢に会いたいなら十五歳になって明日希高校へ行けばいい――孤月先輩はそこに通うから」

「待って下サイ!我輩は死んだのデス!どうして今更こんな風に我輩を生かすのデスカ!我輩の夢に飽きたと言ったのは貴方デス、理由を教えてくだサイ!」

 ふっ、と笑う声が聞こえた。

「後悔、していたんだよ。どうしてあの時、無理やりにでもキミを連れてあの場を離れなかったのか。キミのことを助けたいと思うなら、初めからそうするべきだった。キミを殺したのはオレも同然だ。だから、今度はちゃんと助けたよ。十一年間さまよわせたお詫びに、幸せな家庭をプレゼント。でも大丈夫、それはもう夢じゃない」

 こちらを振り向き、彼は笑う。

「――――井水戸玄奥として過ごした十一年間、楽しかったよ」

 静まり返る廊下。先程までの暗闇が嘘のように明るい廊下に、もうグレイには二度と会えないことを悟った。

 廊下にあるデジタル時計は、二〇一〇年八月四日午後二時一八分を表していた。


 ****


 二〇二一年七月十日月曜日午前十一時二十四分――

「悪かった、うっかりしておった。はっはっはっ!」

「むぅー、これが無くてすーごくすーごく困ったの。鍵はきちんとミィに返しに来てっていったのー!」

 手足をバタバタさせ、ミィは警視長に文句を言い続けた。

 警視長の手には、永久未解決事件の資料を保管してある部屋の鍵が握られていた。

「すまんかった、本当に私が悪かった。今後気を付けよう、はっはっはっ!」

「もう!永久未解決事件が一つ忽然と消えたから、すっごく忙しいの!消えたあの事件、グレイが関わっていた事件だったの!」

 警視長の笑い声が響くなか、こんこん、と扉をノックする音が聞こえた。

「はいはい、開いているの」

 ミィが返事をすると、ゆっくりと扉が開く。

「本日付でこちらに配属されました、杉野です」

「――!杉野、お前さんどうしてここに!」

 入ってきた金髪の司書に対し、警視長は驚いて声をあげた。

「相甲斐か、色々あってな」

「色々?」

「深夜さん」

 どこか懐かしい女性の声に、警視長は扉の方へと視線を移す。

「あぁ、あやめ。待たせてすまないな」

「あ、あやめ君?!何故あやめ君が!」

 茶色の髪を片方で結ったナース服姿の女性。五年前、この部屋で亡くなったはずの女性。

「相甲斐さん、ご心配をおかけしました。私のせいで深夜さんも相甲斐さんも大変な目に遭ったでしょう」

「そ、それよりも、あやめ君はたしか、ここで……」

 わたわたする警視長に対し、あやめは柔らかな微笑みを浮かべた。

「相甲斐さん、私はこの世界の人ではありませんでした。私はアブソリュートさんと対になる存在、虚無のドッペルゲンガー。ですから、アブソリュートさん殺されてもおかしくはありませんでした。異名、ですから」

「お前さんが、異名――」

「本来何も持たないはずの私は、深夜さんを愛するあまり魂を持ってしまった。だから、アブソリュートさんも迷ったはずです、私が本当に異名なのかどうかと。でも、アブソリュートさんは何一つ間違えていません。だから彼女を責めないで下さい、お願いします」

 あやめは優しく微笑みながら言葉を続ける。

「身体が朽ちてなおも存在し続けた私の中途半端な魂に、お優しいアブソリュートさんが新たな器を下さったのです。そして、コントラディクションさんが私をこの世界の人として存在させてくれました」

「アブソリュートとコントラディクション?もしや、紫香楽とグレイのやつか?」

 彼女は微笑みながら頷いた。

「いい事ばかりではないがな」

 杉野は眉間にしわを寄せながら言った。すると、ミィが封筒から一枚の紙を取り出し、内容を読み上げる。

「〝我々WPは、元・管理司書杉野深夜の件について、ドッペルゲンガーに魂が宿るという類を見ない事件であった上に、そのドッペルゲンガーが親族という立場であったことにより起こった事件とし、本人に悪意があって行ったものでないと判断する。しかし、管理司書という大役を担う者でありながら及んだ数々の行為は許しがたいものである為、今後三十年間の監視処分を科す。違反内容――念動力、魔法、異名の召喚、アナザー・ワールドの悪用及び管理司書の公務放棄〟なの」

「三十年は、いくらなんでも長すぎる………」

 杉野は頭を抱えながら呟いた。


 ****


 二〇二一年七月十日午後四時十二分――日が傾き出した夕方、物語の終止符(ストーリーエンド)

 店長は紅茶を淹れながらつぶやいた。

「はぁ~、結局僕の願いは叶えて貰えないままじゃないかぁ」

 紫香楽はいつもの様に淡々と言葉を投げる。

〝ドンマイ――店長〟

 グレイが消えた日から二日、店長は一分おきにずっと同じことばかり言っていた。

〝店長はグレイに――何を叶えて貰うつもりだったんだ〟

 甘いアップルパイを食べながら、紫香楽は言葉を投げた。

「えぇ?教えないよぉ、紫香楽には死んでも言いたくないもん」

 ざくり、とフォークが店長の手の甲に突き刺さる。

〝あぁ――すまん――間違えた〟

 店長は刺された手の甲を押さえながら、身悶える。

「うぅ、紫香楽は僕に対して意地悪だ。これを是非とも直してもらいたかったよ」

 今度はざっくりと後頭部に刺さった。

〝それよりも――あいつはどこへ行ったのだ――グレイは死んだ等と言って消えやがって〟

 あの日以来、誰もグレイの姿を見ていない。

 カラン、と鐘が鳴る。


 ****


 二〇二一年七月十日。月曜日になった私は、いつもの様に学校に居た。

 授業が終わった私は、今までと何も変わらない会話をする。

「孤月さん、僕は生徒会の仕事を片付けてから部活に行きます。すみませんが、先に行っていて貰えますか?」

「うん、わかったよ。想真くん、生徒会のお仕事がんばってね」

 英雄部の部長である想真くんは、いつもと変わらない答えを返す。私はいつもの様に、廊下を歩いて部活の部屋へと移動する。私はいつもの様に――

「んじゃ、井水戸はあの英雄部に入ってるんだな。物好きだな」

 私は、聞きなれた苗字に反応して振り返る。

「い、井水戸くん?!」

「はい?」

 振り返った先に居たのは、茶色い瞳に緑色の髪の少年。

「あれ――アナザーくん?」

「あっ、孤月さん。我輩はもう部活があるので、失礼するデス」

 友達を先に帰した彼と私は並んで廊下を歩く。

「……よかった、貴方は夢じゃないんデスネ」

「えっ?」

「目が覚めたら両親が居たんデス。時代も二〇一〇年、今から十一年前で我輩はアナザー・ワールドではなく井水戸玄奥デシタ。しかも、井水戸玄奥は死んでいなかったんデス。今まで過ごした日々が夢だったのかな、って思いマシタ。でも、目を醒ましてすぐにグレイに会いマシタ。その時に言われたんデス、夢に会いたくなったら明日希高校に行けって。孤月さんはそこにいるから、って」

 二日まで居た井水戸くんは居なくて、二日前に会ったアナザーくんが井水戸くんになって私の隣に居る。

多分、これが本来の正しい世界なのだ。

「でも、今日になるまで部活に行っても貴方は居なくて、すっごく心配しマシタ。少しだけ、我輩の話を聞いてくれマスカ?」

 私は頷く。

「事故に遭う前と遭った後では、決定的に違うことがありマシタ。両親、我輩のこと虐待しなくなりマシタ。すごく優しくなっていて、すごく幸せに過ごしてきマシタ。でも、ちょっと寂しくなって、夢であった誰かに会えないかと思ってこの高校に入ったんデス。グレイにはもう会えないと思いますが、孤月さんや店長には会えるんじゃないかって。でも、今日になるまで貴方に会えなかったんデス。物語の終止符(ストーリーエンド)もないし、怖かったデス」

 アナザーくん――いや、井水戸くんの言葉に私は心から同意する。

「私もだよ。学校に行ったら誰一人彼のこと知らないって言うから。私こそ夢を見ていたんじゃないかと思っちゃった。でも、井水戸くんは居るんだね、よかった。……グレイくん、に会えないのは何だか寂しいけど……」

 井水戸くんは、確かにいた。でも〝彼〟は居ない。

「井水戸くん、部活が終わったら店長に会いにいかない?多分、店長なら井水戸くんがアナザーくんだって分かってくれるよ。私にも会えたし、店長にもきっと会えるよ」

「そうデスネ、会いに行きたいデス」

 私たちは部活を終え、物語の終止符(ストーリーエンド)へと向かった。

 いつもの様に、私は扉を開ける。

 カラン、となる鐘の音は彼が居なくなる前と何も変わっていなかった。

〝おー――アナザーと孤月だ〟

 飛んできた言葉に、私も井水戸くんも驚いた。

「あれっ、紫香楽じゃないデスカ!」

「あれ、紫香楽ちゃん?遊びに来てたんだ」

 店長はいつもの様に明るい声で迎える。

「いらっしゃぁい、あまぁいアップルパイとミルクたぁっぷりの紅茶をどうぞぉ」

 私たちは席について紅茶を飲み、アップルを食べる。

 カラン、と鐘が鳴る。

「甘い香り、リンゴの香りですね」

「おうおう、今日はまた随分と人が多いな!はっはっはっ!」

「多いとは言え、いつものメンバーではないのか?」

 入ってきたのは、茶色の髪の女性、相甲斐さん、杉野さんだった。

「あっ、杉野さん……」

「あぁ、君か。君には酷いことをしてしまった、本当にすまなかった」

 優しい表情の杉野さんに、この人も井水戸くんと同じように幸せになれたのかな、と思った。

「深夜さんと私が迷惑をかけてすみませんでした」

 杉野さんに続けて頭を下げる女性に、私は尋ねる。

「あ、いえ。えっと、あなたは……?」

「あぁ、挨拶が遅れました。私、深夜さんの妻、あやめです。私も紫香楽さんとグレイさんには大変お世話になりましたので」

 店長は、私たちが話している間に全員分の紅茶とアップルパイを用意した。

「それでぇ?相甲斐警視長に深夜くんは何か用があってきたのかぁい?」

「あぁ、この手紙を見せようと思って来たのだ」

 そういうと、杉野は古い手書きの手紙を開いて机に置いた。

「これは一体何の手紙デス?」

「ん?お前はアナザー・ワールドか?二週間でずいぶん大きくなったな?」

「井水戸デス。司書の癖に分かっていて言っていマスネ?身体を取り戻したんデス。そして、失ったはずの人生も。貴方以上に幸せな毎日を送っていマスヨ」

 手紙を覗き込んでいた店長が杉野さんに尋ねる。

「でぇ?これが一体何なんだい?」

「あぁ、これは十一年前に送られてきた手紙だ。差出人は不明だが、井水戸の事件とグレイの本名について書いてあった」

 それを聞いて、杉野さん以外の皆が手紙を覗き込む。

カラン、と鐘が鳴る。

「――初めまして」


 ****


 杉野の願いを叶えたオレと紫香楽は、暗い図書館の階段を下りていく。

「手伝ってくれてありがと」

〝何だ急に――僕はあの女に悪いことをした――そう思っただけだ〟

「そう、そうか」

 きっと、杉野とあやめは幸せに暮らしていける。

 先輩は尼野と仲直りでき、紫香楽の誤解も解けた。警視長さんは杉野とあやめからあの事件の真実を聞くだろう。店長の願いは叶えてないが、あの人なら今のままでも大丈夫だろう。

〝もう――やめるのか〟

 不意に投げられた言葉。オレは答える。

「ああ、今日がオレの命日だ。もうこれからは現れない。グレイも井水戸も、オレじゃない。井水戸として皆と会えて、グレイとして皆の願いを叶えられて、楽しかったよ」

 ああ、杉野の願いを叶えるのが最期の仕事じゃない。

 図書館の外、一人で待っていた少年。

「遅かったデスネ。待ちくたびれマシタ」

 まだ、彼の願いを叶えていない。

 ずっと、考えていた。どうしてあの時、言葉で言わずに無理やりにでもあの場から離れさせなかったのだろうか、と。そうすれば、アナザーは、いや、井水戸玄奥は死なずに済んだ。

 怖かったのだろう――助けた後、両親に虐待され続ける彼がオレを恨むんじゃないかと。

 でも、人が死ぬということは辛いことだ。彼の両親だって、彼が死んだとなれば悲しむかもしれない。いや、悲しむだろう。

「ああ、もう終わったよ。アナザー、いや、井水戸。本当にもう終わったんだ」

 だから―――

「グレイ?どうしたんデスカ?」

 ――だから、誰も悲しまなくて済む様にしよう。先輩も警視長さんも杉野も、オレに関わった皆は幸せにして逝こう。

「グレイはもう死んだ。何処にもいなくなる。オレを探しても、もうどこにもいない。そしてキミの夢ももう終わりだよ。全て今日で終わりだ」

 そして、幸せな現実が始まる。

 だから、オレは指を鳴らす。

 オレの後ろの空間を裂き、巨大な砂時計が現れる。砂時計に吸い込まれるように周りがぐにゃりと歪み、景色が変わっていった。

 泡白山キャンプ場付近の川、濁った水が勢いよく流れていく。

 その水に紛れて、一人の少年が流される。

 オレはクロを使って彼を引き上げた。

「もう少し前だったか」

 びしょ濡れの彼を抱えて、キャンプ場へと向かう。

「あぁ、玄奥!」

「玄奥!」

「げんおう!」

 男と女と少女がオレの方へと駆け寄ってくる。オレは井水戸を横に寝かせ、順番に男と女の頬を殴った。

「どうして自分の子供にこんなひどい仕打ちをしたんだ!この子の身体のあざを見ろ!キミたちが殴り蹴ったあざだ!オレがキミ達を殴った一発よりももっと重い!この子には何の責任も無い、責任があるのはキミ達だ!」

 二人はオレが殴った頬をさすっていたが、しばらくして井水戸を抱きかかえた。

「そんなに自分の子供か疑わしいなら、オレが調べてやる。自分たちの子だと分かればこの子も娘と同じように可愛がれるんだろ?キミ達がこの子に虐待をせず、きちんと育てるというまでこの子は目を醒まさない」

 病院に運ばれてから三日間は、男も女もオレの言うことを信じなかった。

 四日目になり、井水戸が目を醒まさないことを疑問に思い始める。

 五日目になり、二人は漸くオレの言ったことを理解する。

 六日目、二人は井水戸玄奥が自分たちの子であるか調べて欲しいと言ってきた。

「井水戸正志、井水戸奈那子、結果が出た」

 オレが呼ぶと、二人は急いでこちらに駆け寄ってきた。

「どうだったのですか?あの子は私がお腹を痛めて生んだんです、私たちの子ですよね?」

「でも、自分たちはA型とAB型なんですよ。どうしてO型の子が生まれたんですか?」

 オレは二人を井水戸玄奥が眠るベッドのわきに座らせ、説明する。

「井水戸正志、キミはAO型だ。井水戸奈那子、キミはシスAB型だ」

「「シス、AB型?」」

 二人は同時に尋ねる、

「キミはAとBの遺伝子を持っているんじゃなく、ABと言う遺伝子とOと言う遺伝子を持っている。だからAO型の男との間にO型の子が生まれた」

 七日目、二人はわが子のために良い両親になることを約束した。

 そして、彼は目を醒ます。



「さて、これでいいかな。井水戸も孤月も相甲斐も杉野も、みんなそれぞれ幸せな日々を手に入れたんだ。だから、カンデラ――オレはもうグレイと言う名は名乗れないよ」

『そうか』

「相変わらずキミは口数が少ないね。他に言うことはないのか?」

 マイクの付いたヘッドフォンに手を当て、SIメンバーの一人と会話をする。

『お前がSIのリーダーに変わりはない。最後まで逃げずにやれ』

「……はいはい、分かっているよ。流石に全部投げ出す気はないさ。オレが捨てるのは偽名だけだから。SIはオレの目的のために作った組織だしね。でも、いいの?オレの名前は国際単位じゃなくなっちゃうけど?」

『国際単位はただの組織名だ』

「そう、そうだね。オレさ、これからはちゃんと自分の名を名乗って行こうと思うんだ。だから、他のメンバー達にも伝えておいて。こんなオレについてきてくれるならオレもキミ達を心から信頼する、って」

『分かった』

 オモテ通りを歩いて行く。裏道を通り、十数mしかないミトリ通りへ。

 そこに佇む古びた店の扉を開ける。

 グレイはもういない――グレイ先生は昔死んだから。

 井水戸はオレじゃない――本人に名前を返したから。

 もう、誰かの願いを叶えることはない。これからはオレの意思で、オレの大事な人を守っていく。

 SIはオレの作った組織だ。かつて最高の天才と謳われていたグレイ・パラドックスの最後の弟子であるオレが戦争をなくすために。

 カラン、と鐘が鳴る。

「――初めまして」

 挨拶をするが、店の中にはオレのよく知っている人達。

 孤月先輩と、井水戸と、警視長と、紫香楽と、杉野と、その妻のあやめ。

「「あーーーーー!グレイ!」」

 皆が口を揃えて呼ぶ。

 オレは笑って名乗る。

「違うよ、グレイ先生はもう死んだ。オレはグレイ先生の最後の弟子――」

 何の色も持っていない、オレの名前。

「――オレの名前は無色(なしいろ)透明(すあき)だよ」







 平仮名にして頭文字に注目。


 管理司書の 杉野深夜 様へ


偶然あなたのことを知りました。

冷夏だったら、こんなことにならなかったかもしれません。

いつもそう思います。

話は変わりますが、あの事件のことについて話したいと思います。

何度も手紙を書こうと思いました。

しかし、何を書けば伝わるのかわからず、ずっと書けませんでした。

井水戸玄奥はもう死んでいるので、それを伝えたくて手紙を書きました。

六十時間前に死にました。

少し前までは生きていました。三日くらい前です。

あの男が何をしたのかわかりませんでした。

奇跡を起こしたのだと、今になって分かりました。

だから、井水戸は生きています。

まだ井水戸は生きています。

最後になって思うのは、やっぱり同じことです。

冷夏だったら、こんなことにはならなかったはずです。

類似していませんか、天才と三人の弟子の話に。死んだ人が生きているって。

何でも分かってくれる司書さんへ
















 ぐれいはなしいろすあきだまされるな―――グレイは無色透明、騙されるな。

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