暴露ーーーー簡単に修正完了ーーーー
よろしくお願いします。とりあえずネタバラシと言えるほどではないのですが、物語の根本の部分かな?。上手く書けてるといいのですが。
あ、やっちゃったとラズは思った。
油断した自分が悪いのは分かっている。
なので、元に戻す。
目の前で砕け散った剣が再び収束して、ラインの手の中に戻る。
「ふう、危なかった」
額の汗をぬぐうラズ。
唖然として、剣とラズを交互に見るライン。
「いったい、何をした」
絞り出すような声でラインは問いかける。が、
「え、何かあったか?」
「何言っているんだ!。オンディーヌ、お前も見ただろう」
「……………………………………………………」
「何で黙っているんだ!」
ラインは自分の仲間達を見るが、次の瞬間、ニャンタが彼らの目の前に現れ、
「悩殺☆猫パンチ」
全員の頭を一回づつ軽く叩く。
糸が切れた人形のように、全員が倒れてしまう。
「記憶操作完了です☆」
「ご苦労様です、ニャンタさん」
「そうそうイクス魔王様、 あっちのラインたんは操作しなくていい?」
「ええ、こうなった以上ばらした方がいいでしょう。誰かさんのせいで」
ちらりとギルベルトの方を見るも、胡散臭い笑顔を浮かべたままだった。
「そもそもなんで魔王が人間なんだ」
「昔からそうですよ?。人間が因子を組み込まれて破壊の衝動に支配されて、というのが魔王の正体です」
「……人間が何故同じ人間の敵に回る」
「その質問は意味が無いので答えません。分かっているでしょう?。魔王がいなくても人は常に競い合う。競う時点で、倒すべき相手には変わりない」
「俺は!」
「一般論の話です。貴方がどうか、や、理想は今問題ではありません。次は?」
「……何故剣は元に戻った」
「ラズが力を使ったから。他には?」
「っく、なら、その力とは何なんだ?。お前達は何なんだ?」
「その質問には答えたくないので却下」
兄さんが容赦ない。ラズも色々やった手前非難は出来ないが。
「“空間操作”ですよ」
「ギルベルト!」
ギルベルトがばらした。叱咤するような魔王の声。が、
「別にかまわないでしょう。いずれ、彼もこちら側にこらざる負えない。“女神様”がこの世界を滅ぼそうとする限り」
「彼が立ち直れなくなった場合どうするのですか?」
「その時はそれまで、その程度の人間だという事です」
「ですが……」
「勇者に甘いのはいただけませんよ?。因子の制約に引っかかる可能性があります」
「……ラズ、残りの説明を頼みます。補足はニャンタさんで」
魔王としての制約があるらしい。
つくづく“女神様”は怖い存在である。
もっとも、ラズも全部は知らないが。
とはいえここで話しておくのもいいだろうと思って、
「分かる範囲で話すな。それで良いか?」
ラインは舌打ちした。その様子にラズはやっぱり話すのやめようかと思ったが、兄に頼まれたので仕方なしに話始める。
本当はラズもこの力については話したくないのだが。
「要するに、今目の前で俺が使った力は、過去から未来において、全ての空間を理解し、操作する力だ」
その言葉にラインは、目を瞬かせて、
「……お前、頭大丈夫か?」
「知るか。どうやってではなく、出来る事が分かっていて、どうして出来るのかが分かっていないんだ。そして空間操作自体も仮説の段階で、実際は違う能力なのかもしれない」
「そんなこと言ったら何だって出来る。それこそ“女神様”と同じ……」
そこでラインは言葉を切った。
苦々しそうに、ラインは次の問いにする。
「“女神様”は、何故この世界を滅ぼそうとした?。何か理由があってだよな?」
それはラズは知らない。
「はいはーい。それは私が説明するわ。それはね、飽きちゃったから」
「……え?」
「飽きちゃったから、この世界壊してもい一かーってこと」
「そんな、だって、“女神様”は素晴らしい方で……」
「女を分かってないなー。女の子に囲まれているのに何にも貴方はわかっていないんだね。くすくす」
周りの仲間たちがじろりとニャンタを見るが、それを見てニャンタはくすくす笑うだけ。
その嘲笑の笑いにラインは苛立ちを覚えたようだが、それもニャンタにはどうでもいいらしい。
ニャンタはひととおり笑ってから続ける。
「……もっとも人間だっていくらでも装うからね。……まああの“女神様”だから騙されるのも無理ないね。ま、それを食い止めているのが常にラズ君の先祖なんだ。本当はもっと隠されて、この世界に引き止めるはずだったんだけどね」
そこら辺は、ラズは初耳だった。
「世界に引き止めるって、元々兄さんもこの世界の人間だぞ?」
「……あんまり言いたくないんだけど、その力があればいくらでもこの世界を見捨てられるんだ。“女神様”と同じ世界に属せる。それにラズのご先祖様でその血統の人たちは皆、外に行っちゃったんだよ?。時々戻ってくるけどね」
「……………………………………………………」
「それに人との混血でいずれ力を失うかもしれない。そんなものをずっと、当てに出来る?」
「……確かにそうだな」
「しかもいつもなら血を引く子孫は一代につき一人のはずなのに、今代は二人もいる。不安に思うのも無理ないでしょう?」
そういえば、そんな話を昔聞いた気もする。
「加えて一人にかかる負担が大きすぎる。だから人数を増やして、負担を分散させる必要もある。だから、そういった人達を人為的に作れないかというのが、この“勇者”を作る目的」
かすれる声でラインは聞き返した。
「俺に“女神様”を殺せと言うのか?」
「無理だよ」
「何でだ?」
「一番初めだからね。ある程度は失敗する事は予想の範囲内だよ」
「何……だと?」
驚いたように目を見開くライン。それにニャンタは更に笑みを深くして、
「一番初めにやるのはなぜ難しいかわかる?。手探りだからだよ。たとえば一番初めに航海した時は何も無いけれど、次に航海した人は航海日誌を見て何処に何があるかをある程度検討が付けられる。そのための枠組みの一つを今、君は作っているんだよ」
「使い捨てじゃないか」
「礎になるの。物事は思いのほか遅々として進まない。けれどそれが一気に進む事もまたありうる。そのための準備だよ」
「俺は使い捨ての人形じゃない、人間だ。俺は真剣に勇者をやってきた。操り人形じゃない。そんな、力一つで……」
とりあえず、ラズはラインを殴った。
「いい加減にしろ!」
「痛い!」
「あんな力ただの一発芸だ。そもそもお前は剣ですら俺に勝てないじゃないか」
「……それは、その剣さえあれば」
「道具のせいにするな。道具を交換してもお前を倒す自信があるぞ?」
「大体あの力はずるいだろ!。勝てるわけ無い」
「負けを認めるんだな。ならお前は一発芸すら出来ない奴だな」
「なんだと!」
「だって勇者ってものは、剣の腕という一発芸で世界を救うんだろ?」
「それは……」
「一発芸が世界を救う。誰でも出来る事じゃないんだ。求められるのはそういうことさ」
「……本当に出来るのか?」
「知らん」
無責任な答えに、ラインはうんざりしたようだ。
ただ思う所はあるのだろう。先ほどのやる気のうせた絶望のような瞳はもう無い。
「覚えていろ、必ず越えてやる」
その言葉に肩をすくめてラズは答えた。
「忘れたら聞きにいくよ」
次もよろしくお願いします




