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四天王(2)

間隔が開いてしまいましたが、よろしくお願いします。

「あ、そこに罠があるから」

「はいっと」

 ラズが、呪文を唱えて罠を壊していく。

「んん、イクス魔王様みたいに綺麗にスコーンと」

「兄弟だからって、同じ事が出来ると思うなよ?」

「んんー、でもアレは出来るんでしょう?」

「アレってどれだ?」

 面白そうに覗き込むニャンタさんに、ラズはよく分からないと肩をすくめる。

 知っているのだ。ずいぶん長く生きているのだから。

「弟君は隠すのが上手いね。お兄さん以上なんじゃない?」

「何の話かさっぱり分からないな」

「ふふん、恐ーい怪物が、恐い顔しているとは限らないもん」

「普通の人間は恐い顔をしていないと思うけどね」

「そうだね。でもね、本当に恐いのはそんな一見弱そうな生き物なんだよ?」

 じっとラズの顔を見て、ニャンタが続ける。

「弱い生き物はね、誰が弱いか分かるんだ。それを突いておけば必然的に、自分に被害が来なくて、かつ、優位に立てるからね。でもね、本当に恐ろしいのは、大人しそうで、一見愚かそうな、牙など微塵も見せない生き物なんだよ?」

「だろうな」

「ふふ、牙を持たない生き物なんていないのにね。その怪物が後々、彼らが手を下すことなく突いてきた弱い生き物を、突かれる対象にすることも良くある事なのにね」

「なんか、本当に恐い猫だな……」

 冷や汗をラズはたらす。

 この一見ふざけているお気楽な猫のような?可愛い女の子であるこのニャンタはそういう生き物なのだろう。

 甘く見ると痛い目に合う……否、とてもとても痛い目に合いそうでラズは引きつった笑みを浮かべる。

 その様子にニャンタはとても楽しそうに笑って、

「ラズの牙、私は見てみたいな」

 とかなんとか。ラズはどうでもいいたげに、

「兄さんと同じだよ」

 と答える。実際どうでも良いのだ。

 本当に大事な部分で失敗しなければ問題ないし、失敗してもやり直せるのだから。

 そこでそんなラズに、ニャンタが、

「イクス魔王様は見せてくれないもの」

「なら、そういう機会が無いってことさ。無いに越した事はない」

「やらないのと、出来ないのは同じ事だよ?」

「結果が同じなら、どんな過程を通ろうが問題ないだろ?」

「その結果が一番の目的って事か。道が一つしかないとはそんなにお嫌い?」

「一つしか道を知らなかったら、その道が通れなくなったら目的地にたどり着けないだろう? それに近道を使いたいんだよ。楽だから」

「……本当にラズ君は面白いね」

「よく言われるんだが、そんなに俺は面白いかな?」

「どうだろうね」

「おい」

「あはは」

 そんな折、大きな扉の前に来る。そして扉を開くと、何やら犬耳の男が鍋をかき回していた。そのすぐ傍には何かを絞る道具が置かれている。

 だがそれにも増して印象的なのは、部屋のあちらこちらに散らばる白い人骨であるのだが……。

「わーい、少し食べて行こう」

 ニャンタがすぐ傍に転がっていた白い骨を口に含んだ。

ゴリ、クチャ、ガシッ、ガリ、ゴリゴリ

 あろう事か噛み砕いている。

 その不気味な光景にラズはあとずさる。と、

「ああ、イクス魔王様の弟さんですね。勇者って弟さんだったんですかあ。あ、私炎の四天王ファイアーレインボーです。長いので、ファイって呼んで下さいね」

 鍋を相変わらずかきまわしつつ、気さくに話しかけてきた。

 とはいえらずにしてみれば、この部屋の惨状をみれば、そんな気楽にやってはいけないが。

 とりあえず、兄の仕事から片付ける事にした。

「いえ、僕ではなく別の勇者が着ますのでその人の相手をお願いします」

「そうかー、大変だなー」

「……何故そんなに人事なんだ?」

「いやー、働きたくなくて」

「…………………………………………」

「……私のほうを見ないでよ。これだから犬は」

「いやー、ニャンタさん、相変わらず猫ですねー」

「ファイ、あんた喧嘩売ってんの?しゃーっ!」

「僕が売っているのは油です。さっきまで、そこで絞っていましたもん」

 ファイが指差す先にはなにやら圧搾機のようなものが転がっている。

 とりあえずラズは彼の四天王の思考回路についてしばし悩む。

 油を売る→油が必要→油を絞る所からはじめよう。

 という事らしいと分ったところで頭が痛くなりながら、ラズは、

「どう考えても思考が低下してるだろ、これ」

 ラズが突っ込みを入れた。と、

「いえ、昨日よっしゃ、これでニートだわーい、って言って小説読み出したら止まらなくなっちゃって」

「だったら寝たらいいんじゃないのか?」

「いや、でも飴作らないと。骸骨を作れないし」

 ラズは周りを見回した。

 白い人骨がそこら中にばらばらと……まさか。

「……もしやこれ全部、飴細工?」 

「そうですよ。大体魔王は人間がなるものなのに、城の中に人骨があったら薄気味悪いでしょう」

「いや、そんなの当たり前ですって感じで言われても……」

「んんー、先入感を崩すのは大変ですねー。おっと、そろそろ出来上がりそうだから、出来上りの呪文をー、エコエコサギー、エコエコサギー」

「……その呪文に意味はあるのか?」

「ないですよ?。だから、エコエコサギーで良いんです」

「いや、まあ良いんだけどさ」

「あ、勇者が来たら、適当に相手しておきますので」

 さらっと終わってしまい拍子抜けする。ニャンタがラズの服を引っ張った。

「次いこー。楽なとこはさくさく終わらせて。次が一番やっかいだから」

「そうですねー、彼の説得は大変ですねー」

 ファイは相変わらずなべをかき回しつつ、間の抜けた答えを返してくる。

 不安に思ってラズが聞く。

「次は、誰がいるんだ?」

「地の四天王アースレイザーだよ」

「ま、がんばって説得してねー。あ、そうそう出来たての飴を食べていくかい?」

 放られた一口サイズの白い飴玉。

 一瞬躊躇するも、口の中に放り込むと普通に美味しい飴だった。

次もよろしくお願いします。

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