心の中
つい欝設定加えかけて、アホ設定に戻す作業ががが。
連日投稿中。
青い空に、白い月が二つ重なっている。この状態が夜間半ばまでつづくという。
「わー、測定値が凄いわ。昨日の倍位の濃度だよ」
「え、本当に。見せてくれ」
「こことここのピークから、水の系統が強いみたい」
「でも火の系統も……あれ、柱に近づけたらピークが反転したぞ」
「ほんとだね!」
「……姉さんも含めてだけど、ラズ、仕事だって事忘れないでしょうね」
レテの冷たい声。
「ああ、分かってるさ。しかし、ここは本当に水が多いな」
と、辺りを見回す。
そこには水没した、石の建物がそこかしこに生えている。
「昔は、もっときちんと整備されていたんだけれどね、女神と戦った時に壊れてしまったんだよ」
エルが何処か懐かしそうな、とろんとした目で説明した。
「よっぽど激しい戦いがあったんだね!」
とフレアが言うも、エルは黙ったままだった。
「この猫ちゃん私に冷たいよ、ラズ君」
「あーたぶん女神様と関係あるからかな」
「……どういうこと?」
「姉さん、その子は理由があってこちらにいるの。敵にはならないから安心して」
「……レテちゃんが言うならわかったわ」
どうして敵にならないと言い切れるのかがラズには不思議であったが、フレアを説得するよりもそういう事にしておいた方が物事が進みやすいのかもしれない。
「ここからが、一番近い禁止区域。遊ばないで仕事してね。あと、姉さんの事をよろしく」
黄色と黒のテープが張ってあるだけなので、簡単に乗り越えられそうだ。
「このまま、まっすぎ行けばいいんだな」
「ええ、途中二つに分かれる道が二つあるから、全部で4通り調べておいてね」
レテとはここで別れた。ついでに測定装置も取り上げられた。仕事を終わらせてからだそうだ。
水びたしの遺跡。空の青さと雲の白さを映し、風の波紋に揺れている。
先ほどまでの場所は観光客がいて喧騒に包まれていたが、少し離れると、恐ろしいほどの静けさに満ちている。
遺跡の岩を抜けるかすかな風の音が聞こえる。
歩いている分かれ道も、ラズには何処か懐かしい気がした。
うっすらと見える魔力の形跡がそう見せるのかもしれない。
この遺跡は驚くほど妖精がいない。存在すらしていない。その異常さが、ラズには不思議と心地よかった。
そこをただただ歩いていくと、
「行き止まりだな」
「行き止まりだね」
昨日の少女が消えた柱と若干似た図案が刻まれ、そこだけが真新しい。
軽くこんこんとラズは叩いてみると、下のほうに行くと若干音が違うことに気づく。
「どうもこの石の下に、空間があるみたいだな。フレアはレテから聞いていないか?」
「レテちゃんからは、確か、地下はあるけれどは入り口が分からないって言っていたかな」
となると、この大きな石をどかせば中には入れると推測されるが。
前に石を叩いたときも感じたが、この魔法は……いや、それよりも、触れた瞬間魔法自体画からあの中に染み入ってくる。
まるで、はじめからラズの一部であるかのように。
とはいえ、ただの石であったとしても。
「こんな石、どうやって動かすんだ……。切って小さくしてどかすという方法もあるが……」
「横に倒してしまえばいいんじゃない?」
「いや、こんな大きい……」
「てい☆」
フレアが軽くパンチを石にした。
その石の柱は後ろに倒れた。
水しぶきがあがった。
以上。
「あ、本当にラズ君が言ったとおり、地下に繋がっているみたい」
フレアさんがすごいねーと言っている。
レテもラズを持ち上げられるくらい怪力だったし、アレもいるじゃないか。別に、不思議なことは微塵も無い。
色々い言いたかったり考えたりしたかったが、いちいち考えると疲れそうなので、ラズは考えることをやめた。
彼女がそうしているように、ラズも中を覗き込む。
確かに石が折れるように倒れたもとの部分は、ぽっかりと空洞が空いている。
その割に中が暗くないのは、その通路らしき場所に明かりがついているからだ。
「レテ達に報告しておくか?」
このまま中に入るよりも、まずは現状の報告が先だろうとラズは考えたからだ。が、
「先に入って救出した方がいいだろうね。今回大人数にしたのは内部犯を警戒してのことだからね」
エルがぴょんと地面に降り立ち、ラズの方を振り返った。
「今回の大人数の捜査事態が目くらましさ。ようするに、君達は囮だね」
「レテからか?」
「そうだよ」
何故エルはこんなにレテと親しいのか疑問に思うも、ラズは頷く。そこで、フレアが声を上げた。
「私にはちょっと良く分からないけど……」
「ああ、大人数にすることで抜け出しやすくすることと、その人達を監視することで、イリス教団の“魔法使い”と勇者が来たから見つかるんじゃないかと、彼らが焦って動く事を期待しているんだ。外に出ているかは“女神様”が見ているんだろう?。そうすると、外に出た場合、情報が挙がってくれば誰が犯人か分かるし、あがってこなければその監視している人間の中に犯人がいるということだ」
「誤認したり、誰かをでっち上げたりする可能性は?」
「ありうるが、現時点で事態の進展が見られない以上、行動を起こす必要があるだろう。それに、あいつらの目的に俺が入っているらしいから、接触してくるだろう」
「そうね……分かった」
穴を覗き込む。そして飛び降りた。高さは二階から地面に降りる程度だからそれほどではないが。
広い通路だった。綺麗に磨かれた石に、明かりが灯っている。
本当に、1000年以上前の遺跡なのかと思えるほど、風化が進んでいない。そもそも塵一つ積もっていない。
ラズは嫌な予感がした。
そういえば、エルはここが“時の神”を祀る、と言っていなかったか。
ラズは嫌な予感が倍増した。
「上が水に浸かっていたから、中も水で埋まっているかと思ったのに、そんなことは無いのね」
「……上の水は、古代の水道管が破裂して溜まった物だからね」
エルが、面倒そうに説明する。その話を聞いて、フレアが、
「すごいね、昔の技術」
と、フレアがやけに感嘆している。
ラズも凄いと思ったが、同時に、ある点が気になる。
「……それだけの力があって、今まで伝わっていなかったりするのも、考えさせられる部分があるな。技術は維持しようと錆びていくものだし」
「そうだね、“魔法使い”だから良く分かる」
「そうそう、ただただそういう風にすればその魔法が行使できる、てやってくと、終いには伝言ゲームのように、その魔法の構造やら何やらがどんどんかけていって“魔法”そのものが成り立たなくなる」
「技術を進歩させていくことで、それまでの経過を見返したりすることで、その技術が維持される……。進歩と維持は、一緒なのよね」
「ま、他の魔法が発達して他の魔法の魔法やら技術が進歩する部分もあるけどね。例えば、魔法列車の場合、列車の回転する原理はすでに遥か昔にできていたが、それを、エネルギー源として列車なり何なりを動かそうとはしなかっただろう?。もっとも、大型化する際の問題点が改善されたのも、大きい要因かも知れないが」
「過去の色々な人達の積み重ねが今いる私達を支えているって良く分かるよね」
“魔法使い”であったから分かったこと。今の私達は数多の人々の上に成り立っていると。
そこまで来て、行き止まりに着く。それまでに部屋が無いとすると、ここに入るか否か。
後ろから、聞き覚えのある咆哮が聞こえた。
「またあの、狼の魔物か」
レパトリーを増やすのもいいものなんじゃないかと思いつつ、扉に手を触れる。
扉は滑らかに横にずれ中が大きい広場となっていることが見て取れる。
それを確認して中へと飛び込み、扉を閉める。
その様子を見てフレアが、
「なんで、ラズ君が触ると扉が開くの?」
「俺じゃない、エルが触っているんだ」
下のほうなので、エルが触っていることに気づかなかったのであろう。
「すごいマスコットなのね。レテが連れて行くよう言ったのってこのことなのね」
フレアが関しているが、しかし、先ほどからエルがじっとこっちを見ている。
魔者なら知っているだろう、頼むよと心の中でラズは思う。
「固定概念って大変だね」
ため息をつくように、エルはラズを見ていったのだった。
次もよろしくお願いいたします




