秘められた変化
よし、今日も更新。暑くて溶けそう・・・・・・・。
次の日。
その日は、珍しく二つの月が重なるようだ。
いつも見ている月は“真月”と呼ばれ、もう一つは“幽月”と呼ばれる。
この“幽月”は一年に1、2回ほどしか見る事が出来ず、さらに“真月”の影の部分と同じ形が輝くことから、光と影の対比として“幽月”と呼ばれている。
また、今日は珍しく二つの月が重なり合う日との事だった。
その効果は遺跡にとっても意味は大きく、その二つの月が重なることによって、遺跡の地下に眠る魔力石の魔力が極僅かに増す。
その二つの月が重なる事で、“幽月”から魔力が零れ落ちるから……という説もあるらしい。
その話は今は置いておくが、そのため、遺跡によって映される“幽霊”達もより鮮明になるという。
二つの月という、相反するものが重なる事で、大きな力を生み出すのである。
「結局しらみつぶしに探すしかないか」
ラズは背伸びをした。
宿の前に出て、次の予定を待っている最中で、せっかくだから外の空気でも吸おうかと思い出て来た所だった。
そんなラズは周りを見ながら、昨日レテに聞いた話を思い出しながら周りを観察する。
警察や手の空いている村人達が、観光客に扮し巡回しているらしいので、目立たないように周りを見る。
確かに本日は遺跡に魔力が満ちるというめったに見られない現象のため、観光客が多い。
誘拐されたと思しき子供の捜索は、この町の治安の維持も兼ねている部分があると聞いていたが、これだけ人数が多ければ当然のように思えた。
そしてそのような事件がある事で観光地であるこの町のイメージダウンにならないようにする事も考えて、巡回する彼らは全員私服である。
そこでレテがいるのを見つけて、ラズは挨拶をする。
「おはよう」
「おはよう、こっちは朝早起きだわ」
「ご苦労様。今回は、“女神様”は場所を教えてくれないのか?」
「“女神様”が言うには、この場所は忌々しい事に未だに私が見通せない、でも外に連れ出された形跡は無いからまだいるんじゃない?、だそうよ」
「……中にまだいるって事は分かったからいいか。というか、何で子供を攫うのは集団なんだろうな」
「さあ、そういう傾向は多いかもしれない。でも、身代金が目的で無いとすると、子供達自身が目的なのでしょうね」
「何をする気なのかまったく分からん」
「ついでに、昨日ラズが見た少女は、昨日の朝から行方不明になったらしい。以上」
さりげなく、あんた呼ばわりから、名前呼びに変わっていた。
ほんの少しだけラズは嬉しくなったがそれどころでないと思い直す。
昨日見た少女が石の中に吸い込まれるのを、ラズは確かに見た。
ならば、どの段階でその誘拐犯と接触しているのか?。そこで、
「ラズ君、今日はよろしくね」
「あ、フレアさんこそよろしく」
挨拶をしつつ、ラズは今回はフレアに対しては特に何も感じなかった。
プレゼントしようと思っていたペンダントの事を思い出して凹みはしたが。
「二人はある程度自由に動き回ってかまわないけれど、一応、何処にいるか分かるようこれを持っていって」
レテが取り題したのは金属製の小さな箱である。
「何かあれば、この箱を燃して。救難信号になるはず」
「他の人達は?」
「“無線球”を持っているし地元だからね。貴方達にはそうでない禁止区域にも入り込んで良いという事よ。許可はすでに取ってある」
「……わかった」
ラズは幾つか腑に落ちないが、自由に行動して良いのは役得である。
この遺跡はどんな構造になっているか楽しみだ。
「……依頼のお話は終わったけど、一応忠告しておくから。遊ぶな、子供達の保護が目的だからね」
「わ、分かっているよ」
レテの指摘にギクッとするも。
「禁止区域は事実上入れない行き止まりが殆どだから、そこまではすでに調べてある。あとは、“魔法使い”が必要なのではないかという事で、今回許可が下りたの」
「つまり、遺跡の機能を使え、と?」
「動くかどうかは分からないけど、今日ならばさらに見つけやすいのではないかって。加えて、貴方なら良いかもしれないとの事よ」
「“女神様”か」
そこで、じっとレテはずっと黙っている白猫もどきのエルをみて、
「そんなようなものよ」
と、レテは答えた。
続きますのでよろしくお願い致します。




