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許せない……モエナっていう彼女がいるくせに、他の女と仲良くなろうだなんて!!
ぜぇぇええええったいにゆるさないんだからぁぁぁぁああああ!!!
「モエナ、別れよう。」
「いや!どうしてよ!モエナ、何も悪くない!!」
「いい加減にしてくれよ……。」
「いい加減にすんのはタクでしょ!?モエナ、悪くないもん!!」
「……ウザいんだよ!いい加減にしろよ!!」
「……タク、ちょっとだまって……?」
「いいや、今日こそはっきり言わせてもらうね!おまえ、わがまますぎるんだよ!自分に非があってもみとめねぇし、ほんといいかげんさぁ。」
タクが怒っている最中に携帯が鳴った。
そこには、モエナの知らない女子の名前が浮かんでいた。
「やっぱりね……そういうことだったんだ……?」
「は?何がだよ?」
「ひどいよ、タク……モエナを置いて、一人で誰かと幸せになろうなんてぇぇええええ!!」
「お、おい……ちょっと待てよ、何でお前、包丁持ってんだよ!?あ、あぶねえだろ!!」
「サヨナラ、タク。」
「う、うわぁぁぁあああああああああ!?」
たたみについてしまったタクの血をふき取ろうともせずに、バラバラに別れたタクを眺め、シャワーを浴びて、そしてタクを見てから我に返った。
「……え……?や……いやぁぁぁぁあああ!!」
どこに行くあてもなく、部屋から逃げ出し、走り出した。
モエナ、モエナ、人、殺しちゃった……どうしよう!?どうしよう!!
どうしよう!!
そんなとき、草に足を滑らせ、そのまま鋭い岩に向かって倒れこんだ。
「あっ……?」
気づかなかった……ここ、立ち入り禁止区域……。
「きゃぁぁぁああああああああああああっ!?」
どこか遠くで誰かの悲鳴を聞いたような気がした……。