1920年 各国国力推計
1920年 世界情勢・国力分析レポート
〜石油と鉄が織りなす新秩序〜
第一次世界大戦の終結から2年。世界は復興の槌音と共に、新たな対立の予兆を孕んでいます。
この世界線における最大の特徴は、「資源大国・日本」の出現です。これにより、列強のパワーバランスは史実と大きく異なり、アジア・太平洋地域に巨大な重力が生まれています。
第1位:アメリカ合衆国(The Colossus)
〜繁栄を謳歌する絶対的王者〜
戦場とならなかった本土は無傷であり、戦後の経済ブーム(狂騒の20年代)が始まろうとしています。
*経済の巨人:
人口は約1億600万人。GDPは1,000〜1,200億ドルという天文学的な数字を叩き出し、世界経済の約半分を支配しています。国民1人あたりの豊かさ(約1,100ドル)も群を抜いています。
* 資源と軍事:
最大の強みは石油自給率100%。自国の油田だけで世界最強の機械化軍隊を動かせます。陸軍は平時でこそ縮小していますが、戦時の動員力は底知れません。海軍は主力艦100万トン超を有し、太平洋の対岸で台頭する日本を「最大の仮想敵」として明確に定めつつあります。
第2位:大英帝国(The Weary Titan)
〜広大な版図と重い負担〜
「太陽の沈まない国」は健在ですが、大戦で流した血と富の代償に苦しんでいます。
* 帝国の黄昏と依存:
4,400万人の本国人口に加え、広大な植民地を維持。しかし、財政は火の車です。
特筆すべきは日本への依存です。中東戦線(イラク・ペルシア方面)での日本軍の活躍により、スエズ以東の防衛戦略において日本は不可欠なパートナーとなりました。
* 軍事力:
海軍力(120〜140万トン)では世界一の座を維持していますが、老朽艦も多く、新鋭艦を揃える日米との質的格差に悩み始めています。
第4位:大日本帝国(The Rising Dragon)
〜東洋の奇跡、資源を持った近代国家〜
【本世界線の特異点】
「持たざる国」であったはずの日本は、中東の石油権益と南洋諸島の完全支配により、**石油自給率40%**を達成する資源国へと変貌しました。
* 爆発する国力:
人口5,600万人。GDPは220〜280億ドルに達し、フランスを猛追、あるいは実質的に凌駕しつつあります。
豊富な石油と鉄鉱石(大陸からの供給)が重工業化を加速させ、工業水準は「非常に高い」レベルに到達。1人あたりGDPも400〜500ドルと、列強の中位水準を確保しました。
* 先進的な軍事力:
豊富な燃料を背景に、陸軍は戦車の配備を進め、海軍・空軍は航空戦力の拡充に邁進しています。主力艦保有量は英米に次ぐ**世界第3位(70〜80万トン)**を確保。もはや極東の島国ではなく、グローバルな影響力を持つ「帝国」です。
欧州列強:傷ついた勝者と敗者
第3位:フランス(The Wounded Victor)
〜栄光と衰退の狭間で〜
ドイツに勝利したものの、国土の荒廃と人口減(3,900万人)が重くのしかかっています。
* 現状:
GDPは300〜400億ドル。陸軍大国としての威信(常備兵力30万人超)を保っていますが、経済再建は遅れています。
アジアにおいては、インドシナの権益を守るため、強大化する日本に対して「警戒しつつも刺激しない」方針を採らざるを得ません。
第5位:イタリア(The Frustrated)
〜失意の戦勝国〜
「未回収のイタリア」問題など領土要求が通らず、国内では不満が鬱積しています。
* 現状:
GDPは150〜200億ドル。資源に乏しく(石油自給率5%)、工業力も英米独仏日には及びません。地中海地域でのプレゼンス維持が精一杯の状態です。
第6位:ドイツ(The Chained Giant)
〜嵐の前の静けさ〜
ヴェルサイユ体制により手足を縛られたかつての最強国家。
* 現状:
人口6,000万人と高い技術力を持つものの、軍備は陸軍10万人・海軍ほぼゼロに制限されています。
しかし、その潜在能力は依然として高く、秘密裏に技術開発を進めています。植民地を奪われたドイツにとって、同じく「現状打破」を志向しうる日本の動向は、密かな関心の対象です。
圏外・混乱地域
ソビエト連邦
〜翼をもがれた北の熊〜
革命と内戦の混乱が続いていますが、この世界線ではさらに悲惨な状況です。
* 封じ込め:
日本のシベリア出兵が成功し、極東地域(沿海州・アムール川流域)に日本の傀儡国家「シホテルーシ共和国」が成立。
これにより、ソ連は太平洋への出口とシベリアの豊富な資源へのアクセスを制限されています。国力回復には史実以上の時間を要するでしょう。
分野別詳細分析
1. 経済・産業構造の転換
史実の日本は「繊維産業(生糸)」が頼りでしたが、この世界線では様相が異なります。中東からタンカーで運ばれる石油が、化学工業と重工業を早期に開花させました。
* 貿易: 日本は依然として機械類を輸入していますが、石油製品や加工品のアジア輸出が増加。貿易赤字は「拡大再生産のための投資」という性質を帯びています。
2. 軍事バランス(質的変化)
* 海軍: ワシントン海軍軍縮会議(1921年予定)を控え、日本は「対米7割」以上の比率を確保できるだけの交渉材料(中東の石油供給路というカード)を持っています。
* 空軍: 石油の余裕は、パイロットの訓練時間に直結します。日本の航空戦力は、質・量ともに欧州列強を凌駕しつつあります。
3. 地政学的緊張
世界は**「米・英・日」の三極構造**へと移行しつつあります。
* 太平洋を挟んで対峙する日米。
* その間でバランスを取り、延命を図る英国。
* 復讐の機会をうかがうドイツ・ソ連。
1920年は、この「新たな冷戦(あるいは熱戦の前段階)」が幕を開けた静かなる分水嶺と言えるでしょう。




