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バテレン追放令

実際の事件であり、不謹慎かつ不快に思われる人もいらっしゃると思うので最初にお詫び申し上げます。


ただ茶化したり名誉毀損の意図は一切ありません。

今を生きる者として純粋に俯瞰的視点から近代〜現代を舞台にした歴史小説が書きたいのです。


それは唐突であった。秀吉は九州侵攻の後博多での御前会議で突如イエズス会日本支部ガスパール・コエリョに対して厳しく詰問した。


なぜ熱心に布教するのか?なぜ労働の役に立つ牛馬を食うのか?、なぜ神社仏閣を破壊し日本の宗教と融和しようとしないのか?


そしてなぜ日本人を奴隷として海外に売り飛ばすのか?と問うた。

「この国の人民牛馬にいたる迄、大事なわしの労働力なんだわ」

秀吉は猿顔を険しくしてジロリとコエリョをにらんだ。


秀吉には若い頃からの夢があった。日本統一のみならず朝鮮、中国、フィリピン、インド迄征服して戦国版大東亜教圏を創り上げるという途方もない夢である。


秀吉は信長の配下のころからそれを信長に説明し承諾を得ていた。自分が天下人になった後もこの天下を超えた天下獲り、侵略の野望は持ち続けていた。


その為には1人どころか牛馬の労働力に至るまで惜しい。


言わんこっちゃない…高山右近、小西行長らその場に居合わせた武将らの心中は同じ思いであった。


コエリョは自らが設計させた軍船を尊大な態度で秀吉に見せびらかした後だったからである。


右近、行長はコエリョを心配し、秀吉に寄進する様に勧めたがコエリョはそんな道理はないとばかりに鼻で笑って聞き入れなかったのだ。


間の悪い事にその直後秀吉の側近、施薬院全宗(やくいん ぜんそう)がここぞとばかりにポルトガルの奴隷貿易によりキリスト教徒以外の貧しい日本人が奴隷として海外に売り飛ばされていると耳打ちした。キリシタン大名はイエズス会に勝手に土地も寄進している。全宗に言わせればこれは立派なポルトガルによる侵略行為だという。


秀吉は激怒する。そもそも秀吉は信長のキリスト教優遇路線を引き継ぎ、コエリョのみならず宣教師にかなり親切にしてきた。それなのにこの南蛮人は感謝するどころか未開の蛮族にありがたい教えを広めてやっているという態度でどんどん増長してくる。


コエリョにしてみれば心外であった。イエズス会は奴隷貿易は認めていなかった…この事件に先立ちポルトガル国王セバスティアン1世に働きかけ日本人奴隷貿易禁止の勅許を得ている。


「売り飛ばす奴がいて買う奴がいる以上仕方がないでしょう」

憮然として言い放った。日本人を奴隷として海外に売り飛ばすのは日本人だし、買っているのはポルトガル宣教師ではなくポルトガルの商人である。


「おみゃーはさっきわしにデッカい軍船を自慢してきたがや」

秀吉は瞬き一つせず嫌味たらしく言った。それだけの権限がありながら同国人の奴隷貿易も取り締まれないのかと言いたいらしい。


コエリョは剃り上げたハゲ頭まで真っ赤になった。そもそもコエリョは秀吉が嫌いだった。ポルトガル人と違う黄色人種の異民族というだけでナチュラルに差別対象なのに秀吉は極めて不細工で指も6本あった。

西洋人は猿耳すら不細工だと言って嫌う。猿そっくりな秀吉など最早人間と言うよりコエリョの目から見ればクリーチャーにしか見えない。


イエス•キリストに言わせれば全ての人間は神の下等しくその違いは神を信じるか愛があるかだけだと言う。


しかし主よ!この秀吉と言う男は醜過ぎます!コエリョは心中絶叫した。


秀吉はコエリョがそこまで自分に対して生理的嫌悪を抱いているとは思っていなかったが薄々自分を嫌っている事は感じていた。

片親で貧しく低い身分から苦労してのし上がった秀吉は自分に対する侮蔑の視線に敏感だった。

その屈辱と劣等感こそが秀吉の原動力であると言っても過言ではない。

もっとも天下人となった今そんな視線を自身に投げかけてくる無礼者はいない…この南蛮人以外は。

秀吉の生まれる前母大政所おおまんどころは日輪が体に入ってくる夢を見たと言う。

秀吉は誰よりこの事を信じている。わしは日輪の子じゃ…日本を起点とし太陽が世界を照らす様に周辺諸国を支配し、世界にわしの力を示してやる。それが自分の使命だと漠然と信じていた。なにしろ自身程の底辺から這い上がり天下人になった者など今までの日本の歴史上、自身以外いないではないか。


野望達成後の肥大した豊臣幕府の具体的な運営指針があるわけではない。ただはっきりしている事は野望達成後の世界には最早コエリョの様に自身に侮蔑の眼差しを送る者はいないだろうと言う事だけである。


コエリョが意外だったのは聞き分けの良い日本人だと思っていた秀吉も自身と変わらぬ排外本能を持っていたという事だろう。


もっとも彼は自身が誰よりも敬虔なキリスト教徒だと思っていて差別意識の無い博愛主義者であると思っているが、実際未開の蛮族に物を教えてやっていると思っていた。しかし秀吉の視点では南から頑張って日本まで来た蛮族の要望を頑張りに免じて利用価値のあるうちは大目に見てやっていたに過ぎない。


20世紀以前の動物学者が真面目に動物には心や理性など一切なくその行動は全て生理的反射行動に過ぎないと考えていた様に、コエリョは未開人のキリスト教に対する拒絶反応は真の教えを知らぬがゆえの反射反応に過ぎぬと考え警戒を怠った。


翌日コエリョは国外追放となり、バテレン追放令が出された。





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