第42話「王国の闇 ― 戦略級超兵器開発計画」
王国の闇 ― 戦略級超兵器開発計画
エルミニア王国の深部で
そこは、王城の図面にも記されていない区画だった。
昼夜の概念がなく、薄暗い灯りが延々と続く廊下。
その先で、“影の支配者”と呼ばれる存在が君臨していた。
誰も、その顔を知らない。
誰も、その声を真正面から聞いたことがない。
ただ、一声の命令だけが下る。
それが、すべての始まりだった。
不明瞭すぎる仕様書
技術者たちは命令書を受け取ったが、
そこに書かれていた内容は不可解だった。
技術者が小声で漏らす。
「……用途がまったくわからない」
仕様書は抽象的すぎて理解不能だったが、
“影の支配者の命令”とあれば逆らえない。
拒否した者は、二度と姿を見なかった。
重圧の中での試作
最初の試作品が完成した。
だが提出した瞬間、支配者の部屋から静かな“拒否”の気配が流れた。
「…ダメだそうだ」
続く2号機も、3号機も。
理由はわからないが、すべて不合格だった。
技術者は絶望したように机に突っ伏した。
「いったいどこがダメなんだ…?
…もう限界だ…」
恐怖が、研究室に重く積もっていった。
“影の支配者”の間へ
20を超える試作ののち、
ついに“完成の可能性がある”と判断された試作品ができた。
技術者たちは震えながら支配者の間へ向かった。
薄暗い空間。
天井は低く、静寂だけが支配している。
その最奥に“影”がいた。
光の屈折でわずかに輪郭が揺れる。
何も言わず、ただ存在するだけで恐怖を与える気配。
技術者は震える声で言う。
「……ご確認をお願いします……」
影は音も立てず前に出た。
試作品に手を触れる。
そして、暗がりの中でじっと静止した。
時間の感覚が失われるほどの沈黙。
やがて――影が、
ほんのわずかに“頷いたように見えた”。
「……承認だ」
誰ともなくそう呟いた。
技術者たちは、その場で崩れ落ちるほど安堵した。
王国中に広まる“未知の兵器”
完成したそれは、瞬く間に王国全土に広まった。
最初は何の装置かわからず戸惑ったが、
一度試した者は二度と手放せなくなった。
「……信じられない……身体が……動かない……」
「危険だ……! これでは誰も動けなくなる……!」
寒冷期の生産性は激減。
だが人々の満足度は異様に上昇した。
家族は帰ってこなくなり、
官吏ですら仕事中にその装置から出てこなくなった。
各国の使者たちも例外ではなかった。
滞在期間が軒並み延び、
帰国した者は皆、
「……頼む、あれを我が国にも……」
と懇願するようになった。
各国は争うように輸入を求め、
エルミニア王国は外交で圧倒的優位を獲得した。
世界は、
この装置の前に無力だった。
そして、その名が明かされる
ついに、王国は公式記録に名称を刻んだ。
“こたつ(Kotatu)”
猫はただ、その中でぬくぬくと眠っていた。




