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第39話「猫耳外交 ― URS首脳会談の真実」

猫耳外交 ― URS首脳会談の真実





エルミニア王国は今、急速に飛び続けていた。

クラリウム技術、霊核炉、航空艦隊、そして霊力輸出。

かつて小国と見られていた国家は、今や“世界の技術大国”として注目されている。


当然、その急激な発展に危機感を覚える巨人国家があった。

**ユナイテッド・レヴァリア合衆国(URS)**である。


もともと海を支配することで覇権を握ってきた超大国――

しかし「空路」という発明は、その地位を揺るがしかねない。

さらに国内では、エルミニアと比較した経済停滞を嘆く声も増えていた。


「あぁん!?最近だらしねぇな?」

という国民の不満がSNSを賑わせていた――。


この事態を受け、若き大統領アシュリー・ローレンスは高官を集めた緊急会議を招集した。



URS大統領府・緊急会議



「エルミニアが空の道を手に入れたわ。

海洋覇権だけでは制空圏を抑えられない時代が来るかもしれない」


「はい。彼らの技術の源泉は……霊核炉かと」


会議室の空気が重くなる。


霊核炉――クラリウムを霊力に変換する、エルミニア技術の根幹。

エルミニアはコンデンサーだけ輸出し、本体は決して国外に出さない。


「なるほど……。霊核炉さえ手に入れることができれば……」


アシュリーはぽつりと呟いた。


そして数時間におよぶ会議の末、結論は一つだった。


「霊核炉技術を手に入れる」


そのための第一歩として――

エルミニア首相・リオを招待することが決まった。



URSに呼び出されるリオ



突然の首脳会談の招集。

エルミニアはURSに資源面で依存している部分も多く、拒否はできなかった。


「……なんでボクが……」


リオは借りてきた猫のようにしょんぼりし、

アラカワに連れられてURS大統領府の重厚な会議室へと入った。


待っていたのは、若くして大統領となったアシュリー・ローレンス。

切れ長の目が印象的な、美しい人物だ。


「――いらっしゃい、リオ首相」


リオは猫耳を伏せ、しっぽをヘナヘナに垂らして座った。



首脳会談開始



軽い世間話のあと、アシュリーはふと笑みを浮かべた。


「最近あなた達の国、がんばっているみたいね」


リオにはそれが

「最近調子に乗ってるんじゃないかしら?」

と聞こえた。


「ひ……ひぃ……」


ぷるぷる震える猫耳。


アシュリーはさらに続ける。


「航空艦隊も整備したわね。経済的にも自立してきた。

でもね……あまりに急すぎるの」


「き、急ですか……」


「急激な発展は注目を集める。

あなた達の国を侵略しようとする国家も現れるかもしれないわ」


リオのしっぽはさらにヘナヘナになった。


そしてアシュリーは一歩前へ進み、声を低める。


「URSとしては、あなた達を守ってあげたいのよ。

……でも、今のままじゃ難しくなるわね」


リオは目を丸くした。


「ど……どうして……?」


「もし他国もクラリウム技術を手に入れ、あなた達と同じ戦力を揃えたら――

今のURSでは太刀打ちできないかもしれないの」


「う、うぅ……」


完全に怯え切ったリオ。


その様子にアシュリーは確信をもつ。


「そこで提案よ。

諸外国が追いついてしまう前に……私たちで同等の技術を開発して防衛力を高めましょう」


リオは「?」と首を傾げた。


「つまり、霊核炉よ。

――あの技術を私たちにも提供していただけないかしら?」


「えっ……でも……あれは危険だし……

うちが外貨を得て食料輸入するための切り札だし……」


するとアシュリーは、目を細めて言う。


「ねぇリオ。

まだ発展途上だったあなた達に最初に技術提供したのは――誰?」


「……URSです」


「防衛上の不安があったあなた達に軍事技術を提供したのは?」


「……URSです……」


「今も王国に優先的に資源を供給しているのは?」


「…………URSです……」


涙目になり、猫耳がしょぼんと垂れ下がる。


リオはもう、断れなかった。



そしてアメとムチ



アシュリーは畳みかけるように、しかし優しい声で言った。


「あなた達の国は急激に発展したわ。

それは大金を無防備に持っているようなもの」


ぐっと顔を寄せる。


「どこかから、こわ〜いお兄さんやお姉さんがやってきて、

暴力でそのお金を奪っていくかもしれないわ……?」


「やだ!!」


涙目で叫ぶリオ。しっぽが丸まる。


そこでアシュリーは柔らかく笑った。


「だから、協力して守りましょう?

そのために霊核炉が必要なの」


「……航空艦隊があるもん……」と、リオのささやかな反抗。


「確かにね。でも技術なんて流出するものよ。

あなたの国にも、スパイがいるかもしれない」


「ううぅ……」


完全に怯え切ったリオに、アシュリーは優しく言った。


「ね?ゆずってくれる?」


「……わかりました……霊核炉の技術提供をします……」


その瞬間、

アシュリーの内心は (やったわ……!!) だった。


しかし――

目の前のリオは泣きそうで、猫耳もしっぽもヘロヘロにしぼんでいる。


アシュリーの心にほんの少し罪悪感が芽生えた。


そこでアシュリーは言った。


「もちろん無条件とは言わないわ。

あなた達の国では“食料不足”が問題なんでしょう?

霊核炉技術と引き換えに、穀物を安く輸出するわ」


するとリオの猫耳がぴくっと立った。


「本当?」


「ええ、本当よ」


「……肥料の原料も輸出してくれる……?」


「もちろん」


猫耳がぴん、と立つ。


その瞬間、アシュリーの理性がふっと飛んだ。


かわいい。


気がつけば、リオの要求に次々と頷いていた。


「大豆も不足してて……」


「はいはい、わかったわ。大事な原料でしょう。それも安く輸出するわ」


高官が慌てて耳打ちする。


「(あ、あの大統領閣下!?これ以上は……)」


「(うるさいわね!今いいところなんだから!!)」


アシュリーの視線は完全にリオの猫耳としっぽに釘付けだった。


こうして――

結果として結ばれた条約は、


エルミニア:霊核炉技術提供

URS:食料・肥料・大豆ほか多数を格安供給


という内容になっていた。



数日後・諸外国の誤解



諸外国の外交官たちは噂する。


「聞いたか、あの小国エルミニアがURSと首脳会談をしたらしいぞ!」


「霊核炉の技術提供をすることになったそうだ!

やっぱり超大国ににらまれたら断れないよなぁ」


「でも聞けよ!

霊核炉と引き換えに、必要な資源を次々と格安で輸入する条約を結んだんだと!」


「えっ、URSにそこまで言わせたのか!?」


「ほんの数年前まで小国だったのになぁ。

エルミニアの若き首相、ただ者じゃないぞ……」


――もちろん、現実は。


リオは猫耳をぷるぷる震わせ、半泣きで要求し、

アシュリーは猫耳に翻弄されて譲歩し続けただけであった。


こうしてリオ首相は、

世界に勝手に誤解され、勝手に英雄視される

ことになったのだった。



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