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第37話「黒猫ミナと“喋るんだニャン!” ― 王城に来た転移者」

黒猫ミナと“喋るんだニャン!” ― 王城に来た転移者




王城に、新たな話題の商品が持ち込まれた。


民間クラリウム関連企業が発売した新発明――

PDS端末用猫語翻訳アプリ『喋るんだニャン!』。


霊波変動の解析により、猫の鳴き声を“人語”として表示するという。

人間の思考は複雑で霊波が読めなかったが、

猫は感情も行動も単純なので実現できたらしい。


こういう新しいものに飛びつくのが、当然ながらリオだった。


「アラカワ、これ! 試してみようよ!」

「……嫌な予感しかしない」


結局アラカワは引っ張られるように王城の中庭へ連れてこられた。

そこには、今日も自由に集まっている猫たちがいる。


リオがアプリを起動すると、猫の一匹が「にゃあ」と鳴いた。


PDS端末が即座に反応する。


『しっぽ触らせろ』


リオは目を瞬かせた。「え、そんな要求から……?」

別の猫が鳴く。


『腹減った』

『眠たい』

『そっち行きたい』


アラカワは「まあ……猫らしいな」と呟き、

ヴェルティアは淡々と解説する。「猫なんてそんなものです」


リオは少しがっかりした顔をしていたが、

「満足しただろ。ほら、公務に戻るぞ」とアラカワが言いかけたとき――


突然、アプリからまったく違う雰囲気の声が響いた。


『待ってください! 言葉がわかるんですね……助けてください!』


リオもアラカワも凍りついた。


振り向くと、一匹の黒猫がじっとこちらを見て座っていた。


黒猫が「にゃ」と鳴く。


『私は元々、人間だったんです!

 この世界に来て気が付いたら猫になっていて……!』


「……は?」

「……はぁ!?」


完全に固まる二人。


黒猫は、翻訳アプリを通して切実に語り始めた。



黒猫ミナの正体



執務室へ黒猫を連れて移動し、詳しく話を聞くと――


黒猫の名は ミナ(Mina)。

元の世界では人間の女性だったらしい。


ある日、大次元崩壊に巻き込まれ、気づいたらこの世界に転移していた。

しかし、目覚めたときにはなぜか猫の姿になっており、

身を寄せる場所もなく王城に迷い込んだという。


「猫の体は不便で……とても困っています。

 どうにか……人の姿に戻れないでしょうか?」


ミナは震える声で訴えた。


リオとアラカワは難しい顔で腕を組む。

ヴェルティアだけが妙に冷静だった。


そこで――

ヴェルティアが静かに口を開いた。



ヴェルティアの“暴論に見える天才案”



「人間に戻すことはできませんが……

 猫の体から人の体をコントロールして動かすことなら可能です」


「ん?」

「……どういう意味だ?」

リオもアラカワもその意味が分からず頭の上に?が浮いている。


ヴェルティアはさらりと言い放つ。


「つまり、機械で人の体を作ります。

 そして、その体を猫の霊波で遠隔操作するのです。

 そうすれば、不便はほぼ解消されます」


「ただし本体の猫は、その機械の体から一定範囲内にいる必要がありますけど」


リオは手を叩いた。「なるほど!」

アラカワは嫌な予感しかしない顔だ。


「それって……前にメイドロボ作ったみたいに人型ロボ作るってことだよな?

 だってヴェルティアのロボって……」


リオがボソッと呟く。「ぽんこつ……」


ヴェルティアはむっとした。「うるさいですね……。

 前回はソフトが未熟だっただけです!

 外部コントロールなら問題ありません。

 あのメイドロボも、最終的には家事ができるようになったでしょう?

 ハードに問題はありません!」


ミナは必死に鳴いた。


『なんとかなりそうですか!? お願いします!

 なんでもしますから!』


「ん? 今なんでもするって言ったよね?」

リオの顔がニヤリと輝く。

アラカワはその瞬間、完全に察した。


「……また面倒なことになるな」



そして王立クラリウム工廠へ



例によって王立クラリウム工廠へ向かった一行。


材料を集め、ヴェルティアがPDSで巨大な箱を展開する。


「これとこれを入れてください。

 あとは私がエーテル・クラフトします」


しばらくして――


チーーーン!


箱が解体され、中から一人の少女が姿を現した。


ロングの黒髪に、猫耳としっぽ。

肌の色、顔立ち、体の動き……全て人間そのものだが、目を閉じて静止している。


その手首には赤い首輪のような装置がついていた。


「その赤い首輪を黒猫に装着してください。

 これを介して霊波接続が行われます」とヴェルティア。


リオはミナに首輪をつけた。


次の瞬間――


少女の体がぴくりと動き、ゆっくり目を開いた。


「……あっ。喋れる! 動ける! 手も……足も……!」


ミナの声だった。


ヴェルティアは満足そうに「成功ですね」と一言。

レアは横から「へぇ~」と珍しく素直な感想を漏らす。


「意識を集中すれば、猫の体も人の体も動かせます」とヴェルティアが補足した。


ミナは涙ぐみながら頭を下げる。


「本当にありがとうございます……!」


ただし、とヴェルティアは念を押す。


「本体はあくまで猫です。猫の体から遠く離れてはなりません」



ミナの新生活スタート



「ところでミナ、これからどこで暮らすの?」

リオが現実的な問題を突きつけた。


ミナ(少女体)は困った顔で、「……実は、行くあてもありません」と呟く。


リオはすぐに答えた。「じゃあ王城に住めばいいよ」


ミナは耳としっぽをぴんと立て、「いいんですか!?」と喜んだ。


こうしてミナは王城住まいに。


数日後――


ミナは「働かせてください」と申し出た。

生活だけでは申し訳ないというのだ。


王城のメイド長に相談した結果、

猫耳少女型ロボの体を使い、王城メイドとして働くことに。


本体の黒猫ミナは、その部屋の片隅でくるりと丸くなりながら、

同時に少女体で掃除・洗濯・料理をこなしていく。


その手際の良さにメイド長は目を丸くした。


「あなた……優秀すぎない?」


ミナは照れながら答えた。

「元の世界ではよく家事をしていたんです」


こうして、

黒猫ミナの新しい人生(猫生)が始まった。


リオはミナの新生活を見て、一言呟いた。

「それにしても、こんなことってあるんだねぇ…。」


さらにリオはアラカワを見て言った。

「アラカワが昨日食べた豚肉、もしかして言葉が話せなかっただけで実は…。」

「おい、やめろ。」


アラカワは背筋が寒くなった。




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