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第36話「リオ首相握手会 ― 王都の大騒動」

リオ首相握手会 ― 王都の大騒動





王城の会議室に、妙な空気が流れた。


「……リオちゃんの握手会を開きましょう」


シャーロット女王が唐突にそう口にした瞬間、

場の空気が凍りつく。


議題は経済政策だったはずだ。

だが、いつも突拍子もないことを言い出すリオではなく、

そのリオの隣に座る女王が言うので、全員が理解を放棄した。


机の上で丸くなっていた猫まで、ぴくりと顔を上げ、

「え?」と言わんばかりに目を丸くする。


「……握手会って、ボクの?」

リオが恐る恐る聞くと、シャーロットは当然のように頷いた。


「そうよ。先日R-Netに寄せられた声を反映しただけですわ」


女王が端末を操作すると、例の「世界一かわいいリオちゃん」アカウントに

寄せられた大量のコメントが映し出された。


『女王様ばかりリオちゃんに触れてずるい』

『私にも触らせてください』

『リオちゃんの手、ぷにぷにしてそう』

『握手会希望!』


リオは顔を真っ赤にするしかなかった。


「ボ、ボク忙しいから……そういうイベントは……」


「あら?」

シャーロットがにっこり微笑み、さらりと言い放つ。

「あなた、いつも公務を抜け出してサボっているじゃない」


リオは言葉を詰まらせた。

その横でアラカワが「事実だな」と小声で頷いている。


結局、リオは「視察名目のサボりを公式に認めてもらう」ことを条件に、

握手会開催を飲むしかなかった。


こうして王国史上初の“リオ首相握手会”の開催が決まった。



王都、握手会当日



イベント会場に着いたリオは、目を疑った。


「……なにこれ?」


王国各地から集まった人々と猫が、

広場だけでなく周囲の通りまで埋め尽くしていた。


勝手に開設された露店もずらりと並んでいる。


『リオちゃん缶バッジ』

『リオちゃんアクスタ』

『猫耳リオちゃん抱き枕(非公式)』

『猫おやつ専門店』

『ご当地カガナスープ屋台』


極めつけは――

「王都の猫と触れ合えるスペース」

という謎のエリアまで存在していた。


猫たちは勝手に集まり、勝手に寝そべり、勝手に撫でられている。


(……なんでこうなるの?)


リオがぽかんとしていると、

アラカワが横で腕時計を確認した。


「時間だ。リオ、一人十五秒で回すぞ。

 こっちは警備とスケジュールがあるんだ」


こうして握手会がスタートした。



一日目:無限列



最初の参加者は緊張で震えていた。

「ほ、本物だ……手、柔らか……! ああ、今日はもう手を洗わない……!」


次の参加者は泣いていた。

「リオちゃん、実在するんだねぇ……!」


さらに次の参加者は猫を肩に乗せて言った。

「うちの子も握手したがってて……!」


アラカワは容赦なく時間を切る。

「はい十五秒、次! はい次! もっと回せ!」


リオは朝から夕方まで握手を続け、

終わる頃には魂が抜けかけていた。


「……手が、取れそう……」



二日目:地獄のカオス



翌日、会場の様子はさらに悪化していた。


・出店数が倍増

・リオ/猫に関係ない同人誌サークルが登場

・なぜか“謎料理実演コーナー”が誕生

・猫のコスプレをした参加者が行進を始める

・会場を囲む長蛇の列

・列整理を自主的に行う参加者(最後尾プラカード含む)


アラカワが低い声でつぶやく。

「……なんだこの地獄は」


リオは逆に達観した笑みを浮かべていた。

「……こういうの、ボクのせいじゃないよね?」


「お前が国民的人気になったからだよ」


「えぇぇ……」



三日目:完全なる祭り



三日目になると――


会場が“祭り”として完全に機能し始めた。


・屋台が公式イベントみたいに整列

・リオちゃんグッズの“新作発表会”が開かれる

・コスプレした猫が表彰される謎企画

・自治会レベルで交通整備が入る

・握手待ちの行列が歌い出す(有志の合唱団)


もはや誰にも止められなかった。


三日間の握手会を終えたリオは、

イベント会場の裏で地面に倒れ込んだ。


「……終わった……生きて帰れた……」


アラカワは苦笑する。

「よく頑張ったな。とりあえず寝とけ」


シャーロットは満足そうに微笑んでいた。

「とても素敵なイベントになったじゃない。国民の笑顔も見られましたし」


リオは返事をする気力もなかった。



エルミニア王国の“新文化”誕生



握手会が終わって数週間。


王都のイベント会場では、いつの間にか定期的に人が集まるようになった。


自作の猫グッズを売る者。

オリジナルの薄い本を並べる者。

自作PASモデルの展示会をする者。

なぜか猫用衣装のファッションショーまで行われる。


誰も彼もが

“あの握手会の空気を再現したい”

という思いで集まったのだ。


――こうしてエルミニア王国では、

毎年この季節になると王都に人々が集い、

創作物や猫たちを披露し合う文化が生まれた。


つまり。


これがエルミニア王国の“コミケ”の誕生であった。



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