第29話「やったぜ ― オカヤマ北部の土方親父」
やったぜ ― オカヤマ北部の土方親父
これは、R-Netのとある電子掲示板に投稿された男たちの物語である――。
やったぜ。 投稿者:健体土方(〇月〇日(水)07時14分22秒)
わし(53歳)は、エルミニア王国のオカヤマ北部に住む健体親父や。
ここオカヤマは転移してきた元日本人が多いが、首都ルミナシティからは遠く、滅多に人が来ねえぜ。
そんなのどかな町で、わしはその日暮らしの生活をしとったんや。
わしの生業は日雇いの土方仕事。誇りを持っとるが、世間では底辺の仕事やと見られがちや。
実際、「変態糞土方」などと罵られたこともある。
それでも、なじみの浮浪者のおっさん(60歳)と共に汗を流してきたんや。
ある日、仕事を終えて帰宅したら酒が切れていた。
仕事の後の一杯はわしの日課。なけなしの金を握って、いつもの店に向かったが――酒は無かった。
理由は簡単。交通網が整っておらず、物資が届きにくいからや。
わしは落胆して帰宅した。ああ~~酒が無えぜ。
怒りのぶつけどころが分からん。ただ分かるのは、土方仕事と酒のことだけや。
数日後、ふと思い立って外に出た。舗装もされん荒れた道。
こいつのせいで、物が来ん。
わしは個人的な怒りをぶつけるように、誰にも頼まれていない道路工事を始めた。
目的はただ一つ、主要道路を整備し物資を届きやすくすること。
無茶やと分かっとったが、ヤケクソや。
こうして、わし一人の孤独な闘いが始まったんや。
最初は奇異な目で見られた。
「一体なにをやっとるんじゃ」「もう気が狂っとる」と言われても、気にせん。
ただひたすら掘る。誰の為でもない、自分の為に――。
ある日、いつもの浮浪者のおっさんが土方姿で現れた。
「どかちゃん、水くさいやないか。なんでわしに一声かけてくれんのや」
「こんなことにおっさんを巻き込むわけにはいかん。これはわし個人のことや」
するとおっさんは笑って言った。
「この道路ができりゃ物資も届きやすくなる。それは皆の為になるんじゃ。わしにもやらせてくれや」
その日から、おっさんも加わった。わしは目頭が熱くなった。
翌日、知り合いの汚れ好きの土方のにいちゃん(45歳)も現れた。
言うことは同じや。「水くさいやないか」。
それからは三人でもうめちゃくちゃに働いた。少しでも道を良くしようと奮闘した。
無茶な工事やったが、諦めず続けたんや。
日が経つごとに人が増えた。
土方姿で手伝いに来る者、道具や食料を運んでくれる者、応援してくれる人……。
皆の想いは一つ。「この道路をなんとかしたい」。
最初は一人やったのが、一人、二人と増え、今は大勢や。
ああ~~たまらねえぜ。わしは胸から込み上げるものがあり、目頭がひくひくしてきたんや。
それでも難工事には違いなかった。みんな手作業で、進みは遅い。
そんなある日、転機が訪れた。
「おお~い! どかちゃん! 王国の政府が重機を貸してくれるそうじゃ!」
「本当か!?」
なんとおっさんが王都まで行き、重機レンタルの約束を取りつけてきた。
数日後、現場に重機がドバーッと到着。
元の世界では見慣れたはずの重機も、この世界では貴重品や。
わしらは「国も変わろうとしている」と感じた。
懐かしい感触のパワーショベルに乗り込み、エンジンをかけた。
轟音。
オカヤマの大地にわしのバケットを突うずるっ込むと、
地面が掘れて、気持ちがいい。
にいちゃんも、おっさんの誘導で重機を操り作業を始めている。
「ああ^~このパワーならいけるで!」
重機の力で作業は一気に進んだ。
数日後――ついにその日が来た。
「どかちゃん、ついに道路が完成したで!」
「ああ……」
そこには、立派に舗装された道路があった。
この道があれば、オカヤマにも物資が届く。
わしは叫んだ。「やったぜ!」
皆が拍手で祝う中、なんとリオ首相が現れた。
噂を聞きつけて視察に来たらしい。
「聞いたよ、君らのこと。素晴らしい道路だね!」
リオ首相は笑顔で言い、拍手を送った。
わしらは照れ臭くなった。
「これだけの道が作れるなら、会社を興してみないか?」
「ええ!?」
おっさんが笑って背中を叩く。
「それならどかちゃんが社長や!」
「ええんか? わしでええんか?」
皆がうなずいた。
「どかちゃん以外は考えられん」「どかちゃんがおったからがんばれたんや」
皆が口々に称える中、先に、にいちゃんが感極まって涙をドバーッと出してきた。
それと同時に、おっさんもわしも涙を流したんや。もう顔中、涙まみれや。
「新社長、これからもエルミニアとオカヤマの為にがんばってくれ!」
とリオ首相が激励した。
「こうなった以上、精一杯やらせてもらうで!」
わしは涙ながらに答えた。
数か月後。
わしは土建会社「ヤッタゼ」の社長になった。
社名は専務になったおっさんが、あの時わしが叫んだ言葉から名付けた。
今では会社も大きくなり、オカヤマだけでなく王国中の道路整備を請け負っとる。
それでも窓の外を眺めるたび、あの伝説の工事を思い出すんや。
「あれは最高やった。もう一度やりたいぜ。」
そう呟くと、いてもたってもいられなくなり、
社長自ら現場に出て汗を流す。
ああ~~たまらねえぜ。
やはり大勢で泥まみれになって働くと最高やで。
こんな健体親父と一緒に汗を流さないか。
ああ~~はやく泥まみれになろうぜ。
オカヤマ北部に住んでるやつなら最高や。
泥まみれで働きたいやつ、至急、我が社に応募くれや。
土方姿のまま汗かいて、泥だらけでやろうや。




