プロローグ「融合世界の夜明け」
プロローグ ―― 融合世界の夜明け ――
世界は、一度、壊れた。
それは誰の意思でもなく、誰の祈りでもなく、
ただ「存在の境界」が音もなく崩れ落ちた瞬間だった。
幾つもの次元が衝突し、
時と空間が溶け合い、
かつてあり得なかった世界がひとつに繋がった。
――それが、融合世界(Integrated World)。
大次元崩壊。
それは“観測不能”とされた領域で突発的に起こり、
複数の世界を一つに押し込めるようにして誕生した。
人々は逃げることもできず、
それぞれの文明は、音を立てて飲み込まれていった。
だが、災厄の中に――新しい希望の光があった。
【世界の変革】
異世界の科学的確認
人類は初めて、異なる世界の存在を“科学的に証明”した。
神話とされていた多世界は、現実の理論となった。
異世界技術の流入
融合された文明の知識が混ざり合い、
新しい技術と価値観が急速に発展を遂げた。
クラリウムの誕生
次元の歪みの中で生まれた、未知の結晶物質。
それは光を帯び、重力を歪め、
人の感情にさえ反応する“霊晶石”――クラリウム。
この世界には、無数の思想と民族が混在した。
異なる常識が衝突し、信仰がぶつかり、戦争が絶えなかった。
しかし――時の流れと共に、
人々は再び秩序を築き始めた。
そして、いくつかの新しい国家が誕生する。
その中に、小さな島国の王国があった。
新生エルミニア王国。
【旅の始まり】
混沌とした時代の片隅。
猫耳を持つ可愛らしい少年、リオ・ファルクレストと、
その相棒の二又の大剣をその背に携える青年、ケイタ・アラカワは冒険者として生きていた。
彼らの生活は、戦火と依頼の中にあった。
だが、二人にとってこの世界は――どこまでも自由だった。
そんなある日、彼らの前に一人の少女が現れる。
「わたくしは、エルミニア王国の王女、シャーロット・エルミニアと申します。」
旅の途中で出会った、自称・王女。
簡素な服に身を包み、
手持ちの装飾品を売って旅を続けていた少女。
あまりにも非現実的な名乗りに、リオたちは思わず顔を見合わせた。
「……いや、冗談だろ?」
「ほんとですよ。うるさいですね……」(ヴェルティアの小声)
だがその瞳には、偽りのない信念が宿っていた。
少女の願いはただひとつ――
「わたくしを、エルミニア王国まで送り届けてほしい。」
【運命の旅路】
リオとアラカワは軽い気持ちでその依頼を引き受けた。
それが、後に世界を動かすことになるとは、
まだ誰も知らなかった。
荒れ果てた平原、空を覆う残光の嵐、
霊晶の光が舞う廃墟の街――
幾多の困難を越え、三人はついに目的地に辿り着く。
そして、依頼は果たされた。
だが、それは“終わり”ではなかった。
むしろここから――すべてが始まる。




