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パニック日和  作者: 杏樹希世
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夏休みになると、母は縁側にゴザを敷いて、昼寝の支度をした。

夏休みになると、母は縁側にゴザを敷いて、昼寝の支度をした。

「夏は疲れやすいから、少しでも体を休めないとダメなのよ」

そう言って、母と妹は並んで横になる。二人とも、あっという間に寝息を立てた。


けれど、私はこの時間が大嫌いだった。


昼間なのに、まるで時間が止まったような静けさ。

蝉の鳴き声も、風の音も、どこか遠くで鳴っているような気がして。

ただ、家の中で一つだけ動いているものがあった。

柱時計。


カチ、カチ、と、針が動く音。

それが、半時間ごとに「ボーン、ボーン」と鳴るたび、私は眠れないまま時間の経過を数えてしまう。


じっと横になっていると、まるで自分だけが別の時間に取り残されたような気がしてきた。

母と妹の寝息が小さな波のように続く中で、私の胸の奥だけがざわざわとして、眠ることができなかった。


この柱時計は、夜中にもよく響いた。

とくに、深夜2時ごろ。


一度目が覚めると、もう眠れない。

耳元でカチカチと音が続き、そのたびに「また朝まで長いな」と思う。


眠れない夜、眠れない昼。

時間の音だけが、私の耳の奥にしみこんでいた。


この庭に続く勝手口はいついつの時だったか、床が出来てそこで靴を脱ぎ台所、今で言うキッチンという様な綺麗な感じになって母が心なしかすごく喜んでいたと思う。


子供の頃のそんな思い出はもうすっかり忘れかけていたが、やはり、あの夜の事は未だに忘れられない。私は中学2年生になっていた。中高一貫校のお嬢様学校に自分はなかなか打ち解けれるものではなかったが、学校の中にいこいの憩いの池という小さな池の周りに集まった女学生の中で、ええ「きよちゃん」は、オールナイトニッポン知らないの~?って当時流行っていた深夜放送の話題について行きたくて、夜中台所でラジオを聞きながら勉強をするというながら俗をしていた時、家の前の路地をバタバタと走って行く音を聞いたのだ。そして、そのつっかけの音は近くなり隣を過ぎて又かえって行ったり来たりした。そして、”お母ちゃん””おかあちゃん”と確かに母親を探して泣いている声なのだ。どうしたんだろう?こんな夜中に何か叱られて外に出されてしまったのだろうか?それにしても何往復もしているのに、隣のおばさんは何故気がついて出て来てくれたりしないのだろうか?ゾワゾワして、恐怖が走るが外に出て見る勇気がなかった事を思いだす。夜中に、よく叱られて父親に躾けがまいに、外に出された事もあったがそれはもっと大きくなっていたころだと思う。少女漫画で美内すずえさんの「白い影法師」という漫画があって、ピシ!ピシ!と音が後ろをついてくる、霊のラップ音というのはよく経験した。原爆の落ちた広島だから、そんな霊も沢山いるのだろうかと思った事もあったが、はっきりと声で聞いたのと、子どもの寝室と今の間の隙間に般若の様な鬼の陰を見たことは間違いなくどんなに消したいと思っても本当に見たものであった。

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