20140909虫退治の科学
虫退治の科学
2014年09月09日03:06
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遺伝子組み換え蚊で感染対策
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=2&from=diary&id=3044246
植物を育てている人なら多くの方がご存知かと思うが、厄介な害虫の一つにカイガラムシというのがいる。
植物の葉や新芽に群がって、養分を含んだ液を吸うことで成長する小さな昆虫だ。固いカラに覆われているのでその名がついた。液を吸われた植物は次第に衰弱し、成長が止まったり枯れたりする。彼らが背負った蝋物質のカラは、外敵を寄せ付けないだけでなく、人間が散布する殺虫剤をも無効化するため、駆除が難しい害虫として有名である。
メスは生涯で1度しか産卵しないが、最初で最後の産卵時に、数百もの卵を産む。成虫まで育つものはごく一部とはいえ、植物が弱っていたり風通しが悪く湿度が高かったりすると、生存率の向上と成長の加速によって、瞬く間にその数を増やしていく。
植物の方は養分を吸われて弱体化することに加え、害虫の分泌物が病気の原因になるため、特に農産物の場合は生産者にとって大きな脅威となる。弱った株で作られた作物は、当然ながら味が落ちるからだ。
食料生産に関わることだけに、こうした害虫の研究は一般に知られている以上に熱心に行われている。
農薬と聞くとすぐに薬害が懸念されるものだが、研究者たちの精緻にして多角的なアプローチは、一見の価値がある。
カイガラムシの生態の研究によれば、ふだん我々の目にとまる個体は、全てが幼虫あるいはメスであるそうだ。
幼虫は数回の脱皮を経て成虫になるのだが、最後の脱皮を行う際に、その一部がオスに変化して、生殖を行う。
オスは絶対数が少ないものの、他の個体とは全く異なる外見と機能を備え、自由に飛び回る羽を持っているという。孵化の直後から文字通り精力的に活動し、多くのメスと交尾して、短期間の間に子孫を残して、そのまま地に落ちる。オスの口は孵化の時点で失われており、食事さえしないというから凄まじい。
かつて日本の某大手化学会社が研究の一環として、オスの成虫を引き寄せるメスのフェロモンを合成することに成功したそうだ。
コスト面の理由からか製品化はされなかったが、使い方次第では繁殖期のオスを誘引し、実際の繁殖を阻害することで害虫駆除の効能が期待できると、別の研究者がその著書で述べていた。
繁殖を阻害するという点で、今回の蚊の対策に通ずるものがあるように見受けられる。
害虫対策ひとつとってみても、気の遠くなるような地道な研究の積み重ねによって、今日の我々の生活は支えられている。
自然との共存は難しい課題には違いないが、安易に科学を否定するのはあまりにも勿体ない。
また見方によってはそれは、背筋が寒くなるような人間世界の現実を、示唆しているようではあるにしても。




