シリアスなタイトル思い浮かばなくなった
「あんな場所だと女と言うだけで価値が出るから髪の毛も短くして隠していた。それだけの事なのに何を驚く?」
「……そう、なんだ」
また何かをこらえるようにグッとした表情でこちらを見つめている。
哀れみとかとはまた違う、なんというか……生暖かい視線だ、慣れない。
「それよりシャワーはまだなのか。腹減ったんだが」
「あ、あぁ、そうね。すぐに浴びましょう」
そう言って自分も服を脱ぎ始めた少尉……であってるっけ。
パイロットスーツの上からだったが、なかなか立派なものを持っているな。
……戦闘中クッション代わりになってくれたが、ちょっと激しく動かしただけで滅茶苦茶揺れてたな。
痛くないのか?
「男の子相手だと思って身構えちゃってたのよね」
「そういうものなのか? 確かに男だと勘違いしたうえで身体を売れと言ってきた奴は男女問わずいたが」
「……教育によろしくなさすぎない?」
「そもそも教育を受けられる環境じゃない。俺の知っている知識だって盗んだデバイスから勝手に学んだものばかりだ」
あと夢の中で俺に託すって言ってきた奴らの知識。
それがあったから文字を覚える事が出来た。
ただ読むことはできても書くことはできないんだけどな。
他にも体液まみれの女がどんなことをされたかとか、そういうのも学んだ。
だから髪の毛を切って男として振舞っていた。
生きるために必要だから高級品とされている肉も罠を作って、どこからかもぐりこんだ鼠を捕まえて食った。
多分運搬業者の船に紛れていたのが逃げ出したんだろう。
「その知識で這い上がるつもりはあった?」
「無かった。そもそも第三地区の人間を雇う奴はいないし、子供相手ならなおさらだ。売り飛ばされるリスクの方が多かった」
「なるほど……あのコロニーは本格的にテコ入れが必要みたいね」
テコ入れか、どんな手段使うか知らないが少しでもまともな環境に……ならないだろうな。
いっそ爆破した方が手っ取り早い。
「まず髪の毛から洗っていくわよ」
「ん」
「……ちょっと待って、全然泡立たないんだけど。最後にお風呂入ったのいつ……って聞くのも失礼よね」
「風呂は知っているが産まれてこの方無縁だった。コロニーで定期的に降らせる雨で水浴びをしていたくらいだ」
あとは適当な水管からちょろまかした水でしのいでたな。
汚水処理前のに当たると面倒くさいからその辺は誰であろうと教え込まれていたから助かった。
多分何も知らない奴が適当に水管に穴あけたら汚水処理前で、防護服着た奴らが突撃してきたんだろう。
処理後ならある程度見逃されるが、処理前と飲み水として利用できるようになった奴に手を出すとコロニー側が本気で潰しに来る。
なんなら賞金が出るからとちょろまかした奴を全員が仕留めにかかった。
たまに返り討ちにしてそいつを身代わりにする奴もいたけど、上は犯人確保さえできればいいのかさっさと引き返していたな。
俺はできるだけその手の輩には近づかないようにしていたが、一度だけ濡れ衣着せかけられたので返り討ちにした。
手元にエネルギーの残った銃があって助かったが、タイミングが違えば死んでたな。
「そりゃこうなるわね……よし、覚悟しなさい! こうなったら意地でもピッカピカにしてあげるから!」
「いやあ、俺はほどほどで……」
「ダメよ! それと一人称は今後は私にすること! もう男のふりは必要ないんだから!」
「そうはいうが俺は……」
「わ・た・し!」
「私は困ってないんだが……」
「周りが誤解して困ったことになるの!」
む、それは少し面倒だな。
意図的に誤認させるなら問題ないんだけど知らない所で勘違いされると厄介な事になりやすい。
盗品も売れるものと売れないもので分けてたけど、大抵はちょっとした小遣いになりそうな小物ばかりだったからな。
武器とか売るとギャングとかに目をつけられるし、薬は用途がわからないと俺が犯人扱いされる。
デバイスなんかは防犯機能をどうにかしたものを用意しないといけないから手間だけど、高く売れる。
それら全てを「限定販売」という形で売ることでどうにかしてたけど、こいつなら何か上等な物持っているかもと思われたから蛸殴りにされたわけだしな。
「そういうことなら……」
「わかればよろしい。それに5回目でようやく泡立ってきたわね。この調子なら10回もしないうちに奇麗になるわ」
「禿げる前に終わらせてくれ……」
気持ちいいのは間違いないんだが、軍人だからか力が強いんだよなぁ……。




