魔王 一問一答
Q1.好きな色はなんですか?
「やはり黒でしょうか。魔王ですし」
Q2.なるほど。それでは、嫌いな色はありますか?
「ピンク……なんかは、服として着るには恥ずかしいですね」
Q3.趣味はありますか?
「植物を育てることが好きですよ。花と、盆栽と。最近は公務の間に、野菜も育てています。聖女が喜ぶので」
Q4.公務の間にって、僕に仕事押し付けてるだけでしょうが……
「何か言いました?」
Q5.……え? い、いえ! 何も言ってませんよ! それより、盆栽ってこの世界にもあったんですね!
「いえ、元々魔界に盆栽の概念はありませんでした。他国にも、僕の知る限りはありません。盆栽は母親に教えてもらったんです」
Q6.お母様ですか?
「ええ。僕の母は異世界出身でして。君と同じ」
Q7.えっ!? 今、初めて知ったんですが!!
「まあ、今初めて伝えましたし。ついでに、料理もひと通り母に教わりました」
Q8.あ、そうだ。料理が得意だって、聞いたんです。お母様に教わったんですね。
「母の料理は、この国のものとはかなり違っていて。特に、和食という料理が。母が作るたび、幼い頃は嫌悪のような気持ちがあったのですが……。聖女が美味しそうに食べてくれるので、母から学んどいて良かったと今になって思います。そう、この国で、きっとこの世界で、唯一僕しか作れないわけですし。和食を見た時、そして食べた時の、キラキラとしたあの瞳。僕だけが、聖女を満足させることができる。そう、僕だけが──」
Q9.あっ! そうだ! お母様にお会いしてみたいなぁ……なんて! 同じ異世界出身ですし!
「それは叶わぬ相談ですね。母はもう、随分前に亡くなったので」
Q10.……え、あ、すみませんでした。踏み込んだことを聞いてしまって。
「良いんですよ。それに、母は大往生でしたから。僕自身、彼女の死に強く囚われているわけではありません」
Q11.そうだったんですね。……あの、気になっていたんですが、この世界の方々って寿命どれくらいあるんですか?
「種族によりますが、魔界全体の平均寿命は1000歳程度ですね」
Q12.1000歳!? 1000年生きるなんて、全く想像出来ないです。ついでに、魔王様は何歳なんですか?
「僕ですか? 僕は624歳で、まだ随分ひよっこですよ。君はいくつなんですか?」
Q13.えっと、20歳です。
「……赤子、ですね。なんだか君のことが不憫に思えてきました」
Q14.(そうだ! そうだぞ! 僕のこと、散々こき使いやがって! 年齢的には赤子だぞ!)
「しかし、地球では成人なわけですよね? それなら全く問題ありません」
Q15.…………。あ、全然インタビュー進んでないや。
「おや? しっかりしてくださいね。今回のインタビュー記事は、広報誌の目玉になるんですから」
Q16.すみません。では改めまして、好きな食べ物はなんですか?
「野菜と花と夏の雲です」
Q17.苦手な食べ物はなんですか?
「ツチノコです」
Q18.好きな飲み物はなんですか?
「朝どれ雨水です」
Q19.苦手な飲み物はなんですか?
「コーヒーもどきもどきです」
Q20.得意教科はなんですか?
「勇者学です」
Q21.苦手な教科はなんですか?
「魔王学Cです」
Q22.ふざけてますか?
「ふざけてる? いえ、全く。真面目に答えていますよ」
Q23.いや、すみません。なんかファンタジーファンタジーしてて、頭がパンクしそうになりまして……。
「そうですか。君はまだこちらの世界に馴染めていないんでしょうね」
Q24.えっと、じゃあ惚気エピソード聞いといても良いですか? 使えるかわからないけど……。魔王様は奥様のどこが好きですか?
「改めて聞かれると難しいですね。聖女に対しては、一目惚れでしたから」
Q25.よくそれを真顔で言えますね。閣僚会議の時と全く同じ顔してますよ。
「普通ですよ。彼女のことを愛していますから」
Q26.なるほど。
「──よくよく考えてみると、彼女の纏っている雰囲気が、僕にとって随分好ましいものであったのかもしれません。彼女と共にいると心が落ち着いて、癒されて、離したくなくて、閉じ込めておきたい」
Q27.……な、なるほど? では、最後に国民へメッセージをお願いします。
「魔王という光栄な立場を3期連続で与えていただき、本当にありがとうございます。これからもこの国の代表として、邁進して参ります。どうか引き続きご協力のほど、よろしくお願いいたします」
Q28.インタビューは以上です。ありがとうございました! (いやはや、今日は魔王がまともモードで助かった。途中怪しかったけど。本当に助かったー。いやー、でもなー。僕だって少しは作れちゃうんだよなぁ。お味噌汁とか、卵焼きとか、そんな家庭料理くらいは。これから先、僕が和食を作れることは、バレないようにしなくちゃ。そう、絶対にバレてはいけない。僕自身の安寧のために)