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1. プロローグと世界について



 妖獣は生まれつき、身体に『妖力』を持っている。

 しかし、妖力のコントロールがうまくいかない場合、様々な弊害が伴い、酷い時には、性別が一時的に変化することもある。



 白銀色の柔らかな長い髪の毛に、大きな猫耳。

 滑らかな白い肌に乗る、金色の瞳のまわりは、長いまつ毛で彩られている。

 誰もが振り返るような、その愛らしい容姿は、今は困ったように、猫耳をしょんぼりと垂れ下げていた。


「…………」


 白梅の胸には、普段はそれなりのサイズのふくらみがあるはずなのだが。

 今はぺったりと跡形も無くなり、代わりに、股の辺りに異物感があった。


「なにこれ……」


 白梅は、もぞもぞと衣を脱ぎ、下半身を見下ろして……そっと閉じた。




 ***



 四季折々の花たちは、この世界を色鮮やかに彩っていた。


 梅雨があけたら紫陽花や菖蒲が咲きほこり、暑さがすぎれば菊や竜胆が豊かな実りを伝えて、寒さの中では水仙や椿が紅白の対比を静かに生む。


 そして、淑やかに艶やかに、香りながら咲き綻ぶ梅の花は、雪解けの合図とともに、春の訪れを誘った。




 時をさかのぼること15年前。


 かつてこの世界では、人間と妖獣が、争いごとなど無くそれぞれ平和に暮らしていた。


 妖獣とは、大昔に栄えた多種多様な獣と、人間のあいだの子達から発展した子孫だ。


 妖獣が、人間と異なる特徴は、二つある。


 一つは、祖先となる獣の種類が沢山あり、体の特徴によって、『種族』に分類される。

 身体の大部分は人間に近いのだが、必ず、種族ごとに獣の特徴を持っていた。

 例えば、トリ族なら背中に大きな翼があり、ネコ族なら頭の上に大きな三角耳がある。


 そして、もう一つ人間と異なる特徴は、妖獣は、身体に『妖力』を宿しているという点だ。

 妖力とは、妖獣にとって、活力であり生命の源でもある。

 つまり、妖獣が何らかの行動をするために欠かせないもので、枯渇した場合は、死に至る。

 体に保有できる妖力の量は、個体差があり、多く有するほど、強力な妖獣になると言われている。




 この世界では、長い間、人間の暮らす場所は人間の王が、妖獣の暮らす場所は龍族が長となって、それぞれの地を治めていた。

 龍族は、妖獣の中で一番妖力量が多く、力が強いとされている。


 しかしある時突然、人間の王が、妖獣たちに奇襲をしかけ、龍族の居城を攻め落とした。

 その戦いによって、多くの妖獣が命を落としてしまった。


 龍族は、五龍いたうちの、赤龍、黄龍、青龍、白龍の四龍が討死した。

 そして、当時まだ幼体であった黒龍のみ、居城から骸が見つかっておらず、いまだに行方が分からない。


 黒龍は、かの戦いでは、随一の神速であったと噂されていた。

 そして、彼に挑んだ敵は、全員返り討ちに遭ったため、今ではその姿を知る者は誰もいないと伝えられている。


 当時の戦場において、黒龍は一本の草すら跡を残すことを許さなかったとされ、人間たちは、生き残った彼が、いつか妖獣たちを従えて、報復する可能性を恐れていた。

 今では、これらの出来事は風化しつつあるが、前王の統治時代では、黒龍が成体になる前に行方を掴もうと、血眼になって探すほどだった。


※本編ではヒロイン・ヒーローどちらも一時的に性別が変わる描写があります、ご注意ください 以下登場人物


鈴音(すずのね) 白梅(しらめ)

少し恥ずかしがり屋な女の子、何かの拍子に大胆になる時もある。白猫の妖獣。


東雲(しののめ) 朔夜(さくや)

口数と表情の変化が少ない青年。種族不明。

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