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06 ˩˦˧˨˥ 小さな湯船

 私はトイレの洗面器にセㇷ゚チㇱレㇺの体を置いて、小さく切られた石鹸(せっけん)を彼女に渡して、蛇口(じゃぐち)(ねじ)って小さく温かい水を流してあげた。ここで体を洗ってもらう。


 「ミオリコ、洗ってくれてもいい?」

 「なんで? いつも自分で洗っているでしょう。小さい子供ではあるまいし」


 もちろんセㇷ゚チㇱレㇺは体だけがちっちゃいけど、全然子供ではない。私より大人だし。


 セㇷ゚チㇱレㇺとロㇰペㇾタㇻの小さな体ではいろいろ不便でいつも私はできるだけ準備とか手伝って見守ってあげているけど、洗うのは彼女たち自身だ。


 「だって今回ミオリコの所為(せい)だからいつもよりやって責任を取ってもいいと思わない?」

 「うっ……。そうとは言ってもね。こんな小さい体、私の手は無理だろう」


 こんなスケールで細かいところまで見えないから綺麗に洗えるわけがない。何よりもし力加減間違えたらこんな小さくて(もろ)い体は簡単に潰れそうだから。何かをやってあげたいという気持ちもあるけれど無理なものはやっぱり無理。彼女のことを大切に思っているからこそそんなことはするわけにはいかない。


 「別にミオリコの手でならあたし潰されてもいいわよ?」

 「私はよくない! もう……。パンを食べるから勘弁してくれ」

 「わかったわ」


 そして私は彼女が体を洗っているところを(なが)めながら残っている食パンを最後まで食べた。


 体を綺麗に洗った後私は洗面器の排水栓を閉じて、温かい水を入れてお風呂(ふろ)にした。彼女の体は小さくて湯船(ゆぶね)が大きすぎて、洗面器の方がちょうどいいから。


 気持ちよくお風呂に入っているセㇷ゚チㇱレㇺを、私は洗面台の前で立ちながら見下ろしていて、(くつろ)いだ感じがした。


 「ね、ミオリコ」


 彼女はお湯に()かりながら私を見上げて会話を始めた。


 「さっきのパン、最初は文句を言ったけど、結局全部食べてくれたわね」

 「だって、捨てるなんて勿体(もったい)ないから」


 セㇷ゚チㇱレㇺの所為(せい)で変な感じのパンになってしまったけど、別に食べられないことはない。


 「しかも美味しそうに食べたわよね。で、どう? あたしの味は」

 「いや、別に普通だよ。私の好きなピーナッツクリームとイチジククリームと蜂蜜が混ざり合った味」


 まだパンのことを引きずっているの? 体も綺麗に洗ったからもうこの話を終わらせて欲しい。


 「あたしの味も付いているはずだから普段より美味しいと言うかと思ったわ」

 「いや、別にそんなことないと思うけど」


 どのような味のつもりなのよ? 変態の味とか言わないでよね? 確かに普通とはちょっと違う気がしなくもないかも? いや、これはただセㇷ゚チㇱレㇺのことを意識しすぎた所為(せい)だけかもしれないけど。


 「あたしの体の味のパンはいつもお世話になっているお礼にするつもりだけどね」

 「私のこと変態だと思ってるのかよ!?」

 「いつもあたしの体を物欲しい目で見ているくせに」

 「いや、それは……」


 ただセㇷ゚チㇱレㇺが可愛いから……って、さすがに言えるわけがない。

 

 とにかく私は変態じゃない。このことだけはセㇷ゚チㇱレㇺと一緒にされると困るよ。


 「それともやっぱりただのパンより本当にあたしの体をごちそう……」

 「だーかーら、食べるわけないって! そんなネタ聞き飽きたからもういい!」


 どれだけ私に食べてもらいたいのよ? この変態コㇿポックㇽ。


 「うふふ。やっぱりミオリコって優しいのね。でもあたしの感謝する気持ちは本当よ。いつもお世話になってありがとうね。ミオリコ」


 なんかいきなり丸くなってちょっと真剣な話に変わったね。


 「え? まあ、いいよ。私は好きでやっているから」


 2人のコㇿポックㇽのお世話するのは今の私の日常でそれなりに満足している。セㇷ゚チㇱレㇺは変態でよく困らせられているけど、実際一緒にいて楽しい。


 「そうか。そうよね。やっぱりミオリコはあたしのこと大好きで仕方ないよね。うふふ」

 「そんなこと自分で言う? いや、今の『好き』ってお世話することを言ったけど」


 もちろん彼女自身のことも好きだけど、はっきり言うと恥ずかしいよね。


 「あたしも大好きよ。ミオリコのことは」


 まったく、私と違ってロㇰペㇾタㇻもセㇷ゚チㇱレㇺも好きとかそういうの気軽(きがる)に言うんだよね。


 「ミオリコの大きな手も、大きな足も、大きなお尻も、大きな胸も、全部好きよ」

 「そこまで言われるとむしろひくよね」


 彼女は私の体のいろんなところをよく見つめている変態であることは知っているけど、あまり意識し過ぎないでいたい。


 「それに今の『大きな胸』って嫌味にしか聞こえないけど」


 私はセㇷ゚チㇱレㇺを(にら)みながら不満げに言った。今(はだか)だからその形は小さいながらもはっきりと見える。


 「ううん。あたしから見ればミオリコの何もかもは『大きい』よ」

 「それはそうだけど……」


 セㇷ゚チㇱレㇺのことだからどうせ私がそういう意味で言っているわけではないとわかっているくせにね。


 そんなこと考えるとやっぱり『大きい』と『小さい』って曖昧(あいまい)な言葉だな。比較対象やスケールによって表現が違うこともあるのだから。


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