03 ˧˩˦˥˨ 小さな服
「ところでどうしてロㇰペㇾタㇻは私を起こしに来たの?」
私は時計を見て今自分が起きる時間ではないはずだとわかってしまって、逆に自分がこんな朝早く起こされた理由はわからなくて、ロㇰペㇾタㇻに訊いてみた。
「どうしてって……。だって早く起きないとミオリコは学校遅刻しちゃうぞ?」
「遅刻って? 今日から夏休みだから学校はないよ」
「え? そうなのか!?」
私がそう言ったらロㇰペㇾタㇻが驚いたような顔をした。
「もしかしてロㇰペㇾタㇻはそのことわからずに私を起こしに来たの?」
「うっ……。うん、ごめんね」
何それ私の安眠を返して! って文句を言いたいけど、彼女は別にわざとではなく本当に知らないようなのでさすがにこんなことで怒ったら可哀想だ。今も申し訳なさそうな顔をしているし。
「いやまあ別にいいよ。でもセㇷ゚チㇱレㇺなら知っているはずだよね? 私は今日から夏休みってこと」
昨日セㇷ゚チㇱレㇺに夏休みのことを話した覚えがあるから知らないはずがない。彼女はロㇰペㇾタㇻより賢くてこのようなミスをするはずがない。
「アレ、ソウナノカ? ナンノコトカシラ?」
「おい……」
このわざとらしい棒読みの答え、やっぱり知っていて知らないフリをしてわざと黙ったな! やられちゃった。やっぱり今文句言うならロㇰペㇾタㇻではなくセㇷ゚チㇱレㇺに。
「この腹黒コㇿポックㇽ……」
そう言って私はセㇷ゚チㇱレㇺの体を手で掴んで持ち上げた。
「あら、ミオリコ怖いわ~。あたしに何かしてくれるの?」
「……」
手のひらの中のセㇷ゚チㇱレㇺは何か変な想像をして興奮しているように見える。私は何かやり返してわからせたいとは思ったけど、何をしても逆に彼女にとって嬉しいことになりそうだ。ドMだから。
それにそもそも私は小さな女の子に嫌がらせをするわけがないし。たとえ彼女自身がそう望んだとしてもね。意地悪でも腹黒でもやっぱり私の目にはセㇷ゚チㇱレㇺが可愛くて仕方ない。
「もういい。別に目が覚めて起きてしまったからこれでいい」
もう諦めた私はセㇷ゚チㇱレㇺをベッドに置いてからベッドから立ち上がってきた。
また寝たいと思っていたけど、この2人とこんなやり取りしている間にすっかり目が覚めてしまったからもうそんな気分ではない。
「ミオリコ、ボクお腹空いたぞ」
「あたしもよ」
小さな2人にそう言われて私はなんか子供に甘えられた母親みたいな気分になっちゃったな。
「うん、わかった。朝ご飯しよう」
文句言いたいことがまだいっぱいあるけどやっぱりまずはご飯だ。今日お母さんがいないから朝食の準備は私が自分でするしかいない。
そう思って私は箪笥を開けて私服を取り出した。今日外に出る予定はないから簡単な服でいいか。北海道でも夏はある程度暑い。今日の天気予報でもそう書いてあるから薄くて露出が多いものがいい。そう思って私は袖なしの白いワンピース服を選んだ。下半身は短くて膝が露わになるもの。
「いいよね。ミオリコは。毎日違う服を着て……」
悩みながらも楽しそうに服を選んでいる私を、ロㇰペㇾタㇻが羨ましそうな目で見つめている。
「2人とも、いつも同じ服を着ているもんな」
コㇿポックㇽの体が小さいから当然人間の服は着られない。その体に見合う服は人形用の服くらいだろうね。だけど彼女たちは人形の服を着るのは嫌みたい。なぜなら布が分厚くて着心地が悪いから。人形の服は小さく切られた布で作られるものだけど、その布の厚さは人間の服と同じだから違和感があるそうだ。
私もそんなことは言われるまで考えたことなかったが、確かに合理的だ。薄いように見えるものでも『厚さ』というものがあるからそれは無視できない場合もある。私ももし自分の着ている服の生地が10倍くらいに分厚いものだと想像してみたら……。やっぱり重くて大変そうだ。服というより鎧かも? そんな服は絶対に着る気はないだろうね。
それに対し、コㇿポックㇽたちがいつも着ている小さな着物は特殊な方法によって作られたものだから厚さも普通の10分の1で、普通サイズの人間の着物をそのまま縮小化させたって感じになるね。
しかし残念ながらそんな特製の着物は簡単に作れるものではなくて高価だから一人で2着しか持っていないらしい。すごく薄いのに随分と頑丈で簡単に破らないし。
そもそもコㇿポックㇽたちは大体同じような服を着ているよね。それが彼女たちの伝統的な服のようで、こんな格好が普通だと認識して、人間みたいにお洒落な服を着るのは珍しい。寝間着とかもないようだし。昼も夜も同じ服を着ている。
だけどロㇰペㇾタㇻは私と一緒に住んでいる影響の所為なのか、自分もお洒落な服を着てみたいと思うようになっているらしい。
でも今のロㇰペㇾタㇻとセㇷ゚チㇱレㇺの服だって私にとって可愛く見えて、私ももし自分がコㇿポックㇽみたいに小さかったらやっぱりこんな服を着てみたいなと思っているよね。
まあ、やっぱり毎日同じ服はさすがにきついかもしれないけど。
今作はほのぼので乱暴なことはしません。
ちなみに残酷描写ある巨人と小人に関する物語を読みたい方には前作の『眩しき廣がる向こう側の現實』(https://ncode.syosetu.com/n8051ii/)はおすすめです。




