18 ˩˨˧˦˥ 大きな小人
「ね、ロㇰペㇾタㇻちゃんはそこにいるの?」
牧星菜ちゃんは巨大な瞳をぱちぱちしながらこっちをじっと見つめながら訊いてきた。
「うん、ボクここにいるぞ」
「そうか。牧星菜からは小さすぎて点にしか見えないの。声なら魔法で聞こえるようにできているけど」
やっぱりそうなるか。今のロㇰペㇾタㇻは1.5ミリしかないからな。
魔法ではっきり見えるようにすることもどうやらできないらしいね。そんなことができたら顕微鏡とか必要なくなるよ。
「このままだと危険だからやっぱり元のサイズに戻しておいた方がいいと思うの」
「やっぱり牧星菜ちゃんもそう思うのね」
今のロㇰペㇾタㇻは小さすぎてまずい。本人はあまり危機感がないようだけど実際に危険はいっぱいある。
「では元に戻すの。じっとしててね」
「うん」
牧星菜ちゃんがそう言った後、私の手のひらのに乗っているロㇰペㇾタㇻの体は光って、そしてどんどん大きくなってきた。
もう重すぎると思って私はロㇰペㇾタㇻの体を地面に置いた。とはいっても今の地面ってのは実際にセㇷ゚チㇱレㇺの手のひらだけどね。
ロㇰペㇾタㇻはまた大きくなってやっと私と同じくらいのサイズになった……と思ったら更に大きくなって、最早セㇷ゚チㇱレㇺの手のひらの上は狭すぎたその時にセㇷ゚チㇱレㇺもやがてロㇰペㇾタㇻとついでに私を地面に置いた。もちろん、その地面ってのは実は牧星菜ちゃんの手のひらの上だったということはまだ忘れていない。つまり今3人は直接牧星菜ちゃんの手のひらの上に乗っているという形になっている。
そしてようやくロㇰペㇾタㇻの変化が止まったようだが、その時私の目の前に4本の大きな柱が聳え立っている。言うまでもなく、これはロㇰペㇾタㇻとセㇷ゚チㇱレㇺの脚だった。その上に膝小僧、もっと上には2人の巨大な顔は笑いながら私を見下ろしている。
どうやらロㇰペㇾタㇻが元のサイズに戻った今、私は一番小さいものになっているのだ。そう考えるとなんかまずいかも。
というか、なんでロㇰペㇾタㇻだけ? せめて私も同じ大きさにして欲しいけど……。
「ミオリコ、ちっちゃい~」
「ちょ、ロㇰペㇾタㇻ……」
ロㇰペㇾタㇻは微笑みながらしゃがんで私の体を掴んで自分の視線の高さくらいまで持ち上げてきた。
「ロㇰペㇾタㇻ、いきなり掴まないで! ちょっと痛いよ……」
「あ、ごめん。ボク力を入れすぎた?」
「うん、ちゃんと優しくして欲しい」
「わかった。気を付ける」
私が小人として慣れないのと同じように、ロㇰペㇾタㇻも自分より小さい小人に対する扱いに慣れなくて力加減が上手くいかないらしい。今の状況私にとってさすがにやばいかも。
「でもなんか面白いことになってるわね。ちょっと普通とは逆なことをやってみない?」
セㇷ゚チㇱレㇺは面白そうな顔で私を見ている。
「逆って例えばどんなこと?」
「そうね。例えばミオリコはあたしの足を……」
「却下!」
セㇷ゚チㇱレㇺに聞くとやっぱりまた足のことか。勘弁して欲しい。
「ではこれならどう?」
そう言ってロㇰペㇾタㇻは私を自分の襟のところに入れた。
「えっ!?」
「え? またどこか痛いの? ごめん」
「いや、別に」
むしろ意外と気持ちいいかも。ただいきなりこんなところに入れられてなんか心の準備というか……。
でもこれっていつもとは逆だな。さっきまでロㇰペㇾタㇻは私の胸にいたのに。
今私の背中は柔らかくて温かいものに当たっているよね。これは悪くない。ただなんか心臓の音がはっきり聞こえてちょっとうるさい感じもする。やっぱりコㇿポックㇽも人間と同じように心臓と鼓動があるのね。
でもいつもロㇰペㇾタㇻもこんな風に私の心臓の音を聞こえていると思うとなんか恥ずかしいかもね。私がドキドキしている時ロㇰペㇾタㇻにもバレバレかな?
「え?」
しばらくここにいたら私は何となく一つあまり知りたくもない事実に気づいてしまった。
ロㇰペㇾタㇻのここって、こんなに凹凸があるの?
もちろん、今私が小さいからここが大きく見えるという理由でもあるけど、それだけではないかも。なんというか、意外とふ……膨らみを感じるなと……。
セㇷ゚チㇱレㇺと比べるとまだほど遠いけど確かに……。今まであまりにもスケールは小さすぎてちゃんとはっきり見たことがないから気づかなかった。だからてっきり自分と同じくらいだと勝手に思い込んでいたが、実際にどうやら少し違うらしい。今こうやって小さい視点から見たり体で感じたりするとはっきりわかった。
負けている、って!
そんな……。ロㇰペㇾタㇻは仲間だと思っていたのに……。
藁をも掴もうという思いで私は牧星菜ちゃんの胸の方に視線を向けてみた。やっぱり『絶壁』(今このサイズ感では本当の意味でもある)だな。牧星菜ちゃんだけは私を裏切らないでよかった! 癒やされる……。
いやいや待って……。よく考えてみればこんなことは小学生を見ることで自分を慰撫するのはむしろ惨めに感じてしまうよ、私。
「ミオリコ、なんか落ち込んでるわね?」
セㇷ゚チㇱレㇺはニコニコして私を見ている。まさか今私が何を考えているのか見通し?
「ロㇰペㇾタㇻだけ狡い。こっちにも来て~」
「……っ!」
そう言ってセㇷ゚チㇱレㇺは優しく私を掴んでロㇰペㇾタㇻの襟から引き出して、自分の襟に挿入した。
「どう? 居心地は?」
「そ、それは……」
セㇷ゚チㇱレㇺのこの辺には、私にもロㇰペㇾタㇻにも牧星菜ちゃんにも持っていないものが存在している。それはいわゆる『谷間』という。そして今私はついここに入っている。入ってしまった。
全身で感じる感覚……、確かに柔らかくて温かいけど、なんか……。
「なんかきついかも……」
「え? なんかさっきのロㇰペㇾタㇻみたいな反応だな。2人ともどこが不満かしら~?」
そう言ってセㇷ゚チㇱレㇺはわざとらしく、谷間に圧力をかけてきてぽよんぽよんと揺らした。
「ちょ、ちょっと、セㇷ゚チㇱレㇺ!」
さっきロㇰペㇾタㇻは私のところにいた方が居心地いいと言ったけど、その理由はわかったかも。ロㇰペㇾタㇻもさっぱりの方がいいと思うのね。大きい方がいいとか、そんなこと誰が言うの?
もう嫌だ! 私をここから出して! と、言いたいはずなのになぜか口が動かない。まさか私実は意外と気持ちよくてずっとここに残りたいと思っているからとか? そ、そんなことはない……よね?
とにかくセㇷ゚チㇱレㇺが満足するまでここにいてあげてもいいけどね!




