12 ˥˦˧˨˩ 4分の1
魔法の光に包まれながら私の視線がどんどん下がっていく。その光が完全に消えて視線の高さの変化が止まった時に私の視界は牧星菜ちゃんの下半身でいっぱいになっている。彼女の両脚は着物に包まれているからはっきりと見えないが多分私の頭は彼女の膝と同じくらいの高さだ。彼女の顔を見るために私は少し間を取って大きい角度で仰いで見上げなければならない。
そして牧星菜ちゃんはぺたんと座って、それでも顔はまだ私より高い。見上げなければ視線を合わせることができないことに変わりはない。私はこの子の巨大さに圧倒されている。
「今の澪梨子お姉ちゃんは4分の1サイズになってるの。さっきより更に半分ね」
4分の1か。つまり今の私はもう40センチくらいしかないね。逆に牧星菜ちゃんは私から4倍大きく見えて5メートル以上の巨人に見えちゃう。
「こんなにちっちゃくなった澪梨子お姉ちゃんもまた一段と可愛くなったの~」
そう言って彼女はこっちの手を伸ばしてきた。その手はなんか巨大に見えてたとえ可愛い女の子だとわかっても怖く感じてきた。
「よしよしなの」
また牧星菜ちゃんに頭撫で撫でした。でも今回はなんか手というよりただ指を使っているみたい。私の頭が小さすぎるからだろうね。
「ミオリコの太腿、今ちょうどいい」
「って、セㇷ゚チㇱレㇺ!」
さっきの2倍に大きくなったセㇷ゚チㇱレㇺは私の脚を抱き締めている。今彼女の頭は私の膝より高く腰より低いという程度になっている。そんな彼女の顔は今私の太腿にくっついている。
こんなサイズになっても変態のままだな。ただ狙う対象は足から太腿に変わっただけ。
私は無理やり彼女の体を両手で掴んで持ち上げてきた。
いつもなら簡単に手のひらに乗れるセㇷ゚チㇱレㇺだったが、今両手を使わなければ持ち上げられないくらいサイズが近づいてきてしまったな、と実感した。私から見ればセㇷ゚チㇱレㇺはもう赤ちゃんくらいって感じかな。
「セㇷ゚チㇱレㇺ、でかいぞ! 今ボクから見たら巨人だ」
相変わらず私の胸に付いているロㇰペㇾタㇻは感嘆した。彼女もまた私と一緒に小さくなっている。彼女から見ればセㇷ゚チㇱレㇺは4倍サイズだろうね。
「ロㇰペㇾタㇻはちっちゃいわね。可愛い~」
「えへへ」
セㇷ゚チㇱレㇺもそんなロㇰペㇾタㇻを可愛がった。今の2人のこのようなやり取りはもう3回目だな。
牧星菜ちゃんに対する私のサイズ感が変わったのと同時に、セㇷ゚チㇱレㇺに対するロㇰペㇾタㇻのサイズ感も同じように変わるのね。
「よいしょ……」
「えっ? 牧星菜ちゃん!?」
牧星菜ちゃんは巨大な手で私の胴体を掴んで持ち上げていく。突然足が床から離れて私は困惑した。
今の私って、小学生でも簡単に片手で持てるくらい小さいの? まあ身長40センチだから確かにそうだろうけど。
「澪梨子お姉ちゃん、掴まえた~」
楽しそうに笑いながら牧星菜ちゃんは私を手にしたまま立ち上がってきた。
「うわっ! 高い……」
牧星菜ちゃんが立ち上がった後私が下へ視線を向けたらなんか怖くなった。
「怖いの? 別に高くないはずなの。だっていつもの澪梨子お姉ちゃんと同じ視線の高さよ?」
牧星菜ちゃんは手の中に高く持ち上げられた私を見上げてそう言った。
「え?」
そう言われて考えてみれば確かにその通りだ。今私の視線は牧星菜ちゃんよりちょっと高い。多分いつもの自分と同じくらいの高さだ。
しかしなぜか感覚は全然違う。だって今私は自分の足で立っていないから。いつもと同じような高さでも今の私にとって自分の身長の3倍くらい高いところだということになっている。本当にサイズ感は体の大きさによって変わるものだね。
「そうよ。別に大したことないわ」
私より小さいセㇷ゚チㇱレㇺはそう言った。彼女もさっきから私に抱かれたままで今も私の腕の中だから同じ高さにいる。それなのに怖がる様子はまったくない。
「セㇷ゚チㇱレㇺは怖くないの?」
「あたしはいつもミオリコの体に乗っているから慣れているわよ」
「確かにそうね」
コㇿポックㇽは体が小さくて日常的自分より巨大な世界の中で暮らしているから、こういうサイズ感なんてとっくに慣れているだろう。でも私にとって自分の身長の何倍の高さに上ったり見下ろしたりすることなんて考えるだけでも怖い。
「あの、牧星菜ちゃん、やっぱり今は苦しいから……」
今私の胴体は牧星菜ちゃんの手に握られている。私が落ちないように配慮して力を入れているようだけど、やっぱり力強すぎ。
「ごめん」
そう言って牧星菜ちゃんは指の力を緩めてくれたが……。
「わっ!」
手が緩んだ所為で、私の体は牧星菜ちゃんの手の中で滑って下へ落ちていく。それはただ一瞬の出来事で、次の瞬間彼女再び手に力を入れて落ちないように済んだが……。
「痛いっ!」
今回はさっきより力強く握られてしまって、潰されそうになる……というほどではないけど、やっぱり痛みを感じた。
「ご、ごめん。澪梨子お姉ちゃん」
牧星菜ちゃんは慌てて謝って私を床に下ろしてくれた。
「牧星菜はコㇿポックㇽ相手に慣れているけど、こういう中途半端なサイズは初めてなので力加減がわからくて」
「中途半端って……」
確かに今の私のサイズって人間でもコㇿポックㇽでもない、その中間の大きさね。
「だからやっぱりそろそろもっと小さくした方がいいね~」
牧星菜ちゃんはそう言ったら私の体はまた光り始めた。
また唐突こんな展開!?