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私は待望の水属性魔導師〜領地復興のため、スキルボードはサブスキルで埋め尽くす〜  作者: 水瀬 潮
第1章 砂漠に生まれた水属性魔導士
75/80

第75話 料理スキルと食わず嫌い side∶カリン



「はぁ······」


「ん、カリンどうしたの?」


 いけない!お仕事中なのに!


 レオナ様に声をかけられ、自分が勤務中にため息をつくという失態をおかしたことに気づく。


「す、すみません!」


「え?いや、全然良いんだけど、珍しいから何かあったのかな?って」




 正直に言うと、何かあるかと言われれば、あった。


 ただ、レオナ様に聞いてもらうようなたいした話ではない。 


 本来ならば。

 


 でも、長い付き合いで知ったことだけど、レオナ様は結構好奇心旺盛な方だ。特に、身近に問題を解決することで、生活を良くするのが好きなのだと思う。だから、私の取り留めもない話にも、興味を示してくれるかもしれない。


 


「____実は······」



 そう考えた私は、悩みのタネを打ち明けることにした。


 何を隠そう、私の一番下の弟、レンのことだ。


 レンは、私が働きに出た後に生まれた子なのだけれど、(実は、レンという名前の1文字目の【レ】は、レオナ様から貰っているのだけど、なんとなく気恥ずかしくて、本人には内緒している。)とにかく食べ物の好き嫌いが激しいのだ。


 ミチやマチは、食料が行き渡っていない時期に幼少期を過ごしているので、食べられるだけで有り難いという感じで、好き嫌いは一切ない。

 

 対してレンは、自我が生まれる頃には、食料事情がある程度改善されていた。


 そんなレンは、どうやら初めて食べた野菜、キュウリが口に合わなかったらしく、野菜全般を食わず嫌いしている状況なのだ。


 口に合わなかったのはキュウリだけなのに、野菜全般を好き嫌いしている所が何とも子どもらしく、微笑ましく思う気持ちもあるけれど、そんな子どものうちから好き嫌いしていたら、大きくなれないかもしれないという心配の方が大きい。


 

 また何より、料理スキルを持っているにも関わらず、弟の好き嫌いを治せない自分が情けなく、少し落ち込んでしまうのだ。











 庭師のアランさんに野菜を貰うため、外出するたびに目を向けてしまうソレ。


 レオナ様の夢だった大浴場の建設地だ。


 初めてレオナ様から、このグライスナー領にお風呂を作りたいという話を聞いた時は、なんて幸せな夢物語だろうと思った。だって当時、レオナ様は4歳だったし、何よりグライスナー領は、日々の生活水すら節約しなければならない状況だったから。



 それが今や、大浴場の完成まで、もう後1歩というところまで来ている。


 毎日背丈が伸びていく建物を眺めていると、まるで今までコツコツと頑張られてこられたレオナ様のようだと感じる。


 それと引き換え私は、魔法を授かって何か頑張れたことがあるだろうか?成長できているだろうか?


 



「そっか〜。レン君は野菜が嫌いなのかぁ。まぁ好き嫌いは誰しも通る道だと思うけど、グライスナーの野菜は特に美味しい野菜だと思うから、少し勿体ないね」


 苦笑いのレオナ様に申し訳なさを感じる。


「そうなんですよね。私の料理スキルでなんとかできないかと、試行錯誤したんですが、なかなか難しくて」


「そういえば、カリンの料理スキルって、どんな効果があるんだっけ?」


「それが、実は私も知らないんです」


「教会では教えて貰えなかったんだね。じゃあ良かったら鑑定してみる?料理スキルを正しく理解すれば、何かヒントを得られるかも」


 まだ、一部の使用人にしか通達されていないのだが、なんとレオナ様は鑑定スキルなる大層ご立派な魔法を扱えるようになられたのだそう。この魔法があれば、対象者のレベルや魔力等の情報を把握できたり、さらには、習得可能な魔法の確認や、それを習得する手伝いができるのだという。


 控えめに言って最強だ。



「いいんですか?」


 そんな珍しい魔法を体験できるなんて・・・!料理スキルの扱いに行き詰まっている状況じゃなくても、是非お願いしたい話だ。


「もちろん!カリンにはいつもお世話になってるからね。じゃあ早速書くものを準備して、と。____鑑定!」



「うわぁ!」


 瞬間、眩い光が身体を包ん······。





◆◇◆◇◆






 包まなかった。



 驚きだ。



「鑑定魔法って、「今鑑定されたかもっ!?」みたいな感覚は無いんですね。あと光ったりとかも」


「無いらしいね。お兄様やテオもそう言ってたよ。まぁ心配しなくても、勝手に鑑定したりはしないから。さ、カリンのスキル、書き終わったよ」


 

 州都の教会で鑑定魔法をしてもらった時は、確か水晶玉が光ったはずだけどな、と一瞬思ったけど、レオナ様から私のスキルが書かれたメモを受け取ったので、それより今はスキルの確認だ。


 有り難いことに、レオナ様が文字を勉強する際に、ご一緒させていただいたお陰で、文字はあらかた読める。



 えぇっと、私のスキルは、、、




▽料理スキル

◯基礎魔法

─────────────

料理能力アップ(習得済)


料理能力が向上する

1時間につきMP1消費


──────────────


◯メインスキル

______________


料理効果アップ(SP0/3)


料理の効果が向上する

1時間につきMP1消費


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


料理美味しさアップ(SP0/3)


料理の美味しさが向上する

1時間につきMP1消費

______________



「すごい。これが私のスキル······」



「料理能力アップ、1時間につきMP1消費か。私の水魔法と違って、料理スキルは発動のたびにMPを消費したりはしないんだね。それが分かっただけでも大発見だよ!」


「そうですね。これはこれで使い勝手が良さそうです。時にレオナ様、このメインスキルというのが気になるのですが、私にも習得できますかね」


 今までは、新しいスキルの習得とか考えていなかったけど、こうしてメモを見てしまうと気になってしまう。



「MPにもSPにも余裕あるし、1つくらい習得しても問題ないと思うよ。なんなら今すぐにでも大丈夫!」


「うわぁ!嬉しいです。では、悩みますが、美味しさアップでお願いします!」



 やった!これでレンに、もっと美味しい料理を作ってあげられる!






◆◇◆◇◆





「そっか、駄目だったかぁ」


「はい。手を付けてくれませんでした」


 盲点だった。スキルを使って料理がすご〜く美味しくなったとて、そもそもレンが口をつけてくれないのでは意味がないのだ。



「要は、野菜=美味しくないものっていう先入観が問題なんだよね」



「そうですね。一口でも食べてくれれば、その先入観もどうにかできると思うんですけど。野菜ってこう、見た目からして野菜ってわかるものばかりじゃないですか?野菜らしくない見た目の野菜とかがあれば良いのでしょうけど、そんな都合がいい食べ物なんてないですよね」



「野菜だけど、野菜らしくないもの、かぁ。____待てよ、そう、それだよ。あるよ、心当たり!」



「へ!?」




 後日、レオナ様が持ってきてくれたのは、赤い実。見た目はトマトに似ているかな?でもトマトより小さくて、何ていうか、ギュッとしている感じ。


 クンクンと匂いを嗅ぐと、なにやら甘くスッキリした香りが薄くする。



「これはね、イチゴって言うんだよ。そのままでも食べられるから、まずはこのまま、かじってみて」


「あまっ!」


 ナニコレ!?

 言われるがままかじってみたけど、こんなに甘い食べ物は初めてだ!グライスナー領で採れる熟れたトマトもなかなか甘いけど、これは次元が違う。


「そうでしょう、そうでしょう。実はこれね、野菜なの!あまりに甘いから、果物と勘違いしている人も多いんだけど、これも立派な野菜なの。」


 これが野菜?

 確かに、見た目だけでいうと、州都で見かけた4〜5個入った1籠2,000〜3,000ダールで売られていた果物に似ている。



「レオナ様、ありがとうございます!これならレンの野菜嫌いも治せるかもしれません!」






 レオナ様の目論見どおり、このイチゴという甘い野菜は、レンの野菜嫌いを治し、そればかりか野菜大好きっ子にまで育てあげてしまった。


 おそるべし、イチゴ。


 当然このレオナ様がもたらした甘い野菜、イチゴの噂は使用人の間で瞬く間に広がった。


 料理美味しさアップのスキルを手にしたカリンの力もあり、食後のデザートとしてイチゴ料理が大流行したのは言うまでもない。



イチゴ登場のためのサイドストーリーでした。

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