表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は待望の水属性魔導師〜領地復興のため、スキルボードはサブスキルで埋め尽くす〜  作者: 水瀬 潮
第1章 砂漠に生まれた水属性魔導士
71/80

第71話 進化



 それから、宣言どおり、家族風呂の改善を行っていった。ガッツから教えてもらった脱衣所の床ビショビショ問題は、浴槽への入口付近にバスマット代わりのバスタオルを敷くことで解決。


 また、注意書きの文字が分からないという意見は、絵を添えることで文字が分からなくても理解できるようにした。加えて、休憩所に、文字勉強用の絵本を置いてみた。


 勉強用といっても、簡単な絵とふりがな(例えば、石鹸の絵の下にせっけんと文字が振ってある)だけの優しめの絵本だ。


 改善すべきは、グライスナー領の識字率の低さだと考えたからこその案だが、これが結構人気が出て、絵本目当てで家族連れが休憩所に遊びに来る事態だ。





 勿論、主役の家族風呂の方も相変わらず大人気で、抽選落ちばかりらしい。


 月に1度のみの開催だがら仕方ないが、抽選に落ち続けた領民から、もっと回数を増やしてほしいとの嘆願も寄せられているようだ。


 レオナとしても、開催回数を増やしたいのは山々なだが、他の仕事を疎かにすることもできず、こればかりは仕方がないと諦めている。






◆◇◆◇◆






「レオナ様、あの人だかり、何だか変じゃないですか?」


 テオと日課の井戸巡りをしていると、道端に人だかりが出来ていた。


 地面を覗き込む人、周囲で焦っている人、ただ事ではない様子が伺える。






「どうかしましたか?」


「あ、レオナ様!それが実は、僕のお兄ちゃんが急に(うずくま)っちゃって!」


 確かにこのお兄さん、顔が真っ青だ。この暑さだし熱中症だろうか?


 お兄さんに目線を合わせるようにしゃがみ、優しく肩にトントンと触れる。


「お兄さん、聞こえますか?」


「す、すみません、大丈夫です。急にお腹が痛くなってしまって」


 顔をしかめながらではあるが、返事をしてくれた。意識はなんとかあるみたい。



 だが、念の為こっそり鑑定させてもらおう。



「ッ!」


「レオナ様?」


 驚きで思わず声が出た。それには理由があるが、ここでは話せない。



「あ、いえ、何でも。······恐らく良くないものを食べたのでしょう。ポーションをお使いください」


 不審がるテオの視線には気づかないふりをしつつ、バックからお手製のポーションを取り出す。こんなこともあろうかと、普段から色々な種類のポーションを持ち歩いていたのが役に立った。



「いただきます」


 お兄さんは、素直に手渡したポーションをゴクゴク飲み干してくれた。すると、みるみる顔から青みが引いていく。


 お兄さんが、ふぅと息を吐いたのを見て、「もう大丈夫ですね?「と声をかけた。


「あ、ありがとうございます。すっかり良くなりました」



「いえ。良かったです」



「実は、お恥ずかしながら、緑のじゃがいもを食べてしまったら、こんなことに。お騒がせして申し訳ないです」



「それで······。じゃがいもは緑の部分と芽の部分は毒ですから、食べない方がいいですよ」


 それで、ステータスに微弱の毒反応が出ていたわけだ。だが、食あたりにも毒消しポーションが効くと分かったのは収穫だった。



「そうなんですか!?知らなかったです」



「気を付けてくださいね。では私はこれで」



 緑のじゃがいもは食べない方が良いというのは、前世では広く知られた話だったけど、ここではそうでもないらしい。これはこれから積極的に広めていく必要がありそうだ。



「あの、本当にありがとうございました!」



 大きく頭を下げるお兄さんと、手を振る弟くんに手を振り返し、その場を離れる。



「レオナ様お手柄でしたね」


 レオナ様の活躍をアレス様にご報告しなければ、とご機嫌なテオ。


「テオ、早めに屋敷に戻りましょう」


 だがレオナはそんなことより、一刻も早くあの声が知らせた内容を確かめたい。



 そう。体調が悪いお兄さんのステータスを鑑定した時に頭に響いた、思えば久しぶりの、でもこれまで何度も聞いたあの声だ。


《鑑定スキルがレベルが10に上がりました。新しいスキルを習得できます。》






◆◇◆◇◆



 


 四肢に力を入れて、精一杯の早足で屋敷への道を進む。思っていたのと違うスキルだった時に落ち込んでしまわないよう、期待しずぎないようにと、自分に言い聞かせながら。



 屋敷に帰るやいなや、早々に自室に駆け込むレオナ。途中すれ違う使用人達が、あら?という顔でその様子を見ていた。





 自室のドアを背に独り言を繰り返す。


「大丈夫。リラックス、リラックス」


 まるで、大学受験の合格発表の時のように、期待と不安を感じながら、ゆっくり深呼吸を繰り返す。いざ、覚悟を決めて。


(······ステータス)










「······あ!あった!!!」


 自分のステータスを確認すると、期待どおりというか、ずっと待ち望んでいたスキルが、遂に習得可能となっていた。




◯鑑定スキル

▽サブスキル

________________

スキルボード鑑定(SP20)


他者のスキルボードを鑑定


消費MP15

________________


________________

スキル付与(SP30)


他者にスキルを付与

※スキルボードを鑑定中のみ発動


消費MP30

________________




「ははは!やっぱり!まぁそうだと思ったのよね!」


 新たに習得可能になったスキル付与。これこそが、司祭様に教えてもらった、他者の魔法の開花が可能となるスキルだろう。


 急に訪れた朗報に、1人で変なテンションになるレオナ。独り言の音量が馬鹿デカい。





コンコン

「レオナ?どうかしたの?声が外まで漏れていたけど」



 お母様だ。あの音量なら当然だが、独り言が聞こえてしまったらしい。いやはや恥ずかしい。



「いえ、あ〜、う〜んと。はい、ちょっと嬉しいことがありました」


 珍しく素直に嬉しさを言葉で表現する。その言葉に嘘はないとでも言うように、ニコっと心からの笑顔が咲く。



「あら。じゃあ良い時間だし、これから夜ご飯を食べながらでも教えてちょうだい」


 つられたようにニコニコ笑顔のお母様。


 出来れば(かしこ)まった場で報告したかったけど、お父様とお兄様も一緒だし、丁度いいかもしれない。



「分かりました」






 3歳で魔法の練習を始めたレオナも、もう10歳になる。3年で習得したという司祭様よりも、倍近くの時間がかかってしまったけど、まだ遅くはない。この魔法があれば、状況を大きく変えられる。



 なんたって、今まで約半年に1度、往復20日程かけて州都の教会に行っていたけど、その教会でしてもらっていたことが、ここグライスナー領で出来るようになるのだから。



 まず最初に(いじ)るのは、ランクSSS魔法付与を持つ、お母様のスキルボードからだろうか。



 果たして、魔法付与とはどんな効果があるスキルなのだろう。



 期待に胸が膨らむ。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ