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私は待望の水属性魔導師〜領地復興のため、スキルボードはサブスキルで埋め尽くす〜  作者: 水瀬 潮
第1章 砂漠に生まれた水属性魔導士
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第69話 家族風呂②



「いらっしゃいませ。ようこそ家族風呂へ」



 集合場所の休憩所に、続々と家族連れが集まってきた。



「レオナ様、みんなお風呂が楽しみで、少し早く来ちゃったみたいですね」



 カリンがコソッと耳打ちしたように、お風呂を楽しみにしてくれているのなら嬉しいのだけど。



「だと嬉しいね。······あ、そうだ。もう全員集まったみたいだし、少し早いけど説明を開始しようか。カリン、準備はどう?」



「バッチリです。任せてください!」



 あらかじめ案内していた集合時間よりかなり早いが、家族風呂の初回の利用者が全員休憩所に集まったので、説明を開始することにした。


 今日、レオナがお風呂にお湯を張っている間、利用者達のお世話係をしてくれるのはカリン。なんだかすごく張り切っているみたいだ。言葉遣いから気合が伝わってくる。

  








「皆さん本日はお集まりいただきありがとうございます。早速ですが、家族風呂の利用方法についてご説明させていただきます」


 カリンがそうハキハキ喋りだすと、休憩所の椅子に座ってガヤガヤ談笑していた家族連れも、静かになってカリンに注目した。



 カリンが説明してくれたのは、フォルテさんをお風呂に案内した時にレオナが説明したことと概ね同じ。


・お風呂に入る前に、脱衣所で服を脱ぐこと

・浴槽に浸かる前に、身体と髪の毛を洗うこと

・お風呂の床は滑りやすいので、走ったりせず、注意して歩くこと

・お風呂に入ると汗をかくので、脱水にならないように早めにあがって水を飲むこと

等だ。



 一通り注意点を説明したところ、利用者の1人が片手を上げた。


「あの〜、すみません。今日は手ぶらで来てしまったのですが、お風呂から出た後はどうやって身体を拭いたら良いですか?」



「はい。お風呂を上がった後は、こちらで拭きください」


 カリンは得意げにそう言うと、ジャジャーンと棚にかけていたカーテンを開けた。


「バスタオルです!」



「すごーい!」

「まっしろ!」

「ふかふかだね〜」


 こども達は直ぐさまタオルに駆け寄り、触ったり、頬をスリスリしてりしている。




 対して、大人達は少し心配そう。


「あの、私達お金ないんですが、これって高級品ですよね?汚したらどうしよう。」


 どうやらタオルのクオリティが高すぎて、汚してしまった時の弁償の心配をしてしまったようだ。




「使用料はもちろんいただいておりません。使用後のタオルは私達でキレイに洗濯します。ズバリ、この《石鹸》で!」



「石鹸!?これも高級品ですよね」



「石鹸もタオルも、レオナ様の発案でグライスナー領で1から作っていますので、お金の心配ありませんよ。あと、この石鹸は身体や髪を洗う時にも使えますので、後で1つお渡ししますね。香りは、無香料、バラの香り、ミントの香りがありますので、どれを選ぶか、じっくり考えてください」



 


 カリンの言葉にざわめく休憩所。




「キレイなタオルを貸してもらえるだけじゃなくて、高級品の石鹸もいただけるなんて······」

「こんな品をタダで使えるなんて、いつの間にか、この町も豊かになっていたんだなぁ」

「長生きもしてみるものですね、あなた」



 ちなみに石鹸は、フォルテさんの時と同じように、1回分の使い切りサイズにカットしたものを準備している。香り別に分けてカゴに入れているので、休憩所を出る時に、各自1個選んでもらう予定だ。





 みんなが静まったところで、説明を続けるカリン。


「実は、皆さんにお渡しするものがもう一つあります」


「まだ何かいただけるんですか?」



「はい。このボディタオルです。これを使うと、手で洗うよりも、身体をしっかり洗うことができます。それに、ボディタオルの両端を持って背中に回せば、手が届かない背中も洗いやすいんですよ」



「へぇ〜。これはまた、よく考えましたね」



「作り方はレオナ様から教わったのですが、実はこれ、すごく簡単に編めるんですよ。興味がある方が居れば、良かったら今から一緒に作りませんか?」




 このボディタオル、太い糸を使って、指編みで編んでいる。前世でも、指編みのマフラーは幼いこどもでも簡単に作れると人気だったが、マフラーより長さが短いボディタオルなら、時間もさほどかからず、気軽に編める。太い糸で作れば、洗い心地だって充分だ。




「ヒモをこのような形で左手にかけてください。あ、左利きの方は、右手にかけた方がいいですね。そしたら、このヒモをこっちに持ってきて、この糸を下から持ってきて指にかけます。これを繰り返します。最後に両端に余ったヒモを輪っかになるように結びます。これで完成です」





 利用者にボディタオルの編み方を教えて、自身で作ってもらうというのは、レオナの案だ。


 というのも、以前から、グライスナー領に学校がないというのがレオナの気がかりだった。教える側の人材不足もあり、学校を作るのはまだ難しいけれど、どのような形であっても、こども達に学びの機会を提供できたらと思ったのだ。


 それに、これを機に、編み物や裁縫に興味をもって、キヌさんの後を継ぐ人材が誕生するかもしれない。






 大人達は概ね作り終わったみたい。次は、カリンや大人達の手を借りて、こども達の仕上げにかかるようだ。


 こうしちゃいられない。お風呂のお湯をためにいかないと。





◆◇◆◇◆






「はぁ〜。流石に疲れた」



「レオナ様、今日は本当にお疲れさまでした」



「カリンもお疲れさま。今日は本当にありがとう!すごく助かったよ」



 カリンと2人でお風呂に入りながら、今日の事を思い出す。



 正直今日は、本当に、本当に、忙しかった。目が回る忙しさとは、まさしくこのこと。カリンの手伝いがなかったらと思うと、ゾッとする。



 最初の利用者達用のお湯をためるとこまでは、余裕があったのだけど、忙しくなったのはその後。



 1グループ目の4家族が帰った後、すぐに浴槽とかけ湯用にためておいたお湯を排水。石鹸で洗って、しばらく置いておく。


 その間に、水差しの補充。それと、使用済みのコップとバスタオルを回収して、とりあえず洗濯所に持ちこんだ。洗濯までは間に合いそうに無かったから、とりあえず運ぶだけだ。


 お風呂に戻って、浴槽の泡を洗い流して、お湯をためて準備完了。


 家族風呂は4つあるから、1グループにつき、この工程を4回繰り返した。




 午前中は2グループのみの受け入れで、しかも2グループ目の後にお昼休憩時間を挟んでいたからまだ良かったけど、午後の3グループは休む間もなくバタバタだった。




 普段から領内を歩き回っている、歳の割には体力のあるレオナだが、今日は流石に疲れすぎて足が棒だ。カリンも1日中立ちっぱなしで疲れたのだろう。湯船でふくらはぎをモミモミマッサージしている。



「でも、皆さんとても楽しそうにしていましたよ。レオナ様にも見てほしかったです、皆さんの笑顔」


「うん。また来月、楽しみにしてるよ」


 カリンの話を聞く限り、家族風呂は好評だったのだと思う。喜んでくれたのなら、頑張った甲斐があったというものだ。




 さて、明日は手つかずのバスタオルのお洗濯か。疲れた身体には堪える作業だけど、雑菌が増える前に早めに洗って清潔にしておかないと。頑張らなくちゃ。



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