表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/80

第68話 家族風呂①





 時は過ぎ、1年後。  







 

 グライスナー領に、待望の家族風呂が完成した。



 お兄様やガッツを中心に、シャロンお母様、テオ、カイル、カリン等のお馴染みのメンバー、他にも、土木工事に欠かせない土属性魔道士ジャン、お風呂に魅せられたフォルテさんやいつもフォルテさんの隣にいるサイモンさん等の協力者達と会議を重ね、やっと完成した自慢の施設だ。



 今回、家族風呂の運営にあたり、建設した建物は、家族風呂4軒、休憩所1軒、洗濯所1軒、それから排水用の水路。  



 特に家族風呂の4軒には、かなり力を入れた。具体的には、家族風呂4軒は、全て異なるコンセプトを設定。外観や内観も、そのコンセプトに合わせて作ってもらった。


 きっと、お風呂初体験の方にも、目で見て楽しんでもらえる出来栄えになっていると思う。




 

 さぁ!明日はついに、家族風呂の営業初日。今日は早めに仕事を切り上げて、これから最終チェックに入る。


 待ちに待った営業初日だから、みんなの期待もさぞ大きいことだろう。ガッカリしてもらいたくないから、確認は、念入りに、丁寧にしなくちゃ。






◆◇◆◇◆





 最初に最終チェックにやってきたのは《花の湯》。文字通り、花をコンセプトにしたお風呂だ。


 建物に近づくと、最初に目に入るのは鮮やかな花々。お風呂に入る前から楽しめるよう、入口付近に花壇を設置してみた。


 カラフルな花に目を引かれながら、もう少し建物に近づくと、壁にも工夫が凝らされていることに気づく。そう、建物の外壁、そして実は内壁にも、いたる所に花のデザインを施しているのだ。




(見たところ、枯れているお花とかもないし、外は大丈夫そうね)

 


 建物の中に入ると、すぐに脱衣所がある。そこには、タオル等を入れるカゴと、水差し、コップが準備してある。


 タオルは当日渡すし、水は直前に補充するから、脱衣所も問題は無さそうだ。



 奥に進むと、洗い場と浴槽がある。



 実は、この洗い場。レオナが個人で所有するお風呂から改善した点がある。


 これまで、お湯に入る前にかけ湯をする時は、浴槽から直接桶で汲んでいたが、4〜5人が浸かっている浴槽に桶を突っ込むのは少々気が引けるのではないか。そう思い、洗い場にかけ湯用のお湯をためる石桶を設置してもらった。


 掃除が少し大変にはなるが、木の蓋を閉めればタオルを置いたりも出来るし、何も無いよりは使い勝手もいいはずだ。


 石桶を覗いてみる。ホコリが溜まっていたりしないかな?


 念の為、【クリエイトウォーター∶温泉水】でお湯を溜めてみる。


 あ、少しホコリがあったみたい。チェックして良かった。   

 

 石桶の栓を抜く。


 よし、排水は問題ない。

 




 続いて、浴槽の確認に移る。


 浴槽は5〜6人が入れそうな円形の浴槽。レオナの岩風呂と違い、浴槽の石は継ぎ目なくツルツルとした仕上がりだ。



 浴槽の側面を手で触って確かめる。不良部分があって、誰かが怪我したら大変だからね。ここは慎重に確かめた。うん、浴槽も問題なし。あとは当日、花の入浴剤をいれて、お湯を入れるだけだ。

 




◆◇◆◇◆





 続いては、お隣の《薬湯(くすりゆ)》にやってきた。


 《花の湯》が花をコンセプトにしていたように、《薬湯》もその名の通り、薬草をコンセプトにしたお風呂だ。


 

 建物の周辺では薬草を育て、壁には薬草のデザインを描いている。この点も《花の湯》と一緒だ。



 この《薬湯》の最大の特徴、それは浴槽だ。他のお風呂は、全て石で作っているが、この《薬湯》だけは、木材で作っている。



 石とは違う、木特有の温かみが感じられて凄くいい。薬草との相性も抜群で、このお風呂なら家族でゆったりとした時間を過ごすことができそうだ。







 3つ目は《岩の湯》。

 このお風呂は、唯一の露天風呂付き。中の浴槽は、岩を組み合わせた浅めの浴槽。そして外に出ると、2人がやっと入れるくらいのサイズの深めの浴槽がある。


 外の露天風呂は、周囲を木の板で囲っているため、外からの視線は気にならず、服も脱いだまま入浴ができる。


 そして、このお風呂の1番の工夫は、実は装飾。露天風呂に入りながら景色を楽しめるように、板の内側は少し広めにスペースを確保し、木や石で装飾してある。


 前世で言えば、《趣深い》といった感じだ。決して派手ではないが、ゆったりと眺めていたい。この地域にはあまりない様式だと思うけど、レオナの拙い説明をうまく汲み取って、形にしてくれたガッツの功績だ。






 最後は《家族湯》。このお風呂の特徴は、とにかく浴槽が大きいこと。


 前世の記憶があるレオナは、家族風呂と言っても4〜5人が入れる程度の大きさで問題ないと思っていたが、ここグライスナー領は10人以上で住む世帯も少なくないそうだ。そこで、とにかく設備はシンプルにしつつ、10人以上が入れる大きさの浴槽を確保したのがこの《家族湯》だ。





 

「よし、最終確認問題なし!」


 確認したところ、4つとも特に問題は無さそうだ。後は明日を待つだけ。







(みんな喜んでくれるといいな)



 グライスナー初の入浴施設。これを皮切りに、風呂好きの領民が増えれば、大浴場の建設だって夢じゃない。


 そのためには、まず明日精一杯頑張って、利用者に満足してもらうんだ。

 

 




 さぁ、明日のために早く寝よう。


 きっと、体力勝負の1日になるから······。






◆◇◆◇◆






「「おはようございます」」


「おはようガッツ。カリン。今日はよろしくね」




 初日はカリンがお手伝いに来てくれた。前世と違い、蛇口をひねればお湯が出てくるような設備は整っていないので、4つのお風呂とも、レオナが魔法で補充する。カリンは、その時間を使って、利用者達に家族風呂の使い方をレクチャーする係だ。



 お湯を補充した後に、レオナが説明してもいいのだが、それだとお湯が冷めそうだからね。それに、もし今後大浴場を建設する夢が叶う時が来るとしたら、レオナ以外に勝手が分かる人が居た方が、何かと助かるだろうし。



 対して、ガッツは今日は見学のみ。家族風呂建設の責任者として、利用者の生の声を聞きたいのだとか。また、もし不具合があれば、可能な限り改修等もしてくれるのこと。






 全員揃ったところで、利用者達の集合場所にしている休憩所に、護衛のテオを含め4人で向かう。


「にしても、今日家族風呂を利用できる人はかなりの幸運ですよね」


 これはカリン。



「ああ。何でも、今日の利用者を決める抽選、領民のほぼ全員が希望したらしいですぞ」



「え、そうなの?」


 家族風呂の利用者は、抽選で決めるとは聞いていたけど、そこまで人気とは!








 これには理由がある。


 知っての通り、グライスナー領があるファンドン州の南側地域の環境は、非常に過酷。特に、乾燥地帯に属する関係で、長年水不足が深刻だった。それを改善したのは、何を隠そう待望の水属性魔道士だったこのレオナだった。


 しかし、その改善方法は、インフラ整備とか、新たな水源の発掘とか、抜本的なものではなく、ただただ井戸を補充してまわるという、たった1人で行う人海戦術。要するに替えが効かないのだ。


 そんな水不足対策の要であるレオナが、家族風呂の運営にかかりっきりになっては困ると、当面の間、家族風呂は月1回のみの運営とのお達しが下ったのだ。また、そのような理由で、初回のみならず、人気が落ち着くまでは、家族風呂の利用者は抽選で決めるようだ。





 今日の利用者数は、初日ということで、少し控えめに設定してある。


 1グループにつき、利用可能時間は1時間。これを午前の部2グループ、午後の部3グループ、合計5グループ受け入れる。家族風呂は4つあるから、5時間×4風呂で20グループ。



 グライスナー領には、だいたい800世帯が住んでいると言われているから、倍率は40倍くらいか。


 いや、家族風呂とは言っても、お互いの了解さえあれば、友達や恋人同士の利用もできるから、実際の倍率ははもっと高いのかも。


 カリンが「今日の利用者は幸運」と言ったのも頷ける。






「レオナ様、最初の利用者方が来られましたよ」


 そうこうしている間に、利用者達が休憩所に集まってきたようだ。



 わざわざ足を運んでくれた感謝の気持ちも込めて、精一杯おもてなしをしよう。



 おもてなしといえば、温泉旅館の女将とかかな?と、前世で泊まった温泉旅館の女将さん像をイメージする。そして、そのイメージそのまま、まるで女将さんにでもなったような気持ちで、恭しくお出迎えする。

 



「お待ちしておりました。ようこそグライスナー領家族風呂へ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ