表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/80

第64話 赤髪のフォルテ②



「フォルテと申す。この者は私の従者のサイモンだ。これから世話になる」

「サイモンです。この度は受け入れていただきありがとうございます。よろしくお願いします」




「はじめまして。アレス=グライスナーの長女、レオナです。この度は、長旅ご苦労様でした」


「歓迎痛み入る」


 フォルテさんはかなりの美女だけど、表情も口調も割と固め。でも決して嫌な感じではなく、なんというか、《その美貌は封印して、己の腕一本で上り詰めました!》っていう感じがして、かっこいい。



「フォルテ殿、私の妹のレオナは、うちの風呂の所有者で大の風呂好きなんだ。趣味が高じて、今では体調に合わせた入浴剤や石鹸を紹介できるようにもなった。我が母の病が完治したように、毎日入浴すれば、少しずつだが着実に体調が良くなるから、ぜひ試していただきたい」


 お兄様がそう紹介してくれたものの、フォルテさん達からは怪しいものでも見るかのような視線を感じる。信じていない感がビンビンだ。





「そうなのか。では、お願いしたい。」


 とりあえず、そう口にして貰えて良かった。






◆◇◆◇◆





「失礼します」


 この声はカリン。


 長旅でお疲れだろうフォルテさん達を(いたわ)るため、深い話は後にして、まずはお部屋にご案内。ゆっくりしてもらおうと、カリンにお茶を持ってきてもらった。


「こちらはハーブティーです。我が領で栽培したローズマリーというハーブで作っているのですよ」



「初めての香りだ。だが悪くない」


 良かった。お嫌いな香りではなさそう。



「ありがとうございます。このハーブは良い香りがするだけではなく、血液の流れを良くする効能がある優れものなのです。疲労回復や冷えの解消に効果的なので、今日のお二人にはぴったりかと」



「ほぅ。なるほど、確かに一口飲んだだけで、全身が温まる感覚があるな」 



 さすがにそれは気の所為でしょ、と思うかも知れないが、(前世の私だったらそう思ってたと思う。)魔法で栽培した薬草はどれも効能がかなり強いのだ。よって、フォルテさんのこの感覚も、多分プラシーボ効果とかではないと思う。



「気に入っていただけたようで嬉しいです。あ、そうだわ!良かったら今日のお風呂の入浴剤は、ローズマリーにしましょうか。きっと全身の疲れが取れますよ」



「ああ、そうしてくれ」


 フォルテさんは、満足そうな顔をして了承してくれた。


 最初は、お風呂で病気が治るなんて変なことを言う奴だ、と怪しまれてるんじゃないかと心配したけど、ハーブティーのお陰で少しは挽回できたみたい。





「フォルテ殿、このようにレオナは、その時のその人に合った入浴剤を紹介することができます。聞くところによると、フォルテ殿も最近なんだか体調が優れないとか。失礼ですが、どちらの調子が悪いのでしょう?」




「_____いや。具体的に身体のどこかが悪いのではない。だからこそ困っているのだ」


「いや、そんなはずは······」



 頑ななフォルテさん。


 戸惑うお兄様。


 サイモンさんは、というと、一瞬チラリとフォルテさんに目線を向けたかと思えば、また直ぐに穏やかな微笑みでお兄様を見つめ直した。


 なんだろう?

 何か思うところでもあったのかな?





「ご存知かと思いますが、私達は州長から、貴方の治療を頼まれているのです。何にお困りなのか、教えていただけませんか?」


「アーサー殿。すまない」


 お兄様が穏やかな口調で念押ししたが、再度断られてしまった。



 これは(らち)が明かないな。フォルテさんには申し訳ないけど、鑑定させて貰おう。



 一瞬そう思った手を止めたのは、今まで穏やかにフォルテさんに寄り添うだけだったサイモンさんが口を開いたからだ。



「アーサー様、せっかく気にかけていただいているのに、申し訳ありません。ですか、主は決して嘘はついておりません。身体的な症状は、本当に何も無いのです。ただ一つだけ、普段通りに出来ないことがございまして」


「サイモン」

 フォルテさんの唸るような声。


 サイモンは、構わず続ける。

「___ここに来るまで、私達は何人もの医師を訪ねました。勿論はじめは、その症状もを正直に打ち明けていたのですが、そんな病気聞いたことがないと何もしないまま匙を投げる者、治らないと分かっていて適当な施術を行う者。そのような医師ばかりでした。その度になんだが裏切られたような気持ちになり。ですから最近は、信頼関係を築くためにも、まずは診療からお願いしているのです」



 そう力強く主張したサイモン。

 よく見ると、サラサラだった前髪が、額の汗が張り付いたことで少ししっとりしている。




「ひどい話ですね。さぞ失望なさったことでしょう」


「そのような事情がおありで。妹もこう言っている事ですし、あなた方がそう仰るなら、我々は構いません」




 確かに、前世で病院にかかった時は、どんな病気を患っているかを診断するのも医師の仕事だった。


 それに、どんな病気か診断できないような医者が出す薬を信じて飲めと言われても、難しい部分も多いだろう。


 だから、まずは信頼関係を築きたい、そのサイモンの気持ちも(もっと)もだとレオナは感じていた。


 それと同時に、こちら側での診療を求めるのであれば、鑑定しても文句は無いだろうと、こっそり、でも気持ち的には堂々と、フォルテさんを鑑定することにした。



________________


対象者:フォルテ


レベル59(500)


SP102/102(800)


体力 :333/1570(5500)

MP :0/ 103(500)

攻撃力 :510(2000)

防御力 :355(2000)

攻撃魔法:508(2000)

防御魔法:403(2000)

俊敏性 :159(1500)

幸運値 :132(1000)


状態異常∶沈黙(大)


属性:剣術     レベル20▽

   火属性魔法  レベル17▽

_________________




 ふむふむ。やっぱり状態異常があるな。


《沈黙》______って何だろう?


 十中八九、フォルテさんが治療したいのは、この状態異常だろうけど。




 もう少しステータスを観察する。


 目についたのはMP。なんと残りが0なのだ。これは珍しい。


 何故なら、鑑定スキル持ちでも無い限り、MPがちょうど0になるように魔力を消費するのは難しい。


 しかも、もし見立てを誤り魔力切れ状態で魔法を使うことになると、凄まじく辛い頭痛と吐き気に襲われてしまう。だから皆たいてい、1日に10回〜20程しか魔法は使わないのだ。


 だから、もしかしたらMPが回復しないとか、魔法が使えなくなるとかの状態異常なのかもしれない。だとしたら、具体的に身体のどこかが悪いのではないというフォルテさんの話も筋が通る。



「そうですよ。直ぐに信じていただくのも難しい話でしょうし、まずは15日〜20日程滞在し、毎日お風呂に浸かって、身も心もゆっくりしていただければと思います。特に今日はお疲れでしょう?早めにご準備しますね」


 アーサーとレオナの言葉に、フォルテさんのとサイモンさん、特にサイモンはホッとしたようだった。






 薬草の栽培には時間がかかる。

 それ故に、状態異常の治療も今すぐにすることは、レオナには出来ない。


 でも、裏切られ傷ついた心なら。


 温かいお風呂で汗を流して、ついでに溜め込んだ負の感情もキレイサッパリ洗い流して、グライスナー領で身も心も元気になってもらいたい。





◆◇◆◇◆





 フォルテさん達と1度別れ、お兄様の部屋に落ち着いた。お兄様が「ふぅ〜。今日は疲れたな」と言いながら椅子に腰掛けた。



「お疲れさまでした」


「あぁ、すまない。それで、どうだった?」


「はい。実はこっそりフォルテさんを鑑定させていただいたのですが、やはりある状態異常をお持ちでした」


「やっぱりか。何の状態異常だ?」



「沈黙です」


「沈黙、か。すまない、私は聞いたことは無い。レオナなら治せそうか?」


「恐らく。ただ、1から薬草の栽培をする必要がありますので、お時間いただきます」



 沈黙を治療するサブスキルは、実は既に習得可能だ。


 しかもこれは、レオナが前世の記憶をもとに作ったスキルではなく、レベルアップ時に自然にスキルボードに現れたものだった。



▽薬学スキル

◯サブスキル

_______________

ペラ草栽培(習得済SP3)


薬草(沈黙軽減効果)の種を蒔く

縦1メートル横0.2メートル

栽培期間15日

消費MP2

_______________


 前世では聞いたことが無い薬草だけど、自然に現れたってことは、この世ではポピュラーな薬草なのかな。



 直ぐに習得して、裏庭で栽培を始めた。


「薬草ちゃん、早く大きくなってね」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ