第61話 事の真相
コトン
「お母様、こちらの麻痺なおしポーションをお飲みいただけませんか?」
「このポーション、とても綺麗。なんだか光り輝いているように見えるわ。____まさかこれって、上級ポーションじゃないわよね?ついこの間、中級ポーションの生成に成功したばかりなのに、もう出来たの?」
これが上級ポーションなのか、その問の答えはレオナも持っていない。ただ、答えは限りなく「はい」に近いと信じている。
「······」
「ふぅ。分かったわ。あなたは意外と頑固だものね」
諦めたようにポーションに手を伸ばすお母様。そのまま、グイっと一気飲み。相変わらず豪快だ。
お母様の飲みっぷりに見惚れていると、どこか違和感を感じた。なんだろう?
その違和感がハッキリする頃には、目に見えてお母様の身体が輝き出して。
パァァァン
部屋中に光が満ちた。
◆◇◆◇◆
時を遡ること約1時間。
「エリス!昨日のポーション、ちゃんと中級ポーションだったわ」
そうなのだ。
昨日、【下級ポーション生成】×魔力水で作ったポーションをテオに飲んでもらったところ、【中級ポーション生成】×水で作った場合と同様の体力回復効果が確認できた。
エリスの予想的中である。
「そうでしたか!」
「うん。だから、今日は【中級ポーション生成】×魔力水でポーションを作ってみようと思うの。麻痺なおし草の準備をお願いできる?」
「はい、ただいま」
エリスは、テキパキと棚から保管しておいた麻痺なおし草を取り出すと、そのまま処理もしてくれた。
「お待たせしました。こちらです」
「ありがとう。じゃあこの中に魔力水も入れて、中級ポーション生成!」
______2人で完成したポーションを見つめる。
「これは······」
2人が一瞬、言葉を失ったのも無理はない。
明らかに今までのポーショとは違う液体がそこにあった。
「レオナ様、これ、光り輝いていますよ!」
そう。ポーションがキラキラと光っているように見えるのだ。
「光っているわね」
キラキラといっても、例えば金細工のような自己主張が強い光ではなく、夜空に浮かぶ天の川のような柔らかな光。なんとも不思議なその光に癒され、ぽーっとしてしまう。
「あっレオナ様!早く、早く向かわれてください!」
大きな声にハッとする。
(そうだった!)
エリスに礼を告げるやいなや、走り出すレオナ。今日ばかりは、淑女の嗜みがどうとか言ってられない。
確信めいたものを抱き、目指す先は当然___。
◆◇◆◇◆
パァァァン
「お母様!!!大丈夫ですか!?お母様っ」
レオナの言葉が耳に入らないのが、目が合わない。
「身体が」
「え?」
「身体が·····動くの!」
勢いよくベッドから抜け出し、飛び跳ねるように動くお母様。普段のお母様ならあり得ないその動きに、呆然と立ち尽くすレオナ。
ドタドタドタドタ
「おい、なんだ先程の光は?」
そこに騒がしく音をたてて、お父様が登場。肩で息をしている様子を見ると、相当急いで見に来たようだ。
「あなた見て、身体が動くの!レオナが治してくれたのよ」
「ハァ!?治っただと!?本当か?嘘ではないんだな?」
元気に動き回るお母様を目にしてもなお、信じられないとでも言いたげな表情。
無理もない。シャロンお母様の病は麻痺。火傷とは異なり、病状の進行具合を目で確認することは難しい。
それに、今までだってお母様は全く動けないというわけではなく、かなり辛そうではあったものの、なんとか身体を動かせる日もあった。だから、本当に病が治ったのか、はたまた今日の体調がすこぶる体調がいいだけなのか、判断に悩むのは当然だ。
「間違いないわ。自分の身体のことだから、分かるの」
「いや、しかし······」
口籠るお父様の視線が、シャロンお母様ではなく、レオナに向く。その視線で、お父様が言わんとする事を察したレオナ。
「確認します。鑑定」
_________________
対象者:シャロン=グライスナー
レベル32(3333)
SP120/120(7500)
体力 :103/220(3333)
MP :410/420(9999+)
攻撃力 :19(150)
防御力 :32(150)
攻撃魔法:39(500)
防御魔法:150(750)
俊敏性 :159(250)
幸運値 :1011(750)
属性 :農業 レベル17▽
魔法付与 レベル_▽
─────────────────
「_____か、かかか完治していますっ」
「なんと!まさか、そんなことが·····」
お父様は、力なくその場にへたりこむ。
「ッツ。良かった!良かった、シャロン、本当に良かった。」
遅れて嬉しさがこみ上げてきたのか、顔をぐちゃぐちゃにしながら、すすり泣いている。
そこにそっと近づき、「ごめんなさい。長く心配かけて。私が包み隠さず全てを話していれば、もっと早く治療できたかもしれないのに」と言ったお母様のその言葉に、お父様が反応した。
「どういうことだ」
「私······いつどこで、この病気に罹ったのか分かっていたの。ううん、病気じゃなくて呪いだと思っていたの。だから、話しても意味はない、悲しませるだけだって黙っていたの」
「誰に呪われたと?君の周りに、君のことを悪く思う奴なんているのか」
「___ターニャ様よ」
「もしかして、私が婚約を断った腹いせに君を?」
2人の過去を知らないレオナにはよく分からない部分もあったが、大雑把にまとめると、シャロンお母様の話はこう。
お父様とお母様の結婚が決まって直ぐのこと。お母様は、王都にて魔法適性の確認を受けることになったそうだ。教会に出向くと、そこには、お父様と幼馴染だったターニャ嬢の姿も。ターニャ嬢とはお父様を通して親交があったため、話をしながら一緒に順番を待つことにした。
農業スキルを無事授かり教会を出ると、ターニャ嬢がシャロンお母様を待っていた。
魔法を使えるようになった嬉しさで隙が出来たシャロンお母様は、「農業スキルだったわ。あなたは?」と気軽に声をかけたとのこと。するとターニャ嬢は「私も」と、ニッコリと答えたという。
しばらく雑談したが、お母様の従者から促され馬車に乗り込むことに。
「ではまた」「えぇ、また」
しかし乗り込み際に、ターニャ嬢の声が聞こえた気がした。ヒヤリとして辺りを見渡すが、ターニャ嬢の姿はない。気のせいか、「絶対に許さないから」だなんて、ターニャ嬢が言うはずがない。
そう思ったが、その日からどんどん体調が悪くなる。
お父様がターニャ嬢との婚約を断っていたと知ったのはその後。もう後の祭りだ。何故ターニャ嬢に気を許してしまったのだろう、もっと警戒するべきだったと後悔しているうちに、今日のほぼ寝たきりの状態にまでなってしまったという。
「闇属性魔法·····」
「なに?」
「い、いいえ。何でもないです」
確か高ランクの魔法に闇属性魔法というものがあったはず、と、司祭様に見せてもらったランク表を頭に思い浮かべていたら、思わず口について出てしまった。
────────ランク表────────
SSS:魔力付与
SS:鑑定
S:光属性、闇属性
A:雷属性、氷属性、政治
B:火属性、水属性、木属性、風属性、薬学
c:土属性、剣術、拳術、弓術、農業、畜産、
漁業、裁縫、製作、料理、商人
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もしかしてそのターニャ嬢は、お母様と同じ農業スキルではなく、闇属性魔法を習得したのではないか。
「はぁ、まさかアイツが原因だったとは。俺のせいで、本当に何と謝ったらいいのか。本当にすまない」
「いいえ、私の不注意よ。それに、もっと早く話していれば、すぐにポーションで治せたかもしれないのに」
「いや、これだけ強い力だ。その話を聞いていたとしても、並の魔道士や医者では治療は難しかっただろう」
「___そうね、レオナにしか出来なかった事かもしれないわね。レオナに出会えた幸運に感謝しなくちゃ。改めてありがとうレオナ。そして、今まであなたやアーサーばかりに苦労させてごめんなさいね。これからは私も頑張って働くわ!」
「はい。一緒に頑張りましょう」
今は、闇属性魔法の話をして、変に心配させない方がいい。それより、この喜びを噛みしめよう。




