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私は待望の水属性魔導師〜領地復興のため、スキルボードはサブスキルで埋め尽くす〜  作者: 水瀬 潮
第1章 砂漠に生まれた水属性魔導士
58/80

第58話 レオナの答え side∶アーサー 

いつもお読みいただきありがとうございます。

大変時間が掛かりましたが、ようやっと10万字に到達しそうです┏(^0^)┛

この調子で完結まで頑張りますので、お付き合いいただけると嬉しいです!




「という事です。お父様、いかがでしょう?」


 大浴場建設について話し合う中で、レオナ主導でミント石鹸の製造を行う案が出た。石鹸といえば、その製造方法は不明で、偶然製造できた物は、力を持つ貴族に相当な高値で引き取られているという。故に、まだ製造方法が明らかになっていないこの時期に、石鹸の安定生産が可能となれば、州都1いや、王国で最も豊かな領地となることだって夢ではない。そう考え、父上に提案に来たのだが。


「にわかには信じがたい話だが······。今まで奇想天外な発想で、グライスナー領を豊かにしてきたあの子の事だ。本当に製造方法を閃いたのもしれん」


「えぇ。本当に石鹸が作れるとしたら、我が領の発展は間違いありません。押しも押されもせぬ富裕な領地となります。私としては、この機を逃さず、一度レオナの自由にさせるべきかと」


 しかも、ただの石鹸ではなく、ミント石鹸だ。多少値が張っても、力のある貴族ならばこぞって買い求めるだろう。


「ふむ、魅力的な提案だが······まだ駄目だ」


____この返事は予想どおり。

そう、この人は()()()()()なのだ。


「何故でしょう?」

 答えは容易く予想出来るが、形式として尋ねざるをえない。


「お前も行商をしていたなら知っているだろう。今やグライスナー領は、ポーションの原料になる薬草の一大産地。それに、先日トルスタイン領から大量の発注があったように、ポーションの需要はまだまだ高く、そして今後も続くと予想される。収益率だって高い。だが、今石鹸の製造を始めたらどうなる?ポーションの生産量が落ちるだろう?その隙にゾーマ領に取って代わられるぞ。石鹸はポーションの需要が落ちてからでも、十分に間に合う。今は時を待つべきだ」



「本当にそれだけですか?」

 目に力を込めて、じーっと父上を見つめる。




「_______はっはっは。お前には誤魔化しが通じんな。そうだな、可哀想だが、あの子には薬学スキルを極めて貰わねばならん。農業スキルではなく、だ。今ですら、水の補充や塩の生産等は、あの子頼りっきりだ。これ以上、あの子にしか出来ない仕事をさせるわけにはいかない。レオナには我慢させるが、シャロンは······シャロンはもう長く苦しんでいるんだ」



「そのことは私も理解しております。では、シャロンお母様のご病気が完治すれば、レオナは自由にしていいと?」



「難しいな。シャロンが元気になれば、石鹸の製造は始めて構わない。ただし、出来ればシャロンの魔法付与スキルを開花させるまでは、内政に協力して欲しいと思っている。それがあの子にとって、酷なことは充分理解している。だからアーサー、お前にも苦労をかけるが、出来る限りあの子のことを気にかけてやっておくれ」



「____承知しました」


 お父様には、敬愛するお母様の命を天秤にかけることはできない。領主としては、褒められたことではないが、家族としては······。




◆◇◆◇◆

 





「レオナ、今ちょっと時間いいか?」


「はい、何でしょう」


「すまない!ミント石鹸の件、お父上の説得失敗した!」


「あぁ。そのことですね。大丈夫ですよ。お母様大好きなお父様の事ですから、少なくともお母様がお元気になるまでは、難しいと思っていたんです」


 まさか。レオナも予想していたのか。


「そうか。力及ばず、申し訳ない」


「とんでもないです」


「代わりと言ってはなんだが、俺に協力出来る事があれば何なりと頼ってくれ!」



「あら!それでは早速、お言葉に甘えてご意見いただきたいことが!実は先日のカリンの件、考えがまとまりまして」


「早いな。すぐ聞かせてくれ」


「はい。グライスナー領には、大浴場の他に、【家族風呂】を作りたいと思います」


「家族風呂?」


「はい。私のお風呂の2倍程の大きさの、少人数向けのお風呂です。大浴場と違うのは、【混浴可】であること。その代わり、完全予約制とします。なお、家族風呂とは名付けましたが、お互いの了承があれば、家族以外での利用も問題ありません」


「なるほどな。それならば、マチもカリンやカリンの母君らと一緒に入浴できるわけだ。よく思いついたな!」


「ありがとうございます。最初は、保護者が居ない子には、付添い人をこちらで用意しようかと考えたんですけど、それでは気を遣うばかりでお風呂を楽しめないよねと思って。マチくんが楽しんでお風呂に入るには、どうしたらいいかなって考えたら、不思議とカリンの顔が浮かんできたんです。あぁ、カリンと一緒に入れたら、それが一番楽しいだろうなって。それで思い付きました」


「そうか。そんな考えが出来るようになったなんて、レオナもお姉さんになったんだな」


 正直、とてもこの歳の子供の考える事とは思えない、配慮の行き届いた考えだ。


「ふふふ。そうでしょうか」


「そうだとも。それと、その家族風呂の案、とてもいい考えだ。完璧と言ってもいい。むしろ逆に、最初は家族風呂のみのスタートでもいいくらいだ。大浴場となると、建設にも、手伝ってくれる人員集めにも時間が掛かるし、何より規模が大きくなればなるほど、領民の中に反対する者が居てもおかしくない。ただ、家族風呂の規模であれば、建設もいつものガッツとジャンに任せられし、運営もレオナ1人でも大丈夫だろう。それに、こういうのは、小さく始めて、反応をみながらどんどん追加していく方が上手くいく」


「確かにそれはそうですね。いきなり大規模で始めて失敗してしまったら、取返しがつかないですよね」


「あぁ、考えておいてくれ」


 レオナの大浴場計画、予想より早い時期に形になるかもしれないな。  

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