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私は待望の水属性魔導師〜領地復興のため、スキルボードはサブスキルで埋め尽くす〜  作者: 水瀬 潮
第1章 砂漠に生まれた水属性魔導士
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第57話 アイデア、続々


コンコン

「失礼します。お手伝いに参りました」


 切りがいいところでやって来たのは、カイルとカリン。いつものように、ポーション生成のお手伝いに来てくれたようだ。


「ちょうど良かった。カイル、カリン。君たちも知恵を貸してくれ」


「「?」」


 お兄様の突拍子もないお願いに、混乱気味の2人。テオが、「今、レオナ様の大浴場計画について、話し合っていたところなんだよ」と補足すると、納得したみたい。


 せっかくなので、2人の分もたんぽぽコーヒーを準備して、ゆっくり腰掛けるよう促す。


「レオナ様すみません。いただきます。あの、それで、知恵というのは?」

 

 カイルの疑問はもっともだ。


「あぁ。2人とも、お風呂に入ったことはあったよな。実際にお風呂を利用してみて、気づいたことがあれば教えて欲しい。改善点だったり、要望だったり、なんでも構わない」



「「······」」


 そりゃそうだよね。急に聞かれても、何と言えばいいか分からないし、何より言いづらいよね。


「ちなみに私は、急な来客時にサッと入れると助かると提案した。それ以外で何かあるか、カイル」



「はい。そうですね。私もアーサー様がおっしゃられるように、必要な時にサッと汗を流せると嬉しく思います。あと、先日お風呂をいただいた時に思ったのですが、あの日浴槽に浮かべていたカモミール、あの花からはとても良い香りがしたのですが、その、何と言いますか、緊張が解れすぎてしまいまして。勤務前には使用できないのが残念です」


 カイルの意見に「ほぅ」という顔をするお兄様。


「確かに、護衛中に気を抜く訳にはいかないもんな。では、カモミールを浮かべるのは、夜だけとするか?シャワーだけなら浴槽は使わないしな」


 それもそうなんだけど、私としてはお風呂は香りも楽しむものだと思っているから、出来ればそこには拘りたい。要は、カモミールの代わりに、リラックスしすぎない香りのお花を使えば問題ないわけで。


「あの、他の薬草で代用するのはいかがでしょう?例えば、そうミント!ミントなんてどうでしょう?殺菌作用もありますし、持ってこいでは?」


「ミントか。すまんレオナ。俺は薬草にはあまり詳しくないのだが、ミントはどんな香りがするんだ?」


「スッキリした香りです」


「スッキリ、か······。悪くないな。それなら仕事にも支障はあるまい」


 納得した様子のお兄様と反対に、見切り発車で提案したレオナは迷っていた。言ってから気付いたのだが、ミントのお風呂って、あまりに刺激が強そうじゃない?それに、せっかく湯船に浸かっているのに、スースーするんじゃ身体も温まらないかも。


 勿論好きな人は好きなんだろうけど、少なくとも入浴剤としてはスタンダードな部類ではない。導入初期は、万人受けの物と相場は決まっているもんだ。


 ただ、「やっぱりミントは辞めましょう」と言うからには、もっと相応しい薬草を思い付く必要がある。けど、思い付かない!


 早くしないと、お兄様も「ミントの入浴剤、楽しみだなぁ」なんて、ぼやいている。


 もういっそのことミントの入浴剤でいくか?いやいや諦めるな。


 よし、別の方向から考えよう。ミントを使うのは固定として、別の薬草も混ぜ合わせるとか。


 もしくは入浴剤としてではなく、別の用途としてミントを使うという方法もある。


 例えば、そうシャンプーとか。男性向けのシャンプーって、スースーする感じだったよね。匂いだってスッキリした香りだった気がする。


 ミントの香りのシャンプーって、多分割りと定番商品だよね。それに、シャンプーは無理だけど、石鹸ならなんとなく作り方は分かるから、技術的にも問題ない。材料だって、農業スキルがあれば揃うはず。よし、コレでいこう。



「そうですね。むしろ気持ちも引き締まると思います。ただ、ミントを入浴剤として使うと、刺激が強すぎると思うので、石鹸に練り込む形を取りたいと思います。いかがでしょう?」


「石鹸って。それが出来れば最高だが、そもそもうちで作れるのか?超高級な上に、州都でもなかなか手に入らない希少品と聞くぞ」


「農業スキルを習得すれば、多分作れると思いますよ」


 前世でキャンプ動画にハマっていたおかげで、1から石鹸を作る方法は知っている。必要な材料だって、灰汁と油、そしてミントくらいだ。ミントと油は、農業スキルで何とかなりそうし、灰汁はガッツが使っている(かまど)から拝借しよう。


「それは頼もしいな!ポーションに次ぐ、我が領の特産物になるかもしれないぞ!私としては、すぐにでも取り掛かって欲しいところだが、お父様とも相談したい。農業スキルの習得等を含め、動き出すのは少し待ってくれ。シャロンお母様の体調回復が最優先と判断なさるかもしれないからな」


「はい。分かりました」





「よろしい。では次。カリンはどうだ?」


 次はカリンの番だ。頑張れカリン。何もなければそう言っても構わないんだからね!



「あの、私、3人姉弟(きょうだい)の長女なんです」


 意を決したような、真剣な表情のカリン。


「?」


「6歳の妹のミチ、3歳の弟のマチ、それから両親がいます。両親には、レオナ様がお風呂を発明されたお話をしております。母親は、いつの日かグライスナー領に、大浴場が完成するのを楽しみにしているのですが、その···、父親は出不精でして。大浴場が完成しても、入りには行かないんじゃないかと思うのです」


「うん、続けて」


 お兄様が優しい声で続きを促す。


「お風呂って、当然男女別ですよね?私や妹ミチは恐らく母親と一緒にお風呂に入りますが、弟のマチはまだ小さいから、1人ではお風呂に入るのは流石に危ないです。かと言って、女性と一緒に入るわけにもいきませんよね。だから、結局お父さんとお留守番になってしまうんじゃないかって。そう思うと可哀想で」


 そう言うと、カリンはシュンとしてしまった。



 一気ににシンと静まり返る小屋。レオナの息遣いですら、隣に座るカイルに聞こえてしまいそうだ。


 そんな中、お兄様が重々しく口を開く。


「なるほどな。カリン、言いづらかっただろうに、教えてくれてありがとう。必ずマチくんも大浴場を楽しめるような策を考えるよ。約束する。___レオナ、これは貴重な意見だぞ。カリンと同じような状況に直面する家庭は、恐らくいくつもあるだろう」


「はい、そうですね。___ごめんなさい。少し、考えさせてください」


 正直なところ、小さな子供達がいる家庭の事情を、全く考慮できていなかった。


 それに、カリンはお父さんが出不精と言っていたけど、領内には当然片親の子だっている。そんな子はどうすればいい?


 まさか、お風呂に入っていないという理由で、歳の近い子から虐められたりしないよね?流石に考えすぎ?いやでも、配慮することに越したことはない。


 少なくとも、この課題が解決できないと、大浴場の運営はできないよね。


 しっかり考えないと。


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